
外反母趾の運動療法
外反母趾では、親指が曲がっていることだけが問題ではありません。
親指でしっかり踏みにくくなったり、足裏の荷重バランスが乱れたり、足指をうまく使えなくなったりすることで、痛みや胼胝、歩きにくさにつながることがあります。
そのため外反母趾の運動療法では、親指の向きを無理に戻すのではなく、足指を使いやすくし、足全体で支えやすい状態を目指します。
外反母趾で足指が使いにくくなる理由
外反母趾では、親指が人差し指側へ曲がり、親指の付け根の関節や足裏の筋肉がうまく働きにくくなることがあります。
本来、歩くときには親指で地面を押し、足裏を安定させながら前へ進みます。
しかし、外反母趾によって親指が使いにくくなると、親指の付け根に力が入りにくくなり、第2趾や第3趾の付け根、足裏の中央、小指側などに負担がかかりやすくなります。
その結果、足裏の胼胝、足指の痛み、ハンマー趾、小指側の痛みなどを伴うことがあります。

運動療法の目的
外反母趾の運動療法は、変形を完全に元へ戻すためのものではありません。
目的は、親指や足指を使いやすくし、足裏の荷重バランスを整え、痛みの軽減や進行予防につなげることです。
特に大切なのは、次のような点です。
- 親指を支える筋肉を働かせる
- 足指で地面をとらえやすくする
- 足裏のアーチを支えやすくする
- 親指の付け根の動きを保つ
- 歩くときに親指で踏み込みやすくする
- 足裏の荷重の偏りを減らす
外反母趾では、親指だけでなく、足全体の使い方を整えることが大切です。
変形が強い外反母趾では、運動の方法に注意
変形が強い外反母趾では、やみくもに足指を握る運動を行えばよいわけではありません。
外反母趾が進むと、親指の骨の位置だけでなく、親指を動かす腱の通り道もずれてしまいます。本来、親指を曲げたり伸ばしたりする腱は、親指をまっすぐ動かす方向に働きます。
ところが、外反母趾の変形が強くなると、長母趾屈筋や長母趾伸筋という親指を動かす腱の位置が外側へずれ、親指を人差し指側へ引っ張るように働いてしまいます。
その状態で足指の運動を行うと、親指をまっすぐ使う練習ではなく、かえって親指の外反方向への力を強めてしまいます。

エクササイズ前の徒手療法
外反母趾では、足の横幅が広がる「開張足」や、親指の骨が人差し指側へ曲がる変形によって、親指を動かす腱の通り道がずれてしまうことがあります。
腱の位置が外側へずれたままだと、足指を動かしたときに親指を人差し指側へ引っ張る力が強くなります。
いきなり足指の運動を行うのではなく、まず徒手療法で足部の硬さや骨の動きを確認し、親指を動かす腱が本来の方向へ働きやすい余地を作ります。

外反母趾の背景には、「開張足」がある
外反母趾の背景には、足の横幅が広がる「開張足」が関係しています。
開張足では、親指の付け根の骨が内側へ開き、前足部が横に広がります。その状態で足指だけを強く使おうとすると、足裏や足指の付け根に負担がかかります。

「足指を鍛える前の土台づくり」=長腓骨筋
そのためまず親指の土台となる第1中足骨を安定させます。ポイントになるのが、長腓骨筋という筋肉です。
長腓骨筋は、すねの外側から足の裏を斜めに通り、親指の付け根に付く筋肉です。この筋肉は、足の外側と内側をつなぎ、親指の土台を支える働きがあります。

長腓骨筋がうまく働くと、足の縦アーチや横アーチを支えやすくなり、広がりすぎた前足部をまとめる助けになります。
外反母趾では、親指だけでなく、親指の土台、足のアーチ、足裏の荷重バランスまで整えることが大切です。
当院では、必要に応じて徒手療法で足部の動きや硬さを整えたうえで、長腓骨筋、母趾外転筋、足部内在筋が働きやすい状態を作っていきます。

長腓骨筋エクササイズ
外反母趾では、開始姿勢の時点で踵が内側に倒れ、つま先が外を向いている方も少なくありません。まず足の向きと踵の位置をニュートラルに整えてからエクササイズを開始します。
エクササイズでは、腓骨頭の後方で長腓骨筋の収縮を確認しながら、踵の外側を少し地面から浮かせるように踵を外反させます。
土踏まずを軽く下げるように行うことで、長腓骨筋の収縮を引き出しやすくなります。ただし、つま先が外を向いてしまう場合は、短腓骨筋が優位に働いている可能性があるため注意が必要です。

