SLAP損傷の原因と治療法
金沢市のアルコット接骨院の疾患コラム
SLAP損傷とは肩の上方関節唇損傷のことです。転倒し手をついた場合やオーバーヘッドスポーツでの繰り返し動作などが原因として挙げられます。自然治癒が困難な疾患であるため、早期発見・早期治療が大切です。
SLAP損傷の原因と治療法
金沢市のアルコット接骨院の疾患コラム
SLAP損傷とは肩の上方関節唇損傷のことです。転倒し手をついた場合やオーバーヘッドスポーツでの繰り返し動作などが原因として挙げられます。自然治癒が困難な疾患であるため、早期発見・早期治療が大切です。
関節唇について
肩の関節は、上腕骨の丸みと肩甲骨側の受け皿とで構成されます。
しかし、受け皿の方が非常に浅く小さく、それに対して上腕骨側の丸みが大きいため不安定な状態となっています。たとえるならティーの上にゴルフボールをのせたような状態です。
この受け皿の浅さを補う役目をするのが、「関節唇」です。関節唇には、上腕二頭筋という筋肉がつながっている部分があります。
特に上方の関節唇はsuperior labrum both anterior and posteriorを略してSLAPとよばれます。
関節唇について
肩の関節は、上腕骨の丸みと肩甲骨側の受け皿とで構成されます。
しかし、受け皿の方が非常に浅く小さく、それに対して上腕骨側の丸みが大きいため不安定な状態となっています。たとえるならティーの上にゴルフボールをのせたような状態です。
この受け皿の浅さを補う役目をするのが、「関節唇」です。関節唇には、上腕二頭筋という筋肉がつながっている部分があります。
特に上方の関節唇はsuperior labrum both anterior and posteriorを略してSLAPとよばれます。
SLAP損傷とは
関節唇と上腕二頭筋がつながる部分(時計でいう10~2時の方向)が、上腕二頭筋に引っ張られて、破れたりちぎれたりしてしまう肩のスポーツ障害を「SLAP損傷」といいます。
ちなみに前下方(時計でいう4~6時)の関節唇損傷は「Bankart損傷」とよばれます。
SLAP損傷とは
関節唇と上腕二頭筋がつながる部分(時計でいう10~2時の方向)が、上腕二頭筋に引っ張られて、破れたりちぎれたりしてしまう肩のスポーツ障害を「SLAP損傷」といいます。
ちなみに前下方(時計でいう4~6時)の関節唇損傷は「Bankart損傷」とよばれます。
SLAP損傷の分類
SLAP損傷はさまざまなタイプがあります。
・Type1:関節唇および上腕二頭筋長頭腱の摩耗
・Type2:上方関節唇および上腕二頭筋長頭腱基部の剥離を伴う関節唇の摩耗
・Type3:上方関節唇のバケツ柄損傷
・Type4:上腕二頭筋長頭腱基部の剥離、上方関節唇のバケツ柄損傷
SLAP損傷の分類
SLAP損傷はさまざまなタイプがあります。
・Type1:関節唇および上腕二頭筋長頭腱の摩耗
・Type2:上方関節唇および上腕二頭筋長頭腱基部の剥離を伴う関節唇の摩耗
・Type3:上方関節唇のバケツ柄損傷
・Type4:上腕二頭筋長頭腱基部の剥離、上方関節唇のバケツ柄損傷
頭上から背中に手を回すと痛い
痛い腕で反対側の肩をつかむと痛い
投球動作で痛い
腕が抜ける感じがする
肩がひっかかる感じがする
投球時の痛み以外には、ほとんど症状がない
頭上から背中に手を回すと痛い
痛い腕で反対側の肩をつかむと痛い
投球動作で痛い
腕が抜ける感じがする
肩がひっかかる感じがする
投球時の痛み以外には、ほとんど症状がない
慢性損傷
野球などボールを投げる動作の繰り返しによって損傷します。Type2損傷が多く見られます。
ボールを投げる時に、関節唇の上方にくっついている上腕二頭筋が引っ張られたり、肩にねじれの力が加わったりする動作で負担がかかることによって関節唇に損傷や剥離をおこします。投球動作では後期コッキング期〜加速期にかけて痛みが生じます。
