巻き爪の割合
巻き爪の罹患率は、人口の約10%と推定されています。日本人のおよそ10人に1人は巻き爪または巻き爪予備軍です。
当院に巻き爪のご相談で訪れる患者さまの割合を見ていくと、男女比はおよそ2:8で、約8割が女性です。圧倒的に女性に多い疾患といえます。
また、年齢別に見ていくと、最も多いのが40〜59歳です。しかし約12%が19歳以下です。
つまり巻き爪患者さまのおよそ8人に1人は、「子供の巻き爪」です。巻き爪以外にも深爪や割れ爪なども含みます。
加齢とともに増えるといわれる巻き爪ですが、実は8人に1人は「子供の巻き爪」なのです。
子供の巻き爪の原因
子供が巻き爪になる原因は、
- 柔らかすぎる爪の巻き爪
- 割れ爪
- 間違った爪切りによる深爪
- 爪むしり
- 不適切な靴による巻き爪
などが挙げられます。
柔らかすぎる巻き爪
爪の構成成分のうち10〜15%は水分で、年齢を重ねると厚く硬くなっていきます。
子供の爪は水分に富み、また大人の爪と比べて薄いため、非常に柔軟性があります。
柔軟性がありすぎるので、靴による圧迫やちょっとした外力により簡単に巻き爪になる傾向があります。
割れ爪
サッカーやバレエなどの爪先に外力が加わるスポーツやスパイクなどの尖ったシューズを履くことで爪が割れたりして痛みを起こします。
もともと子供の爪は薄いため外力に弱く割れやすいため傷みやすいといえます。
割れ爪を放っておくと、割れた爪の端が刺激となり皮膚を傷つけ出血したり化膿したりと悪化していきます。
また、割れ爪や爪が剥がれた後に巻き爪に移行するケースもあります。
深爪
小学校中学年くらいになると爪切りを自分でするようになります。でも、小学校で正しい爪の切り方を習うことはありません。親御さんが正しい爪の切り方を知らないと、お子さんは間違ったまま爪切りを続けてしまいます。
問題になるのは、深爪となって角にトゲを残してしまうケースです。化膿や肉芽形成など悪化するのは、ほとんどがこのケースです。
とくにお子さんが自分で爪切りを始めた方は、深爪していないか一度確認してみてください。
爪むしり
心理的な要因により爪をむしったり噛んだりするものです。癖によるものもありますが、心理的ストレスが関与しているといわれます。
極端に爪が短くなるため、皮膚炎から痛みを起こすこともあります。
靴による巻き爪
すぐに小さくなるからと大きめサイズの靴を選んでいませんか?
大きめサイズを履いている子供は、親御さんが思っている以上に靴の中でバランスを崩しています。バランスを崩すと足趾が浮いてしまったり(いわゆる浮き趾)、前滑りして足趾が曲がってしまったりします。そうなると足趾にしっかり体重がかからないと巻き爪のリスクが生じます。
また、二次成長期における足の長さの伸びは、身長の急激な伸びよりも1年ほど早く始まります。女子では10歳頃、男子で12歳頃には、足の長さの伸びのピークが始まっており、女子が12~13歳頃まで、男子が14~15歳頃まで続くとされています。
そのため、二次成長が始まる1年ほど前には足の長さの伸びが始まっていることになり、靴が小さくなっていないか、サイズが適切かどうかこまめにチェックする必要があります。
子供の足は柔らかいため、小さな靴を履いていても痛みがなく気づかないこともあります。いつの間にか、足趾が曲がった状態で固まってしまうこともあります。
痛みが出た頃には進行している
子供は活発なため多少痛くても我慢して歩いてしまいます。また部活動などハードな運動をしている子は、母趾の先が赤くなっているくらいでは簡単に休めません。
そのため痛みが出始めた頃には、かなり症状が進行していることがほとんどです。化膿や出血、肉芽組織の形成が起こってから初めて気づくことも多いのが現状です。
悪化してから対処するのではなく、未然に防ぐ、または早期に発見することが大切です。
子供の巻き爪の対処法
巻き爪の対処法
大人の爪よりも子供の爪は薄いため、器具も特殊な薄いものを使用して矯正します。大人とは異なり比較的軽症例が多いため、ほとんどが数回の矯正で完了します。
