体幹には2つの機能がある
体幹部分の使い方には2通りあります。
ガチッと固める、いわゆる硬い体幹「ハードコア」と
状況に合わせてタイミングよく素早く働く「ソフトコア」です。
ソフトコアとは
ハードコア;強く硬い体幹。クランチやプランクなど。
ソフトコア;反射的に働く体幹。電車での揺れに反応するときなど。
といわれます。
もっと詳しくみていきましょう。
ハードコアは高閾値ストラテジー、ソフトコアは低閾値ストラテジーといえます。
高閾値ストラテジーとは
高閾値ストラテジーは一過性の力の発揮に適しており、身体の外側の筋肉(いわゆるアウターマッスル)が担当します。
強い負荷に反応し、大きな筋力が素早く発揮されます。最大筋力の40%以上の筋収縮により動員されます。
これらの筋肉はグローバルモビライザーと呼ばれ、速筋線維(FMU)が多く含まれます。そのため、強い筋収縮には適していますが、疲れやすく、収縮したり弛緩したりのメリハリのある動きには適していません。
低閾値ストラテジーとは
姿勢や関節のアライメント(位置関係)を微調整する際に用いられます。身体の奥の方にある筋肉(いわゆるインナーマッスル)が担当します。身体の安定性を司ります。
これらの筋肉は、ローカルスタビライザーとも呼ばれ、背骨1個1個を繋ぐような小さな筋肉群です。そのため大きな力を発揮することはできない反面、疲れにくく無意識的な身体のコントロールに適しています。
これらの筋群は、最大筋力の40%以下の弱い負荷で動員され、ゆっくりと収縮(遅筋線維・SMU優位)します。
低閾値ストラテジーから高閾値ストラテジーの順番で動員される
高閾値ストラテジーの前に、低閾値ストラテジーが発揮され、関節を安定させます。
高閾値ストラテジーは運動にとって大切ですが、不適切なトレーニングによって機能不全に陥ることがあります。
低閾値ストラテジーの機能低下
低閾値ストラテジーの機能低下により動員されにくくなったとき、高閾値ストラテジーであるグローバルモビライザーが、ローカルスタビライザーの代わりをしなければなりません。
つまり、本来の働きである大きな力の発揮だけではなく関節の安定性までも担わなければなりません。姿勢やアライメントの悪化につながります。
筋肉をほぐすことではなく、低閾値ストラテジーをしっかりと動員させることが必要不可欠になります。
エクササイズの目的
低閾値で反応するソフトコアを活性化させるエクササイズです。
ソフトコアを動員し、頸椎、胸椎、腰椎、骨盤、股関節がそれぞれ適切なタイミングで動かせるようにすることが目的です。
さらに寝返り動作(ローリング)をスムーズに行うことで、背骨のモビリティ(可動性)とスタビリティ(安定性)を獲得できます。
こんな人におすすめ
- 腰痛でお悩みの方
- 滑らかな動きができない方(動きが硬い人)
ローリングの種類
- 右上肢からのローリング
- 左上肢からのローリング
- 右下肢からのローリング
- 左下肢からのローリング
があります。どのパターンも左右差なくスムーズに動作が出来ることが大切です。
右上肢からのローリング
▲両手を頭上に挙げ、両脚を骨盤の幅を離して仰向けに寝ます。
▲寝返る側のわきの下を覗き込むように、頭を持ち上げます。
片方の腕を頭上に保ちながら、体を横切って片方の腕を伸ばします。
下半身は上半身が引っ張るまで床にリラックスしたままです。足は完全脱力です。
▲首から動きが伝わるように、肩、背中、腰、骨盤、股関節の順にスムーズに回旋し、うつ伏せになります。
▲首から動作を始め、肩→背中→腰→骨盤→股関節の順に動きを伝えます。
常に目線は自分の手を追うように向けておきます。