野球以外では、ラケット競技やバレーボールなどのサーブの動作を行うスポーツ選手などによくみられます。
日常生活では重いものを持ち上げる、持ち上げて移動するなどの動作が挙げられます。
慢性損傷
野球などボールを投げる動作の繰り返しによって損傷します。Type2損傷が多く見られます。
ボールを投げる時に、関節唇の上方にくっついている上腕二頭筋が引っ張られたり、肩にねじれの力が加わったりする動作で負担がかかることによって関節唇に損傷や剥離をおこします。投球動作では後期コッキング期〜加速期にかけて痛みが生じます。
野球以外では、ラケット競技やバレーボールなどのサーブの動作を行うスポーツ選手などによくみられます。
日常生活では重いものを持ち上げる、持ち上げて移動するなどの動作が挙げられます。
外傷性損傷
スポーツにおいてはトライスコアラーメカニズム(前方に転倒して手をついて肩の屈曲が強制される)、タックラーメカニズム(肩水平伸展強制)にて起こります。
日常生活では前方に転倒し手をつくことで起こります。
外傷性損傷
スポーツにおいてはトライスコアラーメカニズム(前方に転倒して手をついて肩の屈曲が強制される)、タックラーメカニズム(肩水平伸展強制)にて起こります。
日常生活では前方に転倒し手をつくことで起こります。
次の検査で陽性となる場合、SLAP損傷が疑われます。ただし一つの検査だけが当てはまるからといってすぐにSLAP損傷というわけではありません。
総合的にみてSLAP損傷が疑われる場合、病院でのMRI検査が推奨されます。
・speed test
・hyper external rotation test
・O’Brien test
・crank test
・relocation test
次の検査で陽性となる場合、SLAP損傷が疑われます。ただし一つの検査だけが当てはまるからといってすぐにSLAP損傷というわけではありません。
総合的にみてSLAP損傷が疑われる場合、病院でのMRI検査が推奨されます。
・speed test
・hyper external rotation test
・O’Brien test
・crank test
・relocation test
SLAP損傷では一般的にMRI検査が行われます。MRI画像では関節唇の状態だけでなく、筋・腱の損傷や炎症、関節の中の状態なども確認できます。炎症の有無を確認し、復帰時期などを推察します。
SLAP損傷では一般的にMRI検査が行われます。MRI画像では関節唇の状態だけでなく、筋・腱の損傷や炎症、関節の中の状態なども確認できます。炎症の有無を確認し、復帰時期などを推察します。
超音波エコーでもSLAP損傷を観察することは可能ですが、損傷の有無を正確に確認することは難しいとされています。
SLAP損傷(Type2)を観察すると、上腕二頭筋長頭腱がねじれて剥離した上方関節唇がめくれることをpeel back現象とよびます。
超音波エコーでもSLAP損傷を観察することは可能ですが、損傷の有無を正確に確認することは難しいとされています。
SLAP損傷(Type2)を観察すると、上腕二頭筋長頭腱がねじれて剥離した上方関節唇がめくれることをpeel back現象とよびます。
・患部の安静(投球制限)
・LIPUS
・体外衝撃波
・温熱療法
・ストレッチ
・筋力トレーニング
・投球フォームの修正
・患部の安静(投球制限)
・LIPUS
・体外衝撃波
・慢性期には温熱療法
・ストレッチ
・筋力トレーニング
・投球フォームの修正
肩の筋肉をサポートするようにキネシオテープを用いてテーピングします。腕を横から上げた際の痛みの軽減に役立ちます。
