
腰椎椎間板ヘルニアについて(原因と症状)
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腰椎椎間板ヘルニアについて(原因と症状)
腰椎椎間板ヘルニアとは
腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨のクッション役である「椎間板」が傷み、中身が後ろに飛び出して神経を刺激する状態のことです。
背骨の骨と骨の間には、衝撃を和らげるクッションがあります。これが椎間板です。
この椎間板に前かがみ姿勢や重い物を持つ動作などの強い負担が繰り返しかかると、中の柔らかい部分が外に押し出されてしまいます。これが椎間板ヘルニアです。

どんな人に多い?
① 椎間板の変性(加齢・体質)
- 椎間板は年齢とともに水分量が減少し、弾力性が低下する。
- 特に30~40歳代に発症が多い。
- 椎間板が変性するとクッション性が低下し、髄核が移動しやすくなる→ 線維輪が損傷する。
※椎間板変性そのものは加齢で多くの人に起こりますが、変性+負荷が重なることでヘルニア発症につながります。
② 遺伝的要因
- 椎間板変性の原因の約70%は遺伝的要因とされている。
- 家族に椎間板障害や腰椎椎間板ヘルニアの既往がある場合、発症リスクが高い可能性がある。
③ 炎症を起こしやすい体内環境
- 椎間板が損傷・変性すると、炎症性サイトカイン(TNFなど)が分泌される。
- これにより微小炎症や痛みを伝える神経や血管の新生が起こり、痛みが生じやすくなる。
④ 体幹・股関節の機能低下
- 体幹や股関節の可動性・筋力が低下すると腰椎の動きが過剰になる。
- 特定の椎間板に負担が集中する。
- 特に股関節の屈曲制限、ハムストリングスの柔軟性低下は、腰椎前屈を増やし、椎間板内圧を高める要因になる。
⑤ 不良な姿勢・動作の癖
無意識のうちに腰を丸めたまま動く癖や、股関節を十分に使わず腰を中心に動く動作が定着していると、本来は全身で分散されるはずの負担が腰椎に集中してしまいます。その結果、特定の椎間板に繰り返し強いストレスが加わり、障害を起こしやすくなります。
また、痛みを避けようとする中で生じた代償動作や、知らず知らずのうちに身についた誤った動作パターン(運動学習)が残っていると、痛みが軽減した後も腰椎への負担が続き、椎間板ヘルニアの発症や再発の内的リスクになると考えられます。
⑥ 性別・年齢
- 青壮年(16~50歳)の男性に多い。
- 50歳以降では椎間板の水分が減少、髄核の移動性が低下するため、新たなヘルニア発症は減少するとされている。
椎間板の構造
椎間板は、背骨の骨(椎体)と椎体のあいだにあるクッションで、体にかかる衝撃をやわらげる役割があります。主に3つの部分でできています。
① 髄核
- 椎間板の中心にあるゼリー状の部分
- 水分をたっぷり含み、押される力を分散する
- 正常では70~90%が水分で、弾力がある
② 線維輪
- 髄核の外側を取り囲む硬めの組織
- ゴムバンドのように、中の髄核が飛び出さないように支える
- 繰り返しの負荷や加齢で傷つきやすい部分
③ 軟骨終板
- 椎間板の上下で骨と接している薄い層
- 椎間板自体には血管がないため、栄養を届ける通り道として重要
- 厚さは約0.6mmと非常に薄い
椎間板の中(髄核)には神経がないため、正常な状態では痛みを感じません。しかし、線維輪が傷ついたり炎症が起こると、痛みの原因になります。

症状
腰痛
- 椎間板の損傷や炎症による痛み
- 前かがみ姿勢、長時間の座位、重い物を持つ動作で増強しやすい
- 神経症状が改善した後も、椎間板性腰痛として残ることがある

椎間板由来の腰痛
椎間板は本来、内部には痛みを感じる神経がほとんどありません。
しかし、椎間板が変性し、さらに線維輪が損傷すると、椎間板内に新生血管、新生神経が入り込むようになります。
この状態で椎間板に負荷がかかると、炎症性サイトカイン(TNF など)が分泌され椎間板内部や周囲で炎症が起こり腰の中心付近にズーンとした痛み(腰痛)が生じます。
この痛みは前かがみ、長時間の座位、重い物を持つ動作など、椎間板内圧が高まる動作で強くなるのが特徴です。

下肢痛(脚の痛み)
- ヘルニアによる神経根の刺激・圧迫によって生じる
- 殿部から大腿、下腿、足部へ放散することがある
- 痛みの主体が腰ではなく脚に出るのが特徴

下肢のしびれ
- 神経根症状の一つとして出現
- 痛みと同じ神経支配領域に沿って現れる

筋力低下
- 神経根の障害が強い場合に出現
- 進行性の場合は手術適応の判断材料となる

ヘルニア突出部位と障害される神経根の関係
背骨の中央には、トンネル状の空間(脊柱管)があり、その中に硬膜という膜に包まれた神経が通っています。背骨と背骨の間には、小さな穴(椎間孔)があり、そこから神経の枝=神経根が左右1本ずつ外に出ていきます。

