足首を捻っての痛み 足関節捻挫とは

足関節捻挫そっかんせつねんざとは、足首を捻って靱帯じんたいけんなどを損傷したものをいいます。
明らかに骨折や脱臼だっきゅうがあるものは含みません。
足関節捻挫のほとんどは足首を内側にひねって生じます。
スポーツによる急性外傷としては最も頻度が高く、かつ重症度の高い障害です。

足関節捻挫靭帯損傷
足関節捻挫 靭帯損傷

足関節捻挫の症状

  • 外くるぶしの周辺に痛みがあり、腫れる、熱感がある
  • 外くるぶしの周辺を押さえると痛い
足首のねんざ後のはれについて
足首のねんざ後のはれ

足首の靭帯

足首の外側を補強している靱帯は、

  • 前距腓靱帯ぜんきょひじんたい
  • 踵腓靱帯しょうひじんたい
  • 後距腓靱帯こうきょひじんたい

の3つの靱帯で構成されます。
最も損傷されやすいのは前距腓靱帯です。

前距腓靭帯とは
前距腓靭帯とは

前距腓靭帯

踵腓靭帯とは
踵腓靭帯とは


踵腓靭帯

後距腓靭帯とは
後距腓靭帯とは

後距腓靭帯

足首の靱帯損傷の分類

  • :前距腓靱帯あるいは踵腓靱帯の微細損傷・部分断裂びさいそんしょう・ぶぶんだんれつ
  • :前距腓靱帯あるいは踵腓靱帯の完全断裂かんぜんだんれつ
  • :前距腓靱帯および踵腓靱帯の完全断裂

足首の捻挫の急性期の治療

けがをしてすぐはPOLICE処置が重要です。
以前はRICE(ライス)と呼ばれていましたが、近年POLICE(ポリス)が適切といわれるようになりました。

  • Protection(保護)
  • Optimal Loading(適切な負荷)
  • Ice(冷却)
  • Compression(圧迫)
  • Elevation(挙上)

の頭文字から成り立ちます。
従来のRICEでは、Rが「安静」を意味していましたが、Pの「保護」、OLの「適切な負荷」に替わっています。
ただ安静にするのでは逆に血流が妨げられ、治癒を遅延させることから、保護した状態で適切な負荷の運動を行うことが適切とされています。

早期から徹底した腫れの管理を

急性期に腫れが残ってしまうと関節が固まり動きが悪くなってしまいます。
骨の形に合わせた圧迫用のパッドを作り、腫れがたまりやすい部分の隙間を埋め、そのうえで弾力のある包帯で圧迫します。
その状態で痛みのない範囲で足首を動かして筋肉のポンプを働かせます。

足首のねんざ後の腫れの改善法

足首の捻挫に対するテーピング

足関節捻挫に下脛腓関節かけいひかんせつ亜脱臼あだっきゅうを伴うことがあります。
脱臼というのは、骨と骨の位置関係がおかしくなってしまうことです。
この位置関係の異常を整えるようにテーピングします。

足首のネンザテーピング
下脛腓関節の亜脱臼に対するテーピング

(図;理論と実践! 治療的テーピングより引用)

二分靱帯損傷

同じような受傷の仕方で、別の場所が損傷していることがあります。
その中でも多いのは、二分靭帯損傷にぶんじんたいそんしょうです。
痛みが長引き、捻挫した場所とは違うところが痛みます。
二分靱帯に引っ張られて裂離骨折れつりこっせつを起こしていることもあります。

二分靭帯とは
二分靭帯とは

子どもの足首の骨折に注意

子供の骨はまだ完全には出来上がっておらずやわらかいため、靱帯の損傷よりも先に、やわらかい成長線せいちょうせんの部分での損傷や靱帯が骨にくっつく部分で裂離骨折れつりこっせつを伴う場合がありますので注意が必要です。

