肩の上が痛む「肩鎖関節症」とは
原因・症状・治療・リハビリを解説

肩鎖関節症について

肩の上を押すと痛い、反対側の肩へ手を伸ばすと痛い、痛む側の肩を下にして眠れない。このような症状は、肩鎖関節症によって起きている可能性があります。

肩鎖関節は、鎖骨と肩甲骨をつなぐ小さな関節です。腕を上げる、物を持ち上げる、身体の反対側へ手を伸ばすなど、日常のさまざまな動作に関わっています。

肩鎖関節症にはいくつかの種類がありますが、最も多いのは、関節の軟骨がすり減る「肩鎖関節の変形性関節症」です。このページでは、変形性関節症を中心に、症状や原因、検査、治療についてわかりやすく解説します。

肩鎖関節症の主な症状

 肩の上を押すと痛む

 腕を反対側の肩の方へ動かすと痛む

 腕を頭上へ上げると肩が痛む

 痛む側の肩を下にして眠れない

 ベンチプレスや腕立て伏せで痛みが出る

 肩を動かすと引っかかりや音を感じる

肩鎖関節とはどこ?

肩は、主に次の3つの骨でつくられています。

  • 上腕骨
  • 肩甲骨
  • 鎖骨

肩甲骨の上部には、肩の屋根のような役割をする「肩峰」という骨の突起があります。この肩峰と鎖骨の外側端が接する部分が肩鎖関節です。

肩鎖関節の骨の表面は、滑らかな関節軟骨で覆われています。関節軟骨には、骨同士の摩擦を減らし、肩に加わる衝撃を和らげる役割があります。

肩鎖関節自体は大きく動く関節ではありません。しかし、肩甲骨の動きに合わせてわずかに動くことで、腕を頭上まで滑らかに上げられるようにしています。

肩鎖関節とは

肩鎖関節症とは

肩鎖関節症とは、肩鎖関節に変性や炎症が起きた状態です。

加齢や繰り返しの負担によって関節軟骨がすり減ると、関節の隙間が狭くなり、鎖骨と肩峰にかかる負担が増えます。関節の周囲に「骨棘」と呼ばれる骨の突起ができ、肩の上部が盛り上がって見えることもあります。

肩鎖関節の変形は中高年に多くみられます。ただし、重い物を繰り返し持ち上げる方や、腕を頭上で使うスポーツを続けている方では、若い年代でも発症します。

一方で、肩鎖関節が変形していても、痛みがない方は少なくありません。レントゲン検査などで関節炎が確認されても、それだけで肩の痛みの原因が肩鎖関節にあるとは判断できません。

肩鎖関節症とは

肩鎖関節症の主な症状

肩鎖関節症では、肩の上部から前方にかけて痛みが現れます。

主な症状は次のとおりです。

  • 肩の上部を押すと痛い
  • 腕を反対側へ動かすと痛い
  • 腕を頭上へ上げると痛い
  • 腕を背中側へ回すと痛い
  • 重い物を持ち上げると痛い
  • 痛む側の肩を下にして眠れない
  • 肩を動かすと音や引っかかりを感じる
  • 肩鎖関節の周囲が腫れている
  • 肩の上部に硬い出っ張りがある
  • 肩がこわばり、動かしにくい
肩鎖関節の圧痛

特に、次のような動作で痛みが強くなります。

  • シートベルトを取る
  • 反対側の肩へ手を伸ばす
  • リュックサックやバッグを肩に掛ける
  • 高い棚へ手を伸ばす
  • ベンチプレスを行う
  • 腕立て伏せを行う
  • ショルダープレスを行う
  • 痛む側の肩を下にして横向きで寝る

肩の上部だけでなく、首の付け根、肩全体、胸の前方へ痛みが広がることもあります。

肩鎖関節の痛みの肢位

肩鎖関節症が起こる原因

加齢による関節軟骨の摩耗

肩鎖関節は、日常生活の中で繰り返し使われています。長年にわたって負担が加わることで、関節軟骨が徐々に薄くなり、変性が進みます。

加齢による関節軟骨の摩耗

腕を頭上で使う作業

腕を高く上げた状態で作業を続けると、肩鎖関節に負担が集中します。

次のような仕事では、肩鎖関節への負担が増えます。

  • 建設作業
  • 電気工事
  • 左官作業
  • 塗装作業
  • 高い場所での反復作業
  • 重い物を扱う仕事

スポーツや筋力トレーニング

次のような運動を長期間続けている方にも多くみられます。

  • ベンチプレス
  • ショルダープレス
  • ウエイトリフティング
  • 水泳
  • テニス
  • バスケットボール
  • ラグビー
  • レスリング
  • 体操
  • クロスフィット

