変形性股関節症とは
長年の使用や繰り返される負担、けがなどによって、股関節の軟骨が変性したり、骨の変形が生じたりする病気です。女性に多く見られ、年齢とともに増加します。
変形性股関節症の症状
初期の症状
- 脚の付け根やお尻、膝の上の方のこわばり、重だるさ
- 歩き始めの痛み
- 長時間歩くと痛い
- 階段の昇り降りが痛い
- 坐骨神経痛や変形性膝関節症に似た症状が出ることもある
- 関節に水がたまっていたり、関節唇が損傷されることもある(強い痛みがある)
進行期~末期の症状
- 動きが制限されて痛みも強くなる
- 両足の長さの違い、それによる歩きにくさ
- 筋力低下
- 長距離の歩行や階段の昇降、しゃがみ立ちが困難になるなど日常生活が制限される
変形性股関節症の原因
原因がわからない一次性の変形性股関節症と、何らかの原因があり生じる二次性の変形性股関節症があります。80%以上が二次性でといわれています。
次のような原因が考えられます。
- 臼蓋形成不全
- 先天性股関節脱臼
- 小児期の股関節の病気、外傷、炎症など
臼蓋形成不全とは
臼蓋(股関節の屋根の部分)の不完全な発育により大腿骨頭(足の付け根部分)への被りが浅い状態です。
先天性股関節脱臼に起因するものと、成長期に臼蓋の発育が正常に進まない後天的なものとがあります。
中年以降に痛みが出て、はじめて臼蓋形成不全と診断される場合もあります。
正常の股関節
臼蓋がしっかりしている
臼蓋形成不全
屋根が浅い
変形性股関節症が進行すると
軟骨は、弾力に富み柔軟で、荷重を吸収・分散する能力に優れています。
しかし衝撃が何度となく繰り返されることによって、軟骨の表面に小さな傷がつきます。
軟骨の変性が進行すれば、次第に弾力性・柔軟性が失われてきます。
放っておくと関節の隙間は狭くなり、最終的には軟骨は完全になくなってしまい、軟骨の下の骨が露出した格好になります。
変形性股関節症の検査
問診や触診、関節の動きの範囲、歩き方、足の長さの違いなどを調べ、場合によっては病院でレントゲン検査を行い進行度を確認します。
変形性股関節症の治療
- 患部の安静、杖の使用、減量
- 超音波療法
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- インソール療法
- 末期は手術
変形性股関節症の特徴的な歩き方
変形性股関節症の方の多くは、特徴的な歩き方をしています。
股関節まわりの筋力低下や関節の不適合から歩行中、痛い側の足に体重が乗った時に反対側の骨盤が下にさがったり、上体が傾いたりします。
変形性股関節症に対する筋力トレーニング
一般的に変形した股関節への負担を減らすために股関節周囲の筋力をつける運動がすすめられます。
痛みのない範囲でゆっくりと行いましょう。痛みを我慢して行ってしまうと筋肉が硬くなってしまいます。
目標は軟らかく強い筋肉です。
左上:足を10cmほどゆっくりと上げたり降ろしたりします。足首を最大限に起こして行ってください。
左下:横向きに寝て足を15cmほどゆっくりと上げたり降ろしたりします。天井に向かって真上に持ち上げるようにしてください。
右:内ももの力でボールをつぶします。
関節を安定させる運動療法
骨盤が後傾した姿勢は股関節の安定性が悪く、逆に前傾した姿勢は股関節の安定性が高まった状態といえます。
加齢とともに変形性股関節症が進行する人の多くは、骨盤が後傾し、背中が丸くなった姿勢をしています。
関節を安定させ、関節症の進行を予防するには、骨盤を前傾させる筋肉である腸腰筋をトレーニングすることが有効です。
左図:骨盤が後傾した姿勢(股関節の安定性が低下)
右図:骨盤が前傾した姿勢(股関節の安定性が増加)
バランスボールを使うことで無理なく股関節の運動を行うことができます。
骨盤の前傾・後傾を繰り返し行います。