梨状筋症候群りじょうきんしょうこうぐんとは

梨状筋りじょうきんとはお尻にある筋肉の一つです。その筋肉の真下を坐骨神経ざこつしんけいが通ります。
坐骨神経は、腰や仙骨せんこつから始まり足までいたる長い神経です。
何らかの原因で梨状筋が硬くなるとその下の坐骨神経は絞めつけられてしまい、坐骨神経に沿った痛みを引き起こします。

坐骨神経と梨状筋の位置関係
梨状筋と坐骨神経の位置関係

梨状筋症候群の症状

  • お尻や太もも後面の鋭い痛み
  • お尻や太もも後面のしびれ
  • ふくらはぎや足先にまで痛みやしびれが出現することもある
  • 前かがみになると、足がしびれる
  • 長時間座っていると痛みやしびれが悪化する
  • 横向きに寝ると症状が悪化する

梨状筋症候群の原因

梨状筋が硬くなってお尻から太もも後面、足に痛み・しびれを引き起こすメカニズムは大きく分けて3つあります。

  1. 梨状筋の過緊張による神経・血管の圧迫
  2. 梨状筋にあるトリガーポイントの活性による筋膜性関連痛きんまくせいかんれんつう
  3. 梨状筋の過緊張かきんちょうによる引き起こされる仙腸関節せんちょうかんせつ機能障害きのうしょうがい

梨状筋が硬くなる理由

梨状筋が硬くなる原因はたくさんあります。

  1. 打撲などで直接お尻をぶつける
  2. 長時間座っている
  3. 長時間立っている
  4. スポーツなどで過剰な負荷がお尻にかかる

梨状筋症候群の検査

梨状筋をあえて緊張させることで痛みの有無を検査します。これらのテストをしてお尻~足に痛みが出る場合には、梨状筋症候群が疑われます。

梨状筋症候群検査画像
梨状筋症候群の検査

梨状筋症候群の治療法

  1. 患部の安静
  2. 超音波療法
  3. ストレッチ
  4. 徒手療法
  5. 運動療法
  6. 筋膜治療

梨状筋の過緊張に対する治療

まず始めに、硬くなった梨状筋の緊張をとる必要があります。
筋肉の緊張を取り除くには、反復収縮はんぷくしゅうしゅくというテクニックを用います。
筋肉は正しく収縮した後は必ずリラックスして緩むという性質を利用したものです。
梨状筋の緊張がとれたら、次に坐骨神経が梨状筋の下をきれいに動けるように滑走性かっそうせいを高める治療をしていきます。

梨状筋症候群治療



(図;関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーションより引用)

トリガーポイントとは

腰やお尻などの筋肉は、疲労や血行不良などが続くと強く緊張して硬いこわばりができます。
このこわばりの中に、とくに硬く、押さえると飛び上がるほどの痛みを発するポイントができます。
これが『トリガーポイント』です。『トリガーポイント』は、その周囲だけでなくそこから遠い部分にも痛み、しびれ、重だるさを発生させる特徴を持ちます。これを「筋膜性関連痛」といいます。

梨状筋トリガーポイント
梨状筋のトリガーポイント

梨状筋症候群に対する筋膜リリース

梨状筋症候群では、梨状筋と坐骨神経の間でのすべりが悪くなってしまうことが問題となることがあります。
梨状筋が硬くなり他の組織と癒着してしまいます。これまでの治療法(消炎鎮痛剤・従来の電気治療)では、このような癒着による痛みには効果が低いことがわかってきました。
海外の治療法として、IASTM(Instrument-Assisted Soft-Tissue Mobilization)が主流になってきました。
IASTMは癒着障害を治療できる全く新しい治療ツールです。

iastm

梨状筋症候群に対する超音波療法

梨状筋は深層筋であるため深部を刺激する超音波治療が適しています。高速度ミクロマッサージで、患部に刺激を与えます。患部の柔軟性を改善、血流の改善による痛みの緩和、筋肉の緊張軽減などに効果的です。

超音波治療
超音波治療

お尻の衰えが引き金に

お尻のもっとも表層にあるのが「大殿筋」という筋肉です。梨状筋は大殿筋のさらに深層にあります。
大殿筋の役割は、足を後ろに振り上げることです。現代の生活において、デスクワークが極端に増えてしまい、大殿筋を使うことが少なくなりました。
大殿筋は徐々に機能しなくなり、機能不全に陥ります。そうする大殿筋の担ってきた仕事は、さらに深層にある梨状筋が肩代わりしなければなりません。
このようなメカニズムで梨状筋は硬くなり、その下を通る坐骨神経を絞めつけてしまいます。

大殿筋と梨状筋の関係
梨状筋は大殿筋の深層に位置します