子供の爪噛み・爪むしりはなぜ?
やめられない原因と対処法

「子供の爪がいつまで経っても伸びない」
「爪の先がいつもギザギザしている」
「無意識に爪を噛んだり、むしったりしている」

このような場合は、単に爪が弱いのではなく、爪噛みや爪むしりによって爪が繰り返し傷ついている可能性があります。

爪を噛む癖は医学的に咬爪症こうそうしょう(onychophagia)、爪をむしる・削るなどして自分で傷つけるものはオニコチロマニア(onychotillomania)と呼ばれます。

どちらも単なる「悪い癖」として扱われがちですが、強く繰り返す場合には身体集中反復行動(BFRB:Body-Focused Repetitive Behavior)の一つとして考えられます。

爪をむしって表面がボロボロになった様子の写真

咬爪症(爪噛み癖)とは

咬爪症(onychophagia)とは、爪やその周囲を繰り返し噛む行動です。

噛む場所は爪の先端だけではなく、

  • 爪そのもの
  • 甘皮
  • 爪の横の皮膚
  • 爪床周囲

まで及ぶことがあります。子供から大人までみられますが、特に子供から思春期に多い行動です。

2022年のレビューでは、爪噛みは一般人口の約20~30%にみられ、10歳頃から思春期まででは最大45%程度とする報告が紹介されています。年齢とともに減少する傾向がありますが、大人になっても続く人もいます。

少年が爪を噛んでいる様子の写真

オニコチロマニア(爪むしり)とは

オニコチロマニア(onychotillomania)とは、爪を繰り返し、

  • むしる
  • 引っ張る
  • 削る
  • こする
  • 甘皮を押したり剥がしたりする

ことで、自分で爪を傷つけてしまう状態です。

自分の指や爪を使うだけでなく、爪切り、やすりなどの道具を使って過剰に爪をいじる場合もあります。

強く続くと、爪甲そうこうだけではなく爪母そうぼ爪床そうしょう、爪周囲の皮膚まで傷つけます。

オニコチロマニアは症状の現れ方が非常に多彩で、炎症性の爪疾患など別の病気のように見えることがあります。文献でも、診断が難しく見逃されやすい状態とされています。

女性が爪をむしっている様子の写真

BFRBとは?

BFRBとはBody-Focused Repetitive Behavior(身体集中反復行動)の略で、自分の体の一部を繰り返し触ったり、噛んだり、むしったりする行動の総称です。

代表的なものには、

  • 爪噛み
  • 爪むしり
  • 皮膚むしり
  • 抜毛
  • 唇や頬の内側を噛む

などがあります。爪噛みが軽い習慣の範囲で、本人が困っておらず、爪や皮膚にも大きな損傷がなければ、必ずしも治療が必要というわけではありません。

一方、

  • 何度やめようとしても止められない
  • 爪や皮膚を傷つけている
  • 強い苦痛を感じている
  • 学校、仕事、人間関係などに影響している

場合には、BFRBとして専門的な対応が必要です。

爪噛み爪むしり皮膚むしり抜毛唇や頬の内側を噛むのイラスト

なぜ爪を噛んだり、むしったりするの?

原因は一つではありません。

「爪噛み=ストレス」と思われがちですが、それほど単純ではありません。

現在は、

  • ストレス
  • 緊張
  • 退屈
  • 何もしていない時間
  • 集中しているとき
  • 爪の引っかかりなどの感覚刺激
  • 家族など周囲の行動
  • 遺伝的な要因

など、複数の要因が関係すると考えられています。

ストレス緊張退屈何もしていない時間集中しているとき爪の引っかかりなどの感覚刺激家族など周囲の行動遺伝的な要因を表すイラスト

多くの人は無意識に爪を噛んでいる

若年成人339人を調べた研究では、現在または過去に爪噛みがあった人の92.2%が「自動的に爪を噛んでいる」と回答しています。つまり、「噛もう」と思って噛んでいるのではなく、気づいたときには噛んでいるという人が非常に多いということです。

同じ研究では、

  • 65.7%が爪を噛む前に緊張を感じる
  • 42%が噛んだ後に快感や安心感を感じる

と回答しています。

このような場合、緊張する → 爪を噛む → 一時的に落ち着くという流れが繰り返され、行動が習慣化していくと考えられます。

緊張する → 爪を噛む → 一時的に落ち着くという流れを説明したイラスト

「爪噛み=不安症・強迫症」ではありません

爪噛みは不安や強迫症きょうはくしょうなどと一緒にみられることがあります。

しかし、爪を噛んでいるから不安症や強迫症がある、と判断することはできません。

前述の339人を対象とした研究では、爪噛み経験者の不安症は22.5%、強迫症は3.1%でした。一方、爪噛みのない人では不安症26.2%、強迫症5.0%で、爪噛みと不安症・強迫症との明確な関連は確認されませんでした。

2022年のレビューでも、爪噛みと強迫症との関連については研究結果が一致していないとされています。

したがって、「爪を噛むのは精神的に問題があるから」と決めつけるのは適切ではありません。

少年が爪を噛む様子の写真

爪噛みではどんな爪になる?