▲また、足は常に脱力した状態で、上半身から動きが伝わるまではリラックスさせておかなければなりません。足で地面を押したり反動をつけたりしてはいけません。
呼吸が乱れたり、怒責を伴うような動作になってはいけません。
下肢からのローリング
▲片脚を上げ、反体側に足を伸ばします。
▲伸ばした足に引っ張られるように股関節→骨盤→腰椎→胸椎→頚椎の順に回旋させます。
▲上肢からのローリングパターンよりも比較的容易に行えるエクササイズですが、力んだり呼吸を止めたり、身体で地面を押したりはしないように気をつけて行ってください。
▲うつ伏せの姿勢から片脚を持ち上げます。
▲足➜股関節➜骨盤➜腰椎➜胸椎➜頸椎の順に滑らかに回旋させます。
▲滑らかな動作を心掛け仰向け姿勢に戻ります。
呼吸を止めたり、反動をつけたりせずに行ってください。
アシスト付きのローリング① 下肢の促通を伴った上肢からのローリング
上肢と下肢を分離して動かすためのエクササイズです。
ローリング・エクササイズを行う時にどうしても下肢で地面を押してしまう方向けのリグレッションとしても有効です。
▲足をまっすぐ伸ばした状態で、両手は万歳します。
寝返る方向の足にバンドを巻き付けます。
バンドは回旋軸の安定性を助けます。
▲腕を持ち上げ、首は自分の反対側のわきの下を覗き込むように屈曲します。
▲上肢の動きが胸郭、骨盤、下肢を連れてくるようにスムーズに回旋させます。足は完全にリラックスした状態を保ちます。
▲そのままゆっくりとうつ伏せ姿勢になります。
▲首から回旋させて、常に自分の挙げている側の手を見るようにします。
▲頸椎の回旋が、胸椎、そして腰椎に背骨1つずつ動くように波及していきます。
身体を反らせたり、足で地面を蹴ったりしないように注意します。
▲骨盤へと動きが伝わります。両下肢は完全リラックスです。
▲仰向けに戻って終了です。
何度か一連の動作を繰り返すか、バンドを逆側の足に付け替えて反対側を行います。
アシスト付きのローリング② 上肢の促通を伴った上肢からのローリング
仰向けに寝た状態で、動く側と反対側の腕にバンドを巻き付けます。
バンドは寝返る軸を固定するために用います。
▲腕を持ち上げ、首は自分の反対側のわきの下を覗き込むように屈曲します。
▲上肢の動きが胸郭、骨盤、下肢を連れてくるようにスムーズに回旋させます。足は完全にリラックスした状態を保ちます。バンドで固定された軸の周りを最小限の動きで回ります。
▲頚椎から運動を開始し、胸椎、腰椎へと波及させます。
▲両足は完全に脱力した状態で保ちます。
▲そのままゆっくりと仰向けに戻ります。
アシスト付きのローリング③ 下肢の促通を伴った下肢からのローリング
▲仰向けに寝ます。
回旋軸を固定するために、寝返る側の下肢にバンドを巻きつけます。
▲両上肢、寝返る側の下肢は脱力したまま、足を持ち上げます。
▲持ち上げた足を伸ばし、身体を横切ります。
▲自然な動作で、骨盤→腰椎→胸椎の順に回旋させます。
背骨を一つずつ動かしていくイメージで動きます。
ソフトコアを動員したいので、体幹を一塊りにして動くような動作では、ハードコアを動員してしまいます。
また、呼吸を止めてしまうと、ソフトコアが働きにくくなるため、自然な呼吸を心がけましょう。
▲両上肢をリラックスしたまま、下肢を挙上します。
▲自然な動作で回旋します。
▲骨盤→腰椎→胸椎の順に回旋します。
▲ゆっくりと仰向けに戻ります。
アシスト付きローリング④ 上肢の促通を伴った下肢からのローリング
▲仰向けに寝て、寝返る側の手にバンドを持ちます。
▲両上肢を脱力したまま足から寝返りを開始します。
▲背骨を下から順に一個ずつ動かすように寝返ります。
力まずスムーズに行います。
▲次は下肢から寝返って、仰向けに戻ります。
▲仰向けに戻って完了です。