
FAIについて(原因と症状)
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FAIについて(原因と症状)
FAIとは
FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)とは、股関節の骨の形にわずかな変形があることで、動かしたときに大腿骨(太ももの骨)と骨盤のくぼみ(寛骨臼)がぶつかり、関節の中で「こすれ」や「衝突(インピンジメント)」が起こる状態です。
この衝突が繰り返されると、関節の縁にある関節唇や軟骨が傷つき、鼠径部(足の付け根)に痛みが出るようになります。進行すると、変形性股関節症(OA)へとつながることもあります。

股関節の構造
股関節は、骨盤の「ソケット(寛骨臼)」と太ももの骨の丸い「ボール(骨頭)」が組み合わさった球関節です。
この形のおかげで、足を前後・左右・回すといったさまざまな動きができる一方、動きが大きいぶん関節を安定させる仕組みが必要になります。

股関節のまわりにはお尻の筋肉(殿筋)や太ももの筋肉など多くの筋肉があり、さらに靱帯や関節包が関節を包み込むように支えています。
その内側にあるのが「関節唇」です。関節唇は、股関節の“ふち”をぐるりと囲むやわらかい軟骨のような組織です。
形は「ひさし(屋根の端)」のように少し外側にせり出していて、太ももの骨の丸い部分(骨頭)をしっかり包み込むことで、関節を安定させています。

FAIのタイプ
FAIは、骨のどこに変形があるかで3つのタイプに分けられます。
① ピンサー型(pincer type)
- 骨盤側(寛骨臼)に原因があるタイプ
- 主に30〜40代の女性に多いとされています
- 股関節の前上方で関節唇が傷つき、軟骨も一部損傷します(傷の範囲は比較的狭い)
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② カム型(cam type)
- 太ももの骨側(大腿骨)に原因があるタイプ
- 主に20〜30代の男性に多いとされています
- 関節唇と軟骨がより広い範囲で傷つき、剥がれるような損傷がみられます
③ 混合型(mixed type)
- 実際の多くのケースは、上の2つが混ざった「混合型」です。
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FAIの症状
- 主な症状は股関節や鼠径部の痛み
- 特に股関節を曲げたり、内側にひねったりしたときに痛みが出ることがあります
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FAIの検査
前方インピンジメントテスト(FADIRテスト)
Flexion(屈曲)– Adduction(内転)– Internal Rotation(内旋)の頭文字をとって「FADIR」と呼ばれます。
- FABERテストよりも反応が出やすいと報告されています。
- 方法:仰向けで股関節を約90度曲げ、軽く内側に寄せながら(内転)内側へひねります(内旋)。
- 陽性所見:股関節の前方(鼠径部)に痛みが出る場合は、関節唇損傷やFAIが疑われます。
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Patrickテスト(FABERテスト)
Flexion(屈曲)– Abduction(外転)– External Rotation(外旋)の頭文字をとって「FABER」と呼ばれます。
- 方法:仰向けで寝た状態で、検査する脚を「4の字」に組むように曲げ、膝を外に開きます。
- 陽性所見:股関節の前面に痛みが出る場合は、関節内のトラブル(関節唇損傷など)が疑われます。
ただし、炎症が落ち着いた時期では痛みが出にくくなることもあります。
可動域の比較
健康な側と比べて、股関節の内旋(内向きひねり)角度が低下していることも参考になります。

画像所見
PINCERタイプ
- CE角(中心‐縁角)が40°以上
- CE角が30°以上で、寛骨臼の傾きが0°以下
- CE角が30°以上で、「クロスオーバーサイン」陽性(=骨盤の前上部がやや後ろ向きにねじれている状態)


CAMタイプ
- CE角(中心‐縁角)が25°以上
- 主な所見:α角が55°以上
- 補助的な所見:
- head-neck offset ratioが0.14未満(骨の首部分のくびれが少ない)
- pistol grip変形(骨の形がピストルのグリップのように見える)
- herniation pit(骨の表面に小さなくぼみがある)
画像診断法
Center-Edge(CE)角
股関節の「はまり具合(骨頭がどのくらい深くくぼみに入っているか)」を示す角度です。
- 角度が小さい → 骨の覆いが浅く、「寛骨臼形成不全」が疑われます。
- 角度が大きい(40°以上) → 骨の覆いが深く、「ピンサー型インピンジメント」を起こしやすくなります。


α角
大腿骨(太ももの骨)の形を評価する角度です。
X線側面像で、骨頭の中心と頚部(首の部分)の中心を結ぶ線と骨頭の中心と「丸みが変化する点(出っ張りが始まる点)」を結ぶ線のなす角度です。
- 55°以上 → 骨の首の部分が出っ張っており、「カム型インピンジメント(cam type)」を起こしやすい形です。
Head-Neck Offset Ratio
大腿骨の「首のくびれ具合(骨頭と頚部の段差)」を数値化したものです。
X線側面像で、骨頭の前縁と頚部の最も細い部分の前縁の距離(A)を、骨頭の直径(B)で割った比率(A/B)で表します。
- 比率が0.14未満 → くびれが少なく、骨の形がなだらかすぎて、前方で骨がぶつかりやすい傾向があります。