慢性的な爪噛みでは、

  • 爪が極端に短い
  • 爪の長さがバラバラ
  • 爪の先端がギザギザしている
  • 甘皮がなくなっている
  • 爪周囲に傷がある
  • 爪の周囲が赤い
  • 横方向の溝ができる
  • 爪がもろくなる

などの特徴がみられます。

保護者から見ると、「子供の爪が全然伸びない」ように感じることもあります。実際には、爪が作られていないのではなく、伸びた部分を繰り返し噛んでいるため短い状態が続いているケースが多くあります。

爪むしりの症状の写真

爪むしりではどんな爪になる?

オニコチロマニアでは、

  • 爪の表面がデコボコする
  • 横方向の溝が何本もできる
  • 爪が薄くなる
  • 爪の形が不規則になる
  • 甘皮がなくなる
  • 爪の周囲が赤くなる
  • 出血やかさぶたができる
  • 爪の一部がなくなる

など、さまざまな変化がみられます。

特に、親指の甘皮付近を繰り返しいじることで、平行な横溝が何本もできる「habit-tic deformity」がみられることがあります。オニコチロマニアは見た目が一定ではなく、爪乾癬、爪扁平苔癬、爪白癬、爪周囲炎など、他の爪疾患に似て見えることもあります。

爪の表面がデコボコする横方向の溝が何本もできる爪が薄くなる爪の形が不規則になる甘皮がなくなる爪の周囲が赤くなる出血やかさぶたができる爪の一部がなくなる

爪をむしり続けると元に戻らなくなることも

爪は、根元にある爪母で作られています。

爪の表面だけが一時的に傷ついているのであれば、新しい爪が伸びるにつれて改善していきます。

しかし、爪の根元を何度も強くむしったり削ったりして爪母を長期間傷つけると、爪の変形が残ることがあります。

長期間の爪むしり(オニコチロマニア)では、永続的な爪甲変形や色素変化が報告され、重症例では爪が完全に失われることもあります。

爪を短く切りすぎて爪が伸びなくなった様子の写真

爪噛み・爪むしりから感染することも

爪噛みでは、口の中の細菌が傷ついた爪周囲へ移ることで急性爪周囲炎きゅうせいつめしゅういえんを起こすことがあります。

爪むしりでは爪や爪周囲の皮膚を傷つけると、そこから細菌などが侵入します。

症状は、

  • 赤くなる
  • 腫れる
  • 熱をもつ
  • 押すと痛い
  • 膿がたまる

などです。

爪のサイドが腫れて化膿している様子の写真

爪噛みや爪むしりをやめるには?

単純に、「噛まない」「触らない」と我慢するだけでは改善しにくいことがあります。

現在の研究では、行動を起こすきっかけを見つけ、環境を変え、別の行動へ置き換えるという方法が中心になります。

① いつ爪を噛んでいるのかを知る

まずは、

  • いつ
  • どこで
  • 何をしているとき
  • どんな気分のとき

に噛んだりむしったりしているかを確認します。

例えば、

  • テレビを見ている
  • 勉強している
  • パソコンを使っている
  • 読書している
  • 待ち時間
  • 暇なとき
  • 緊張しているとき

などです。無意識の行動を意識できる行動に変えることが改善の第一歩になります。

テレビを見ながら爪を噛んでいる勉強しながら爪をむしっているパソコンを使いながら爪をむしっている読書してながら爪を噛んでいる待ち時間で爪を噛んでいる暇なときに爪をむしっている緊張しているときに爪を噛んでいる