過去の肩鎖関節損傷

転倒して肩の外側を地面にぶつけたり、スポーツで肩に強い衝撃を受けたりすると、肩鎖関節を支える靱帯が損傷します。

受傷直後の痛みが改善しても、関節の位置や動きが変わり、数年後に変形性関節症を発症することがあります。

肩鎖関節の損傷

姿勢や肩甲骨の動き

猫背などによって背中や肩甲骨の位置が変わると、腕を上げるときの肩甲骨の動きも乱れます。

肩鎖関節だけでなく、肩甲骨、背骨、肩周囲の筋肉まで含めて確認することが大切です。

肩鎖関節症に悪い姿勢

関節リウマチなどの病気

肩鎖関節には、変形性関節症以外の関節炎が起こることもあります。

  • 関節リウマチ
  • 乾癬性関節炎
  • 痛風
  • 細菌感染による化膿性関節炎

急に強い痛みが出た場合や、激しい腫れ、皮膚の赤み、熱感、発熱がある場合は、変形性関節症以外の原因も考える必要があります。

関節リウマチによる肩関節の炎症

肩鎖関節症と他の肩の痛みとの違い

肩鎖関節症は、次のような肩の障害と同時に起こることがあります。

  • 腱板損傷(腱板断裂)
  • 肩峰下滑液包炎
  • 肩峰下インピンジメント
  • 上腕二頭筋腱の障害
  • 肩甲上腕関節の変形性関節症
  • 凍結肩

肩鎖関節の痛みは、肩の上部に限局しやすく、腕を身体の反対側へ動かすと強くなることが特徴です。

腱板の障害では、肩の外側から上腕にかけて痛むことが多くあります。肩の中心にある肩甲上腕関節の変形性関節症では、肩の深い部分や後方に痛みを感じ、肩全体の動きが制限されます。

ただし、痛む場所だけで原因を判断することはできません。複数の障害が重なっていることもあるため、肩全体を詳しく評価する必要があります。

肩鎖関節症に似た疾患

肩鎖関節症の検査

問診

まず、症状の経過や痛みが出る動作を確認します。

主に次のような内容をお聞きします。

  • いつから痛むのか
  • どこが痛むのか
  • どの動作で痛むのか
  • 夜間に痛みがあるか
  • 過去に肩を負傷したことがあるか
  • 仕事で腕を頭上へ上げることが多いか
  • どのようなスポーツや筋力トレーニングを行っているか
  • 日常生活でどのような動作に困っているか

身体検査

肩鎖関節の真上を押し、痛みがあるかを確認します。

また、腕を胸の前から反対側へ動かし、肩鎖関節の痛みが再現されるかを調べます。この検査は「水平内転テスト」または「肩鎖関節圧迫テスト」と呼ばれます。

肩鎖関節炎検査

エコー検査

関節の隙間や骨棘を確認します。

超音波検査では、肩鎖関節だけでなく、腱板、滑液包、上腕二頭筋腱などの軟らかい組織も確認できます。

肩鎖関節炎エコー

肩鎖関節症の治療

痛みを引き起こす動作を減らす

痛みが強い時期は、肩鎖関節を強く圧迫する動作を一時的に減らします。

  • 重い物を持ち上げる
  • 腕を繰り返し頭上へ上げる
  • 腕を反対側へ強く動かす
  • ベンチプレス
  • 腕立て伏せ
  • ショルダープレス
  • 痛む側の肩を下にして寝る

すべての活動をやめる必要はありません。痛みが出る回数、重量、動かす範囲を調整し、肩鎖関節への負担を減らします。

肩鎖関節症(痛みを引き起こす動作を減らす)

冷却療法(アイシング)