腰椎には、5対の神経根があります。腰椎椎間板ヘルニアの多くは、椎間板が後ろに飛び出す状態(傍正中型)です。その後ろを通っているのは、1つ下の高さの神経のため、ヘルニアでは1つ下の神経が圧迫されます。例えば第4腰椎と第5腰椎の椎間板にヘルニアが起こった場合は第5腰神経が圧迫されます。

しかし、約10%は脊柱管の外、椎間孔の中から外側に向かって飛び出すタイプ(外側型ヘルニア)です。椎間板が外側に飛び出すため、ひとつ上の神経が圧迫されます。この場合、第4・5腰椎間のヘルニアでも第4腰神経根が障害されます。

腰椎・下肢の運動制限
- 疼痛や筋緊張亢進により可動域が制限される
- 前屈動作で制限が強く出やすい

姿勢や動作による症状の増悪
- 長時間の座位
- 前かがみ姿勢
- 重量物の持ち上げ
- 場合によっては腰椎後屈位でも症状が出現することがある

SLRテスト陽性
- 下肢挙上で下肢痛や可動域制限が出現
- 神経根が伸張されることで症状が誘発される

深部腱反射の減弱・消失
神経根が圧迫されることで神経伝達が障害され、深部腱反射の減弱や消失が起こることがあります。L4神経根が障害されると膝蓋腱反射が低下し、S1神経根が障害されるとアキレス腱反射が低下または消失します。一方、L5神経根には明確に対応する深部腱反射がないため、反射の変化は目立たないことが多いのが特徴です。

逃避性側弯
- 痛みを避けるため無意識に体が傾く
- ヘルニアの位置により側屈方向が異なる

重症例では膀胱・直腸障害
- 脊柱管内に巨大ヘルニアがある場合
- 緊急手術が必要となる重要な症状

間違えやすい疾患
- 腰部脊柱管狭窄症:歩行で下肢症状が出現し、休むと軽減(間欠性跛行)。高齢者に多い。
- 神経根炎(非ヘルニア性):明らかな椎間板脱出がなくても、炎症により下肢痛を生じる。
- 椎間関節症:伸展や回旋で腰痛が増悪。下肢への放散痛は比較的軽い。
- 腰椎分離症・すべり症:若年者やスポーツ選手に多く、伸展時痛が特徴。
- 筋筋膜性腰痛:姿勢不良や筋緊張が原因。しびれや筋力低下を伴わない。
- 梨状筋症候群:坐骨神経痛様症状があるが、腰椎由来ではない。
- 股関節疾患(変形性股関節症など):動作時痛の主座が股関節。可動域制限が明確。
- 仙腸関節障害:片側性の殿部痛が主体で、下肢痛は膝より近位が多い。
- 脊椎感染症・腫瘍:安静時痛や夜間痛、発熱、全身症状を伴うことがある。
- 内科的疾患(尿路結石・血管疾患など):腰痛様症状を呈することがあり注意が必要。
原因
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板に強い負担が繰り返しかかることで起こる障害です。原因は大きく分けて、「椎間板そのものの変化」+「負担のかかり方」の組み合わせと考えられています。
① 椎間板への過度な負荷
椎間板は姿勢や動作によって、内部の圧力が大きく変わります。特に次のような状況で負担が増えます。これらの姿勢・動作では、髄核が後ろに押し出されやすくなります。
- 前かがみ姿勢(腰椎前屈)
- 長時間の座位
- 中腰での作業
- 重い物を持ち上げる動作
- スポーツでの繰り返し動作

② 髄核の後方移動と線維輪の損傷
前かがみ姿勢や負荷が続くと、
- 髄核が椎間板の後方へ移動
- それを包む線維輪が傷つく
この状態でさらに強い力が加わると、線維輪を突き破って髄核が外に出ます。これが椎間板ヘルニアです。

③ 椎間板の変性
椎間板は加齢や体質の影響で、徐々に水分量が減少し、弾力が低下します。
- 椎間板が硬く・もろくなる
- クッション機能が低下する
- 同じ動作でも傷つきやすくなる
その結果、日常動作やスポーツ動作が発症の引き金になります。

④ 繰り返しの動作・不良姿勢
一度の大きな外力だけでなく、
- 前かがみ姿勢のクセ
- 不良姿勢での作業やトレーニング
- 体幹・股関節の使い方の偏り
といった慢性的な負担の積み重ねも重要な原因です。

