レッドフラッグとは
ほとんどの急性腰痛症(ぎっくり腰)は自然に軽快します。
しかし、早急に病院を受診しなくてはならない目安として腰痛診療のレッドフラッグというものに以下の項目があります。
- 年齢 20歳以下または55歳以上
- 最近大きな怪我をした
- 安静にしていても強くなる痛み
- 胸部痛
- 癌,白血病など悪性腫瘍の既応
- ステロイドを長期間使用した(喘息・膠原病等)
- 薬物乱用,免疫抑制剤,HIV
- 全身体調不良
- 原因不明の体重減少
- 神経症状(排尿,排便困難,坐骨神経痛,下肢しびれ等)
- 背骨が曲がっている
- 発熱
日本整形外科学会、日本腰痛学会監修:腰痛診療ガイドライン2012 南江堂、2012年
注意すべき腰痛
- 感染・炎症によるもの
- 外傷によるもの
- 腫瘍によるもの
- 内臓疾患によるもの
- 血管疾患によるもの
- 婦人科系疾患によるもの
これらの疾患の疑いがある場合は、早急に専門医の診察を受けることをおすすめします。
化膿性脊椎炎・椎間板炎
細菌が血行を介して背骨を化膿させる病気です。
40~50代の中年の方に多いとされていますが、糖尿病、悪性腫瘍、肝機能障害などの免疫機能が低下し、感染しやすい状態の高齢者の発症も増加しています。
腰の骨に発症することが多いとされています。
急性の場合には、腰から背中にかけての激痛、高熱を伴いますが、慢性の場合には痛みは比較的軽く、発熱はしたとしても微熱程度です。病気のある部位の脊椎を叩いたり、押したりすると痛みを生じます。
転移性脊椎腫瘍
癌細胞が背骨に転移し骨を破壊します。
破壊され弱くなった背骨が負荷を支えられなくなると骨折します。
背中の痛みや腰痛を生じ、脊髄を圧迫している場合は麻痺が生じます。
圧迫骨折
閉経後、女性ホルモンの減少とともに骨粗しょう症が進行します。
尻もちをついた、重い物を持ち上げた時などちょっとしたきっかけで背骨を骨折してしまうことがあります。
第11~12胸椎と第1腰椎の胸椎から腰椎への移行部に多発します。
寝返りをうつ時や、起き上がる時、体を動かしたときなどに痛みが出ることが特徴です。
中にはほとんど痛みが出ずに徐々に骨が潰れてしまう方もいます。
急性大動脈解離
大動脈という血管の壁に亀裂が入り、壁が分離されてしまう病気を大動脈解離といいます。
突然の発症が多く、急性大動脈解離と呼ばれます。
高血圧の人に起こりやすいといわれています。
血管の壁には神経があるため、血管が裂ける時に胸や背中の激痛が出現します。
まれに痛みが軽いこともあります。
腹部大動脈瘤破裂
腹部の大動脈がこぶ状に膨らんだものです。
発症年齢は50~70歳がピークで、男性に多く発症します。
おなかに拍動性腫瘤を触れることが典型的な症状です。
腹部大動脈瘤が破裂した場合は、出血が腰の部分に広がるため激烈な腹痛や腰痛が出てきます。
尿路結石
腎臓で老廃物がうまく排出できず、腎臓内で石を作ってしまうことがあります。
- 腎臓内でできた石は腎結石
- 尿管へ移動したものが尿管結石
- さらに膀胱へ移動したものを膀胱結石
- 尿道へ移動したものは尿道結石
と言います。
これらすべてを合わせて尿路結石といいます。腎臓には痛みを感じる神経がないため、石が腎臓にある間は、痛みはほとんどなく鈍い痛み程度でおさまります。それが尿管結石になると激しい痛みを伴います。安静にしていても痛みが治まることはありません。男性の発症率が高く、女性の2~3倍です。年齢別では、30~50歳代に多く見られます。
急性膵炎
急性膵炎の症状は、みぞおち付近が急激に痛み始め、やがて背中や腰の方にも痛みが広がっていきます。
膝を曲げたうつ伏せの姿勢で、症状がやや軽快するのが特徴です。痛み以外では発熱や嘔吐、食欲不振などが発生します。
腎盂腎炎
腎盂腎炎ははじめに寒気やふるえがあり、38℃を超える高熱を発します。胸のむかつきや嘔吐、全身の倦怠感が出てきて、腰や背中、わき腹に痛みを感じます。尿の回数が増え、残尿感や排尿時の痛みなど膀胱炎の症状も出てきます。
胆嚢炎
みぞおちから右脇腹の痛みが特徴です。
痛みは右肩や右背部、胸から腰に出現することもあります。
嘔吐や吐き気、高熱、寒気などの症状が出ることもあります。
子宮内膜症
本来とは違った部位に子宮内膜が形成される疾患です。痛みとしては、月経痛、下腹部痛、腰痛などがあります。