運動や作業の後に痛みや腫れが強くなった場合は、肩鎖関節を15~20分程度冷やします。

氷や保冷剤は直接皮膚へ当てず、タオルなどで包んで使用してください。

肩鎖関節症に対するアイシング

温熱療法

肩のこわばりが強い場合は、運動前に温めると動かしやすくなることがあります。

冷却や温熱療法は、一時的に症状を軽くする方法です。関節の変形を元に戻す治療ではありません。

肩鎖関節症に対する超音波治療

体外衝撃波

肩鎖関節周囲の痛みの軽減を目指します

衝撃波による機械的な刺激を加えることで、慢性的な痛みの軽減を図ります。

身体への負担が少ない治療です

切開や注射を行わず、皮膚の上から施術できる非侵襲的な治療です。

リハビリを進めやすくします

痛みを軽減することで、肩の可動域運動や肩甲骨・腱板のトレーニングを行いやすくします。

痛みのある部位へ直接アプローチできます

肩鎖関節周囲の痛みがある部位を確認しながら、狙った場所へ刺激を加えることできます。

肩鎖関節症に対する体外衝撃波

肩鎖関節症に対するリハビリテーション

肩鎖関節症では、痛む関節を強く動かしたり、筋力トレーニングを繰り返したりすれば改善するわけではありません。

肩鎖関節にかかる負担は、肩甲骨、腱板、背骨、体幹の動きにも左右されます。リハビリテーションでは、痛みや肩の状態に合わせて、段階的に運動を進めます。

第1段階:痛みを抑えながら肩の動きを保ちます

痛みを強くしない範囲で、肩をゆっくり動かします。

  • 振り子運動
  • 反対側の手で支えながら腕を上げる運動
  • 軽い肩の外旋運動
  • 棒を使った可動域運動

長期間まったく肩を動かさないと、関節が硬くなり、筋力も低下します。

肩鎖関節症に対するリハビリテーション①

第2段階:肩甲骨と腱板を強化します

痛みが落ち着いたら、肩甲骨周囲の筋肉と腱板を強化します。

  • 肩甲骨を後方へ寄せる運動
  • 肩甲骨を下げる運動
  • ゴムバンドを使った肩の外旋運動
  • ゴムバンドを使った肩の内旋運動
  • 壁に手をついて腕を上げる運動
  • 壁を利用した軽い腕立て伏せ

肩甲骨と腱板が正しく働くことで、腕を動かしたときの肩全体の安定性が高まります。

肩鎖関節症に対するリハビリテーション②

第3段階:日常生活やスポーツへ戻します

肩の動きと筋力が改善したら、仕事やスポーツに必要な動作へ段階的に戻します。

  • 軽い物を持ち上げる
  • 頭上へ手を伸ばす
  • 軽いプレス運動
  • 投球や捕球
  • 競技に必要な動作

最初から強い負荷をかけず、重量、回数、動かす範囲を少しずつ増やします。

肩鎖関節症に対するリハビリテーション③

リハビリ初期に避けたい運動

次の運動は肩鎖関節を強く圧迫するため、痛みが強い時期には控えます。

  • 高重量のベンチプレス
  • バーを深く下ろすベンチプレス
  • 腕立て伏せ
  • ディップス
  • 強いショルダープレス
  • 腕を反対側へ強く動かすストレッチ

痛みが軽減し、肩の動きと安定性が回復してから、狭い可動範囲と軽い負荷で再開します。

肩鎖関節症のリハビリ初期に避けたい運動

早めに医療機関を受診したほうがよい症状

次の症状がある場合は、外傷、骨折、感染症などが隠れている可能性があります。

  • 転倒や衝突の後から強く痛む
  • 肩の形が明らかに変わった
  • 腕をほとんど動かせない
  • 肩の上部が急に腫れた
  • 患部が赤くなっている
  • 強い熱感がある
  • 発熱を伴う
  • 安静にしていても強く痛む
  • 夜間の痛みが続き、眠れない
  • 痛みが急激に悪化した

よくある質問

Q
肩鎖関節症は自然に治りますか?
Q
検査で肩鎖関節症が見つかったら、治療が必要ですか?
Q
肩は動かさないほうがよいですか?
Q
筋力トレーニングを続けてもよいですか?
Q
必ず手術が必要ですか?

まとめ

肩鎖関節症は、鎖骨と肩甲骨の肩峰が接する小さな関節に起こる障害です。

腕を身体の反対側へ動かす、頭上へ上げる、重い物を持ち上げる、痛む側の肩を下にして寝るなどの動作で痛みが強くなります。

ただし、レントゲンで関節の変形が確認されても、それが必ず痛みの原因になるとは限りません。

肩鎖関節の圧痛、痛みを再現する動作、肩関節の可動域、肩甲骨や腱板の働き、ほかの肩の障害がないかを確認し、痛みの発生源を見極めることが大切です。

多くの場合は、痛みを引き起こす動作を調整し、肩甲骨や腱板を含めた段階的なリハビリテーションを行うことで、症状の改善と日常生活への復帰を目指します。

麻多 聡史
院長

この記事を書いた人

アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、PRIマイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了、脚の長さコーディネーター