椎間板ヘルニアのリスク因子
腰椎椎間板ヘルニアは、1つの原因だけで起こるものではなく、日常生活や仕事、運動などの環境要因が複雑に関与して発症すると考えられています。
① 喫煙
- 喫煙は、椎間板の変性を進める要因とされています。
- 喫煙により血流が低下し、椎間板への栄養供給が悪くなることで、組織が弱くなると考えられています。
- 複数の研究から、椎間板ヘルニアのリスク因子であると結論づけられています。
② 労働
特に以下のような仕事はリスクが高いと報告されています。
- 重い物を持つ作業が多い仕事
- 前かがみ姿勢や中腰姿勢が多い作業
- 長時間の運転(車・トラックなど)
③ スポーツ活動
スポーツと腰椎椎間板ヘルニアの関係については、一概に「良い」「悪い」とは言えないとされています。
- スポーツがヘルニアを誘発するとも、予防するとも断定されていない
- 競技レベルが高く、練習量が多い場合、軸圧・回旋・屈曲動作が繰り返される競技では、椎間板への力学的負荷が大きくなり、椎間板変性が進行しやすい可能性があるとされています。

分類
脱出程度による分類(Macnab 分類)
① 膨隆・突出型(bulging/protrusion)
- 線維輪は破れていない
- 髄核は線維輪の内側にとどまっている
- 椎間板全体、または一部が後方へふくらんでいる状態
特徴
- 比較的軽症
- 腰痛が主体となることが多い
- 保存療法で改善しやすい

② 靱帯下脱出型(subligamentous extrusion)
- 髄核が線維輪を破って後方へ脱出
- ただし後縦靭帯の下にはとどまっている
特徴
- 神経根症状(下肢痛・しびれ)を起こしやすい
- 保存療法が第一選択
- 自然吸収が期待できることも多い
③ 経靱帯脱出型(transligamentous extrusion)
- 髄核が後縦靭帯を越えて脱出
- 硬膜外腔に露出している状態
特徴
- 炎症反応が強く、痛みが強く出やすい
- 神経症状が明確
- 自然吸収されやすい一方、急性期症状は強い

④ 遊離脱出型(sequestration)
- 脱出したヘルニア塊が元の髄核と連続性を失っている
- 硬膜外腔にヘルニアが遊離して存在する
特徴
- 症状が強く出ることがある
- 馬尾症候群を起こすリスクもある
- 自然吸収されやすいタイプとされる

突出部位による分類
① 正中型
- 椎間板の真後ろに突出するタイプ
- 脊柱管の中央に向かって飛び出す
主な症状
- 腰痛が中心で、左右差が少ないのが特徴
- 両脚に症状が出ることもある
- 大きい場合は馬尾神経を刺激し、両脚のしびれや違和感が出ることがある
- 硬膜外腔にヘルニアが遊離して存在する

② 傍正中型
- 正中から少し左右どちらかにずれた位置に突出
- 実臨床で最もよくみられるタイプ
- SLRテストが陽性になりやすい
主な症状
- 片側の殿部〜下肢痛・しびれ
- 神経根症状がはっきり出やすい

③ 外側型(椎間孔内)
- 神経が通るトンネル(椎間孔)の中に突出
- 神経根を直接圧迫しやすい
主な症状
- 強い下肢痛
- 動き始めや姿勢変化で痛みが出やすい
- 腰痛は軽いことも多い

④ 外側型(椎間孔外)
- 椎間孔の外側で突出するタイプ
- 画像で見逃されやすい
主な症状
- 一側の殿部〜大腿の痛み
- しびれが強く出ることも
- 腰痛は目立たないこともある

治療法
① 保存療法
- 安静(特に痛みが強い時期)
- 神経系モビライゼーション(ニューロダイナミクス)
- 薬物療法(整形外科による治療)
- 神経根ブロック(整形外科による治療)
- コルセットの使用
- リハビリテーション
- 腰に負担をかけない姿勢や動作の指導
- 体幹・股関節の柔軟性や筋力の維持・改善
多くの腰椎椎間板ヘルニアは、手術をしなくても改善します。
これは、痛みの原因が神経の圧迫そのものだけでなく、炎症による影響が大きいためです。
ヘルニアは自然に治るの?
腰椎椎間板ヘルニアは、時間がたつと自然に小さくなったり、消えてしまうことがあります。これを「自然退縮」といいます。
ヘルニアが起こると、飛び出した椎間板の組織のまわりで炎症が起こります。この炎症は痛みの原因になりますが、同時に、体の中の免疫細胞が集まってきて、飛び出した組織を少しずつ分解・吸収する働きも持っています。その結果、ヘルニアが小さくなり、症状が軽くなっていくことがあります。
すべてのヘルニアが自然に治るわけではありませんが、全体の約3分の2(およそ66%)では自然退縮が起こると報告されています。特に、椎間板が大きく飛び出しているタイプ(経靱帯脱出型)や、元の椎間板から離れてしまっているタイプ(遊離脱出型)は、自然に小さくなりやすいことが分かっています。逆に、少しだけ膨らんでいるタイプ(膨隆型)では、自然退縮が起こりにくい傾向があります。

② 手術療法(整形外科による治療)
次のような場合には、手術が検討されます。近年は、体への負担が少ない手術が主流となっています。
- 保存療法を行っても痛みやしびれが強く残る
- 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す
- 脚の筋力低下が進行している
- 排尿・排便の異常が出ている(緊急手術が必要)
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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、マイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了