巻き爪専門外来
当院では巻き爪矯正専門外来を行なっております。
特殊樹脂でできたプレートを使い、痛みを感じずことなく巻き爪を改善できます。
巻き爪にお悩みの方はLINEでご相談ください。
割れ爪の対処法
割れ爪部分に特殊な器具を装着して、爪を補強します。子供の爪は柔らかいため器具で補強しておかないと、割れ爪がどんどん進行してしまいます。器具を装着したまま爪を伸ばしていきます。傷んだ箇所が伸び切れば補正完了です。
深爪の対処法
深爪は放っておくと、皮膚に食い込んで爪が自力で伸びれなくなります。深爪補正用の器具によって食い込まないようにしていきます。
深爪を繰り返し爪が小さくなってしまった症例にも有効な方法です。
正しい爪切り
深爪や巻き爪を予防するには、正しい爪切りの方法を身につけなければいけません。爪の先端はまっすぐに切り、両端はやすりで軽く擦る程度にしましょう。深く切り過ぎず、爪の角を残します(スクエアカット)。
適切な靴選び
足と靴は一体であり、セットで考えるべきです。合わない靴は万病のもととなります。
足の形、長さ、厚み、幅、太さなどは人それぞれ違います。全く同じ形をした足は他に存在しません。
靴の販売店には売れ筋商品が多く並んでいます。売れ筋から外れた形の足の持ち主は、そもそも合う靴が存在しないのです。その場合はインソールなどを活用して靴の中の環境を改善しましょう。
こちらの写真はモートンフットと呼ばれるちょっと変わった足の持ち主です。モートンフットとは、母趾の中足骨(足の親ゆびの骨)がその隣の第2中足骨よりも短いものをいいます。
母趾に力が入りにくく、外反母趾や扁平足になりやすいと言われています。もちろん母趾に力が入りにくいので巻き爪にもなりやすいです。
こういったちょっと変わった症例では、巻き爪を矯正して終わりではなく、インソールなどを使い、足趾に均等に体重がかかるようにしてあげなければ根本的な解決にはなりません。
スパイクを履くスポーツは要注意
野球やサッカーなどスパイクを履くスポーツ選手は爪のトラブルが多く注意が必要です。
とくにピッチャーは軸足で踏ん張るため、スパイクの爪先がフィットしていないと巻き爪や爪下出血などを引き起こします。
サッカー選手も直接爪先に衝撃が加わるためスパイクの爪先形状は大切です。爪先にゆとりがなかったり、反対に大きすぎて前滑りしている場合は爪に加わるダメージも大きくなります。
爪と栄養バランス
爪が薄い場合はタンパク質不足かも
爪は血液の健康状態の影響を受けやすいとされ、昔から「爪は栄養状態の指標である」と言われています。
爪はハードケラチンという繊維状のタンパク質で出来ています。そのため、爪が薄い、割れやすい場合、まずタンパク質不足が疑われます。強い爪を作るためには、ケラチンの産生を高める十分なタンパク質を摂ることが必要です。
また爪の伸びが遅い場合もタンパク質不足が疑われます。髪の毛も同じくケラチンで出来ていますから、爪も髪の毛も伸びる速度が遅い場合はタンパク質をしっかり摂取してみるとよいでしょう。
爪に関わる栄養素
ビタミンAはケラチンを作る際に使われる栄養素です。タンパク質とセットで必要となります。ビタミンB群であるビオチンや亜鉛もケラチンを作る際に必要です。
この中でもとくにタンパク質とビタミンAが重要となります。そのため、爪が極度に薄く割れやすい場合や伸びが遅い場合は、タンパク質不足やビタミンA不足を疑います。爪に横線がある場合もタンパク質不足やビタミンA不足の可能性があります。
爪はケラチンの他にもコラーゲンが含まれており、コラーゲンを生成する際に必要な栄養素がビタミンCです。
葉酸とビタミンB12は遺伝子の発現に関わる栄養素で、新しい細胞を作り換える際に必要となります。
鉄は直接的に爪の生成には関わらないですが、鉄欠乏に陥ると爪の形や強さに問題を生じることがあります。割れやすい爪や柔らかすぎる爪は鉄欠乏の恐れがあります。反り返った爪(スプーンネイル)では、重度の鉄欠乏を疑います。