足の内在筋とは
足の内在筋とは、足の中にある小さな筋肉のことです。
ふくらはぎから足に伸びてくる大きな筋肉とは違い、足の中で始まり、足の中で終わる筋肉です。
足の内在筋は、足指を動かすだけでなく、土踏まずや足の横アーチを支える働きがあります。
そのため、歩くときに足裏を安定させたり、足指で地面をとらえたりするために大切な筋肉です。

内在筋エクササイズ
足の内在筋を働かせたい場合に大切なのは、指先だけを丸めることではなく、足指の付け根から曲げることです。
指先だけを強く曲げる動きは、足の外から伸びてくる大きな筋肉(外在筋)が働きやすくなります。この動きが強くなると、足指で床を握り込むような動きになり、足裏や足指の付け根に負担がかかることがあります。
足指の付け根(MTP関節)から曲げることができると、足の内在筋が働きやすくなります。足指の付け根が安定すると、足裏のアーチを支えやすくなり、足指で地面を押しやすくなります。
外反母趾では、親指でしっかり踏みにくくなったり、足裏の荷重が第2趾や第3趾の付け根に偏ったりすることがあります。そのため、足指をただ握る運動ではなく、足指の付け根を使いながら、足裏全体で支える感覚を身につけることが大切です。

ショートフットエクササイズ
座った状態で足裏を床につけ、足指を丸めないように注意しながら、土踏まずを軽く持ち上げます。足の裏を短くするようなイメージで行いますが、足指で床を握り込まないことが重要です。
土踏まずを軽く持ち上げた状態を3秒間保ち、力を抜きます。これを5回くり返します。
この運動では、母趾外転筋、小趾外転筋、長趾屈筋などが働きやすくなります。

足趾伸展エクササイズ
座った状態で足裏を床につけた状態を開始肢位とします。
2〜5趾を床につけたまま母趾だけを床から持ち上げます。一度床に母趾を下ろし、次は母趾を床につけたまま、2〜5趾を持ち上げます。
この運動では、短趾伸筋、母趾外転筋、短小趾屈筋、小趾外転筋、短母趾屈筋、母趾内転筋などが働きやすくなります。

親指を曲げると、他の指も一緒に動くことも
足指の運動では、親指だけを動かそうとしても、第2趾や第3趾が一緒に曲がることがあります。この動きは、必ずしも「うまくできていない」「代償している」という意味ではありません。
足の裏には、親指を曲げる腱と、第2趾から第5趾を曲げる腱があります。親指を曲げる腱を長母趾屈筋腱、第2趾から第5趾を曲げる腱を長趾屈筋腱といいます。
この2つの腱は、足の裏の内側で交差しています( knot of Henry)。
人によっては、この部分で親指を曲げる腱と他の足指を曲げる腱の間に、腱の線維のつながりがあることがあります。そのため、親指を曲げたときに、第2趾や第3趾も一緒に曲がることがあります。

長母趾屈筋分枝テストについて
必要に応じて、親指を曲げたときに他の足指がどこまで一緒に動くかを確認します。このテストを、FHL分枝テストといいます。
親指の付け根の裏側から軽く抵抗をかけた状態で、親指の先を曲げてもらいます。このとき、第2趾まで一緒に曲がるのか、第3趾まで一緒に曲がるのか、あるいは他の指はあまり動かないのかを観察します。
第2趾まで一緒に曲がる場合は、親指を曲げる腱の影響が第2趾まで及んでいる可能性があります。第3趾まで一緒に曲がる場合は、第2趾・第3趾まで腱のつながりが影響している可能性があります。

2〜4趾伸展エクササイズ
座った状態で足裏を床につけた状態を開始肢位とします。
母趾と小趾を床につけたまま、2〜4趾だけを上げたり下ろしたりを繰り返します。

Toe Spread Outエクササイズ
座った状態で足趾を全て起こします。
その状態から母趾だけを床に下ろします。次に小趾を下ろします。最後に2〜4趾を床につけます。
この運動では、短母趾屈筋、短小趾屈筋、小趾外転筋、母趾内転筋などが働きやすくなります。

IP関節伸展位・MTP関節屈曲エクササイズ
体重をかけない状態で行います。
足指を丸めないように注意しながら、足趾の付け根(MTP関節)から曲げる動きを繰り返します。