② 爪の「気になる部分」をなくす

爪の先端がギザギザしていたり、甘皮がめくれていたりすると、その部分が気になって噛んだりむしったりするきっかけになります。

そのため、

  • 爪を適切な長さに整える
  • 爪やすりで引っかかりをなくす
  • ささくれを放置しない

などの刺激制御(stimulus control)が利用されます。

爪を適切な長さに整える爪やすりで引っかかりをなくすささくれを放置しない

③ 爪を物理的に覆う

爪を直接触れないように、

  • 絆創膏
  • テープ
  • 指先の保護材
  • 手袋

などを利用する方法があります。

爪を物理的に守るだけでなく、爪を触ろうとした瞬間に、「今、触ろうとしている」と本人が気づくための目印にもなります。

オニコチロマニアの症例でも、爪を覆うことで改善し、保護を外すと再発した例が報告されています。

爪噛みや爪むしりを防ぐために爪を物理的に覆う

④ 別の行動に置き換える「習慣逆転法」

咬爪症で比較的エビデンスがある方法が、習慣逆転法(HRT:Habit Reversal Training)です。

HRTは主に、

  1. 気づく
  2. 別の行動に置き換える
  3. 周囲からサポートを受ける

という3つで構成されます。

例えば爪を噛みたくなったときに、

  • 手を握る
  • 両手を組む
  • 手を膝の下に置く

など、爪噛みと同時にはできない行動を行います。

成人を対象とした比較試験では、HRTを行ったグループで爪の長さや爪噛み頻度が有意に改善しています。複数の比較試験があり、咬爪症に対する行動療法の中では比較的エビデンスのある方法です。

手を握る両手を組む手を膝の下に置くイラスト

苦いマニキュアは補助的な方法

爪に苦味のある液体を塗り、口へ持っていったときに気づかせる方法もあります。

一定の効果を示した研究がありますが、HRTのような行動療法と比べて、これだけで習慣そのものを変えられるとは限りません。

また、幼い子供では苦味剤を罰のように使用すると反発につながる可能性があり、2022年のレビューでは若年児に対する嫌悪療法は推奨されていません。

子供の爪に苦いマニキュアをしている様子

子供の爪噛みは叱らないことが大切です

子供の爪噛みに対して、「また噛んでいる!」「やめなさい!」と何度も強く注意しても、本人が無意識に行っていれば簡単には止められません。

若年者では、爪噛みをやめさせるための家族や周囲からの強いプレッシャーが、生活の質や心理面に悪影響を与える可能性も指摘されています。

子供の場合には、「どんなときに噛んでいるかな?」と一緒に確認し、噛まずに過ごせたことを肯定的に評価する方が適切です。

爪噛み癖を注意しているイラスト

爪むしり(オニコチロマニア)の治療はまだ研究が少ない

爪噛みと比べ、オニコチロマニアについては治療研究が非常に少なく、標準的な治療法はまだ確立されていません。

現在は、

  • 爪を物理的に保護する
  • 爪むしりに気づく
  • CBT(認知行動療法)
  • HRT(習慣逆転法)

などが利用されています。

HRTによって大きく改善した症例報告もありますが、現時点では大規模な臨床試験ではなく、症例報告レベルのエビデンスが中心です。

爪噛みや爪むしりが悪化すると?

軽い爪噛みや爪いじりであれば、大きな問題にならないこともあります。しかし、爪を噛む・むしる行動を長期間繰り返すと、爪だけでなく、爪周囲の皮膚や歯、日常生活にも影響が広がることがあります。

爪が極端に短くなる・変形する

爪を繰り返し噛んだりむしったりすると、

  • 爪が極端に短くなる
  • 爪の先端がギザギザになる
  • 爪の表面がデコボコする
  • 横方向の溝ができる
  • 爪が薄くなる
  • 爪の一部がなくなる