Head-Neck Offset Ratio
α角は、大腿骨(太ももの骨)の形を評価する角度です。
X線側面像で、骨頭の中心と頚部(首の部分)の中心を結ぶ線と骨頭の中心と「丸みが変化する点(出っ張りが始まる点)」を結ぶ線のなす角度です。
- 55°以上 → 骨の首の部分が出っ張っており、「カム型インピンジメント(cam type)」を起こしやすい形です。
似た症状でも別の疾患
FAIに似た症状を起こす病気も多いため、以下のような疾患はFAIとは区別して考えます。
- 関節リウマチ、強直性脊椎炎、反応性関節炎、SLEなどの炎症性疾患
- 石灰沈着症、異常な骨化、骨腫瘍、痛風性関節炎、ヘモクロマトーシス
- 大腿骨頭壊死、股関節周囲の骨折の後遺症、感染による関節損傷
- すでに変形性股関節症(股関節症)が進んでいるケース
- 発育性股関節形成不全、大腿骨頭すべり症、ペルテス病など小児期の股関節疾患
- 股関節手術の既往がある場合
FAIのリハビリ
ストレッチ3種目、トレーニング3種目で構成されています。痛みのない範囲で行なってください。
股関節後方のストレッチ
- 椅子に座ったまま、片膝を胸の中央に向かって抱えます。
- 同時に、足首も体の方へ引き寄せます。
- 腰や骨盤が丸くなりすぎないよう注意します。
- お尻や股関節の後ろが「じんわり伸びる」感覚で止めましょう。
- 痛みが出るほど強く引かないことが大切です。


股関節前方のストレッチ
- 片脚を前、反対の脚を後ろにして立ちます。(軽いランジ姿勢)
- 後ろ脚側の股関節を伸ばす意識で、体重をゆっくり前へ移動します。
- 腰を反らしすぎないよう注意します。
- 伸ばしている側の骨盤を、前に向けるイメージで行います。
- 股関節の前側が心地よく伸びる位置で止めましょう。
腸腰筋の遠心性収縮エクササイズ
体幹を後ろに倒す動きの中で、腰や骨盤を安定して保てつトレーニングです。
- お尻の下にフォームローラーを置きます。
- 背すじを伸ばし、腰は反らしすぎず丸めすぎない姿勢を保ちます。
- 腰や骨盤の位置をできるだけ変えずに、上半身だけを後方へ傾けていきます。
- 体幹を倒す途中で腰が丸くなる、骨盤が後ろに倒れてしまう、動きを途中で止められず勢いで倒れてしまうなどはうまくコントロールできていない状態です。

Cat-Cow
- 四つ這いの姿勢になります。(手は肩の真下、膝は股関節の真下)
- 息を吐きながら、おへそをのぞき込むように背中を丸めます。
- 息を吸いながら、胸を開くようにゆっくり背中を反らします。


中殿筋のトレーニング
- 横向きに寝て、下の脚を軽く曲げます。
- 上の脚を少し外に開きながら持ち上げます。
- つま先と膝はやや内側に向けます。
- 骨盤が後ろに倒れたり、体が反らないよう注意します。
- 脚を大きく開きすぎず、軽く外に開く位置で行います。
小殿筋のトレーニング
- 股関節を少し曲げた状態で太ももを大きく動かさず、つま先を内側に回す動きを行います。
- 股関節の奥がじんわり働く感覚を意識します。

FAIは変形性関節症に進行しやすい
FAIがあると、将来股関節の変形性関節症になりやすいのかを調べた研究があります。45〜65歳の中高年を対象に10年間、股関節の状態を追跡した大規模研究です。
その結果、FAIS(大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群)がある股関節は、将来、変形性関節症を発症するリスクが非常に高いことが明らかになっています。実際に、10年以内に約8割(81%)が変形性関節症を発症し、さらに約3割(33%)が人工股関節が必要となる重症レベルまで進行していました。これは、FAISを認めない股関節と比べて、何倍も高い発症リスクであることを示しています。
股関節の不調は、早めに気づくことが大切です。無理のない動き方を身につけ、負担を減らすケアや運動を続けることで、悪化を防ぐことにつながります。

Agricola R, van Buuren MMA, Kemp JL, Weinans H, Runhaar J, Bierma-Zeinstra SMA.
Femoroacetabular impingement syndrome in middle-aged individuals is strongly associated with the development of hip osteoarthritis within 10-year follow-up: a prospective cohort study (CHECK).
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