足関節底屈位・足趾屈曲エクササイズ
体重をかけない状態で行います。
足首を下げた状態(足関節底屈位)で足指を丸めないように注意しながら、足趾の付け根(MTP関節)から曲げる動きを繰り返します。

足趾内転・外転エクササイズ
体重をかけない状態で行います。
足趾の伸展による代償に注意しながら、母趾と小趾を外に開き数秒間ホールドした後、ゆっくり元の肢位に戻します。

タオルギャザーの注意点
タオルギャザーは、足の内在筋を鍛える運動としてよく行われます。
しかし、足指の先でタオルを引っかけるように行うと、ふくらはぎから足指につながる外在筋が優位に働きやすくなります。
足の内在筋を働かせるには、足指の先を丸めるのではなく、足指の付け根から曲げることが大切です。
「タオルを自分の方へたぐり寄せる」のではなく、「足指の付け根で、その場ですくい上げる」ように行います。
この動きにより、足裏のアーチを引き上げ、足指で床を握り込むのではなく、足裏全体で支える感覚を作りやすくなります。

中間楔状骨を高く保つことが、足指を正しく使う土台に
足には、親指側、小指側、中央の骨の列があります。その中でも、第2趾につながる骨の列は、足のアーチの中心として重要な役割を持っています。
この第2趾の列がしっかり高い位置に保たれることで、足の横アーチが作られ、前足部が安定しやすくなります。
第2趾につながる骨の列には、中間楔状骨という骨が関係します。第2趾の列が高い位置にあることで、前足部全体の骨の並びが整いやすくなり、足指の付け根を使いやすくなります。

手で足の形を整えながら行う足指エクササイズ
第1中足骨と第5中足骨を手で軽く近づけ、人工的に横アーチを作った状態で、足指の付け根から曲げる練習を行います。

また、第2趾につながる骨の列を手で少し持ち上げるようにサポートすることもあります。
この状態で、足指の先だけを丸めるのではなく、足指の付け根からゆっくり曲げる練習を行います。

ハイギア・ローギアシステム
歩くとき、足はいつも同じ場所で地面を蹴っているわけではありません。
踵が地面から離れ始めるときは、まず足の外側に体重が流れやすくなります。このときは、第2趾から第5趾の付け根を中心にして、比較的少ない力で足を前に運びます。
その後、踵がさらに上がってくると、親指側に体重が移り、親指と第2趾の付け根を中心にして地面を押します。
外反母趾では、親指で踏みにくくなることでこの切り替えがうまくいかず、第2趾・第3趾の付け根や足の外側に負担が残りやすくなります。

足の内在筋による横アーチを支える働き
足の内在筋には、足指を下に曲げる働きだけでなく、足の横幅をまとめ、横アーチを支える方向の力もあります。
そのため、足指の付け根から曲げるように使えると、足指の付け根が安定し、前足部の横アーチが作られやすくなります。
足指の付け根から曲げることができると、足の内在筋が働きやすくなり、足裏の横アーチや足指の接地を支えやすくなります。

小指側の土台も、足指を正しく使うために大切
外反母趾の運動療法では、親指側だけでなく、小指側の土台も重要です。
足の外側には、「立方骨」という骨があります。この立方骨は、小指側のアーチや足の外側の安定に関係しています。
特に小指側では、立方骨が適切な位置に保たれることで、その下を通る筋肉が働きやすくなります。

立方骨を挙上した状態でのエクササイズ
立方骨が下がりすぎたり、足の外側が不安定になったりすると、足の内在筋がうまく働きません。そのため立方骨の真下にボールを当て、立方骨を挙上した状態でエクササイズを行います。

短小趾屈筋・小趾外転筋エクササイズ
小指側の骨の列は、もともと構造的に安定しています。
そのため、普段の歩行では骨でしっかり支えられてしまい、小指側の筋肉が十分に働いていないことがあります。
小指側には、短小趾屈筋や小趾外転筋という筋肉があり、足の外側のアーチや横アーチを支える働きがあります。
小指側がうまく働くと、前足部が横に広がりすぎるのを抑えやすくなり、足指の付け根から曲げる動きが出しやすくなります。