などの変化が起こります。特に爪むしりでは、爪の根元まで繰り返し触ることで、爪を作る爪母まで傷つけることがあります。

爪母まで傷つくと変形が残ることも

爪は根元にある爪母で作られています。爪の表面だけの損傷であれば、新しい爪が伸びるにつれて改善することが期待できます。

しかし、強い爪むしりを長期間続けて爪母が損傷すると、新しく生えてくる爪にも凹凸や変形が残ることがあります。

重症の爪むしり(オニコチロマニア)では、爪が著しく短くなったり、爪そのものが失われたりする症例も報告されています。

爪の解剖の説明図。爪、爪上皮、爪根、爪母、爪床、爪下皮を説明してある。

赤み・腫れ・出血・感染

爪だけでなく、甘皮や爪周囲の皮膚まで噛んだりむしったりすると傷ができます。

そこから細菌などが侵入すると、

  • 赤く腫れる
  • ズキズキ痛む
  • 出血する
  • 膿がたまる
  • 爪周囲炎を起こす

ことがあります。実際に、重度の爪むしりで爪が失われ、周囲に潰瘍かいようや細菌感染を起こした症例も報告されています。

爪のサイドから出血している様子の写真

爪を人に見せることが苦痛になる

爪の変形が強くなると、

  • 人前で手を隠す
  • 爪を見られたくない
  • 写真に手が写るのを避ける
  • 学校や仕事で気になる
  • 恥ずかしさや罪悪感を感じる

など、心理的・社会的な負担につながることもあります。

人前で手を隠す爪を見られたくない写真に手が写るのを避ける学校や仕事で気になる恥ずかしさや罪悪感を感じる様子を描いたイラスト

足の爪トラブルへの対処法

足の爪むしりと陥入爪(深爪)の関係

足の爪を繰り返しむしったりすることで、爪が極端に短くなったり、爪の角が欠けたりすると、陥入爪につながることがあります。

特に問題になるのが、爪の端や角を深く取ってしまうことです。

爪の角を途中から噛み切ったり、むしり取ったりすると、爪の端に鋭い部分が残ります。この状態で爪が伸びると、鋭くなった爪の端が横の皮膚に刺さり、痛みや炎症を起こすことがあります。これが陥入爪です。

爪むしりの悪循環

足の爪を繰り返しむしっていると、爪がどんどん短くなり、爪の角が皮膚に当たりやすい深爪になります。

深爪になると、

「爪の角が当たって痛い」

「痛い部分の爪をむしる」

「爪を取ると一時的に楽になる」

「爪が伸びると再び皮膚に当たって痛い」

「さらに短く爪をむしる」

という悪循環に入りやすくなります。

この状態では、単に「爪をむしらずに伸ばしてください」と言われても、痛みや違和感が残っているため、爪を触りたくなるきっかけそのものがなくなりません。

1
爪の端をむしる

爪の端を手でむしっている様子のイラスト

2
トゲが残る

爪の端に爪の棘が残った様子のイラスト

3
皮膚が傷つく

爪の棘が皮膚の下に潜り傷つける様子のイラスト

4
炎症が起こる

爪のサイドが赤く腫れている様子のイラスト

5
痛みをかばうためにさらにむしる

赤くなっている爪のサイドをさらに手でむしる様子のイラスト

足の陥入爪の対処法

当院では、短くなった爪を透明な人工爪プレートで補い、爪の角が皮膚に当たる刺激を減らします。

痛みや違和感を軽減することで、爪をむしりたくなるきっかけを減らし、自分の爪を本来の長さまで伸ばしていくことを助けます。

人工爪プレートは爪むしりそのものを治療するものではありません。
「痛いからむしる」という悪循環から抜け出し、爪を伸ばすための環境をつくる施術です。

1
爪むしりから陥入爪に進行

爪むしりによって陥入爪になったイラスト

2
爪の端にアンカーを作る

爪のサイドにプレートを装着した様子

3
欠損したつま先を人工爪で作る

つま先部分に人工爪を装着した様子のイラスト

4
余分な部分や段差を綺麗に削る

マシンで人工爪プレートの余分な部分を削って整えている様子のイラスト

5
コーティングして完了

コーティングされた母趾の爪のイラスト

※この施術法は足の爪に限られます。手の爪には適しません。

よくある質問

Q
爪を噛んでいる子供はストレスを抱えているのでしょうか?

A

Q
爪を噛んでいると精神疾患があるということですか?

A

Q
爪を噛むのを注意すれば治りますか?

A

Q
爪噛み防止の苦いマニキュアは効果がありますか?

A

Q
爪をむしって変形した爪は治りますか?

A

まとめ

爪噛みや爪むしりは、単純な「悪い癖」だけで説明できる行動ではありません。

咬爪症(爪噛み)では、無意識に行っている人が多く、ストレス、緊張、退屈など複数の要因が関係します。

ニコチロマニア(爪むしり)では、爪や甘皮を繰り返し傷つけることで、爪母まで損傷し、長期的な爪の変形につながることがあります。

改善の基本は、

  1. 爪を噛む・むしるタイミングに気づく
  2. 爪の引っかかりなどの刺激を減らす
  3. 爪を物理的に保護する
  4. 別の行動へ置き換える

ことです。

参考文献

  • Lee DK, Lipner SR. Update on Diagnosis and Management of Onychophagia and Onychotillomania. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022;19:3392.
  • Pacan P, et al. Onychophagia and Onychotillomania: Prevalence, Clinical Picture and Comorbidities. Acta Dermato-Venereologica. 2014;94:67-71.
  • Sachan A, Chaturvedi TP. Onychophagia (Nail biting), anxiety, and malocclusion. Indian Journal of Dental Research. 2012;23:680-682.
  • Sidiropoulou P, et al. Onychotillomania: A Chameleon-Like Disorder: Case Report and Review of Literature. Skin Appendage Disorders. 2019;5:104-107.
麻多 聡史
院長

この記事を書いた人

アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、PRIマイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了、脚の長さコーディネーター

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