足首のネンザレントゲン
腓骨の骨端線損傷のレントゲン

足首の捻挫に対するインソール療法

ネンザを繰り返す人の多くは足に問題を抱えています。
その一つに「浮き趾」があります。
浮き趾とは立ったり歩いたりするときに足の指が地面につかない状態をいいます。
浮き指だと足裏の接地面が狭まり、体が安定しにくくなります。
指で踏ん張れず、転倒にもつながりやすくネンザを繰り返してしまいます。
いちばん大きな原因は「足に合わない靴えらび」と「間違った靴の履き方」にあります。
足に合った良い靴を履きインソールを継続的に使用し、徹底的に足と靴の環境を良くしていくと、
足の使い方が変化し、歩行バランスの崩れが改善されます。

オーダーメイドインソール作製
詳細
足首のネンザインソール
当院のインソールと従来のインソールとの違い

足関節捻挫のリハビリテーション

姿勢制御に必要な3つの感覚

これらの感覚が中枢神経系で統合されて姿勢が調整されています。競技種目や競技レベルによって、どの感覚に依存するかは異なります。

  • 体性感覚・固有受容感覚:自己と周辺空間との関係性の情報
  • 視覚:周辺空間の情報
  • 前庭覚:頭部に加わる加速度、重力に関する情報

足関節靭帯損傷では、体性感覚・固有受容感覚が低下し、視覚への依存が強まります。慢性足関節不安定症(CAI)では、視覚からの情報へ依存しすぎてしまいます。バランスパッドなどの不安定な支持面を用いたバランストレーニングでは、視覚からの情報に頼りすぎたトレーニングになってしまいます。

このような一つの情報に偏った状態では、情報を処理し統合して中枢へ伝達することができません。

視覚依存の強い状態でのトレーニングは視覚入力への依存増加、体性感覚・固有受容感覚機能の低下という悪循環を招きます。視覚依存からの脱却がまず必要となります。

足底感覚エクササイズ

靭帯は感覚器としての機能も有するため、CAI症例などでは感覚器としての機能も低下している可能性があります。さらに性感覚・視覚・前庭覚からの情報のバランスも崩れている可能性もあります。

CAI症例では、足底の皮膚機械受容器の感度が低下しています。そのためリハビリテーションにおいて足底の感覚の復元が求められます。

多様な支持面を経験することで足底への感覚を入力する

  1. 支持面の違いを感知する:硬い支持面、柔らかい支持面、凸凹な支持面
  2. コンタクトポイントへのコンタクト:踵、内側縦アーチ、第5中足骨基部への圧感覚入力
  3. 足趾の使用:圧感覚を優先する

センソリー・フット・エクササイズ

足底でさまざまな材質の支持面を感じるエクササイズです。裸足でザラザラした床や柔らかいパッドなどさまざまな支持面で機械刺激や圧刺激を足底に入力していきます。

  • 足底で床を左右に擦る
  • 柔らかいサーフェスから硬いサーフェスなど交互に感じる
  • 前足部のみ違う素材、踵部分のみ違う素材など色々な素材を感じる

フットコンタクト・エクササイズ

裸足で足底で地面を感じるエクササイズです。踵、母趾球、小趾球を感じられない場合は、上から手で圧をかけたり、感じられない部位の下にコインを敷いたりしてコンタクトポイントを強調します。

ショートフット・エクササイズ

裸足になって座位になります。母趾球と踵を近づけるように(土踏まずを持ち上げるように)、足底の筋肉を収縮させます。この状態を30秒キープして3〜5セットおこないます。あくまで母趾球と踵を近づけるのであって、足趾で床を噛まないように注意しましょう。

ショートフット・ローディング・エクササイズ

ショートフット・エクササイズの状態をキープした状態で立ち上がります。アーチが保たれているかどうかは気にしなくて大丈夫です。立ち座りの際に筋肉が収縮している感覚が維持できていることが重要です。

閉眼エクササイズ

視覚からの情報に依存している状態からの脱却を目的として行います。足底感覚エクササイズの後に行います。

フットコンタクト to ゲットアップ

座位でセラピストが足部に圧刺激を与えて、しっかりと地面の感覚を感じます。足底の感覚が残っている状態で、目をつむって立ち上がります。目を開けて座ります。

フットコンタクト to シングルレッグバランス

両足で立った状態で片手でスティックをつきます。セラピストが足部に圧刺激を与えて、しっかりと地面の感覚を感じます。足底の感覚が残っている状態で、片足立ちになります。30秒キープします。会話や暗算をしながら行うのも良いでしょう。