外側縦アーチを作るエクササイズ
足には、土踏まずだけでなく、小指側にも外側縦アーチがあります。この外側縦アーチがうまく働くことで、足の外側が安定し、歩くときに体重を支えやすくなります。
このエクササイズでは、小指を床につけたまま、踵の外側を少し浮かせるように動かします。
小指を床につけた状態で踵の外側を浮かせると、足の外側の筋肉が働きやすくなり、小指側の支えを作りやすくなります。

外側縦アーチとは
外側縦アーチとは、足の外側にあるアーチのことです。
足のアーチというと「土踏まず」をイメージする方が多いですが、実は足には内側だけでなく、外側にもアーチがあります。
外側縦アーチは、かかとの骨である踵骨、足の外側中央にある立方骨、第4・第5中足骨によってつくられています。
土踏まずのようにはっきり見えるアーチではありませんが、立つ・歩く・走るときに足を安定させるために重要な役割をしています。
外側縦アーチは比較的しっかりした構造で、足の外側から体重を支え、歩くときの安定性を高めています。
歩行では、かかとから接地したあと、体重は足の外側を通って前足部へ移動していきます。このとき外側縦アーチがうまく働くことで、足がぐらつきにくくなり、スムーズに体重を前へ運ぶことができます。
つまり、外側縦アーチは、足の外側から身体を支え、歩行時の安定性や体重移動を助ける大切なアーチです。

内側縦アーチを作るエクササイズ
外反母趾の運動療法でも重要なのが、母趾外転筋です。
母趾外転筋は、親指を内側から支え、親指の付け根を安定させる筋肉です。外反母趾では、この筋肉がうまく働きにくくなり、親指で踏み込みにくくなることがあります。
このエクササイズでは、まず足指をすべて軽く伸ばします。その状態から、親指だけを足指の付け根から曲げるように動かします。
指先だけを丸めるのではなく、親指の付け根から床を押すように動かすことが大切です。
この動きによって、母趾外転筋や短母趾屈筋が働きやすくなり、親指の付け根を支えやすくなります。
さらに、必要に応じて親指に軽い抵抗をかけながら行います。抵抗は、親指を上に反らす方向と、人差し指側へ押す方向に軽く加えます。
親指をうまく曲げることが難しい場合は、親指の下に数mm程度の薄いシートを置き、高さを調整して行うことがあります。高さを少し補うことで、親指の付け根から床を押しやすくなり、母趾外転筋が働きやすい状態を作ります。

後足部安定化エクササイズ
このエクササイズでは、片膝立ちの状態でつま先立ちになり、足に体重をかけながら行います。
つま先立ちになることで、足底腱膜が働き、足裏が引き締まります。
その状態で、母趾球側で床を押すと長腓骨筋が、小趾球側で床を押すと後脛骨筋が働きやすくなります。
このように、足の外側から親指側を支える長腓骨筋と、内側から足のアーチを支える後脛骨筋が協調して働くことで、足裏全体を安定させることができます。これを、クロスサポートメカニズムといいます。

長腓骨筋と後脛骨筋のクロスサポートメカニズム
足のアーチは、骨や靱帯だけでなく、筋肉によっても支えられています。その中でも重要なのが、長腓骨筋と後脛骨筋という2つの筋肉です。
この2つの筋肉は、足の裏で交差するように走っています。このように、足の内側と外側から支え合う仕組みをクロスサポートメカニズムといいます。
後脛骨筋は、足の内側から土踏まずを支える筋肉です。舟状骨や楔状骨といった、土踏まずをつくる骨を支えることで、内側のアーチが下がりすぎないように働きます。
一方、長腓骨筋は、足の外側から足の裏を横切って、親指側の骨に付いています。
そのため、足の外側から親指側を安定させ、足の横アーチや土踏まずを支える働きがあります。
この2つの筋肉が一緒に働くことで、足の裏を下から締めるような力が生まれます。
その結果、土踏まずや足の横アーチが支えられ、歩くときに足が安定しやすくなります。

外反母趾の運動療法を相談したい方へ
外反母趾の運動療法は、変形を完全に元へ戻すためのものではありません。
「少しでも良くしたい」
「これ以上進行させたくない」
「手術になる前に、できることを知りたい」
このような方は、一度ご相談ください。足指の使い方、足裏のアーチ、歩くときの荷重バランスを整えることで、進行予防や足の機能向上を目指すことができます。
当院では、外反母趾を親指だけでなく、足全体と靴の状態から確認し、一人ひとりに合った保存的なケアを提案します。

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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、PRIマイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了、脚の長さコーディネーター

外反母趾外来について