肩の筋肉をサポートするようにキネシオテープを用いてテーピングします。腕を横から上げた際の痛みの軽減に役立ちます。
もともとは骨折の治療器として開発されましたが、関節内の循環改善・炎症緩和や関節周囲の筋肉・腱・靭帯の治癒促進にも役立ちます。
深層の組織にも届くように周波数を設定して患部に向けて照射します。
もともとは骨折の治療器として開発されましたが、関節内の循環改善・炎症緩和や関節周囲の筋肉・腱・靭帯の治癒促進にも役立ちます。
深層の組織にも届くように周波数を設定して患部に向けて照射します。
肩甲骨の機能改善
SLAP損傷症例のほとんどが肩甲骨の機能異常を起こしています。肩甲骨が外に移動し前を向いている、いわゆる巻き肩姿勢になっています。
肩甲骨の機能改善
SLAP損傷症例のほとんどが肩甲骨の機能異常を起こしています。肩甲骨が外に移動し前を向いている、いわゆる巻き肩姿勢になっています。
腱板の機能改善
「腱板」というのは棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉の腱のことで、それらが共同して肩の関節を安定させています。
上方関節唇(SLAP)に付着する上腕二頭筋長頭腱は腱板の補助作用があるため、腱板の機能向上は大切です。
腱板の機能改善
不良フォームの原因は、次の3点が考えられます。
「腱板」というのは棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉の腱のことで、それらが共同して肩の関節を安定させています。
上方関節唇(SLAP)に付着する上腕二頭筋長頭腱は腱板の補助作用があるため、腱板の機能向上は大切です。
患部外トレーニング
アスリートの場合は治療期間に基礎体力が落ちてしまうと、競技復帰が遅れる恐れが出てきます。そのため肩以外は積極的に有酸素運動を早期に開始し、徐々に負荷量を増やし基礎体力の向上を図ります。
投球動作は全身運動であるため、体幹・下肢のトレーニングも行います。
患部外トレーニング
アスリートの場合は治療期間に基礎体力が落ちてしまうと、競技復帰が遅れる恐れが出てきます。そのため肩以外は積極的に有酸素運動を早期に開始し、徐々に負荷量を増やし基礎体力の向上を図ります。
投球動作は全身運動であるため、体幹・下肢のトレーニングも行います。
投球のフェーズ
投球の動作は一般的に以下の5つのフェーズに分類されます。
・ワインドアップ期:構えてから踏み込み足の膝が最も高い位置に上がるまで
・早期コッキング期:踏み込み足が接地するまで
・後期コッキング期:投球肩が最大外旋するまで
・加速期:ボールが離れるまで
・フォロースルー期:投球終了まで
コッキングというのは腕を振りかぶることを指します。SLAP損傷は後期コッキング期〜加速期に起こるといわれています。
トップポジションに入ってから肩の最大外旋位に至るまでは、肩甲骨と胸郭の柔軟性と可動性が特に重要です。
投球のフェーズ
投球の動作は一般的に以下の5つのフェーズに分類されます。
・ワインドアップ期:構えてから踏み込み足の膝が最も高い位置に上がるまで
・早期コッキング期:踏み込み足が接地するまで
・後期コッキング期:投球肩が最大外旋するまで
・加速期:ボールが離れるまで
・フォロースルー期:投球終了まで
コッキングというのは腕を振りかぶることを指します。SLAP損傷は後期コッキング期〜加速期に起こるといわれています。
トップポジションに入ってから肩の最大外旋位に至るまでは、肩甲骨と胸郭の柔軟性と可動性が特に重要です。
後期コッキング期に必要な機能
後期コッキング期には肩甲骨の後傾・内転・上方回旋という3つの動きが重要です。そのためには背中(胸椎)が反る動き(伸展)と捻る動き(回旋)が必要です。
後期コッキング期に必要な機能
後期コッキング期には肩甲骨の後傾・内転・上方回旋という3つの動きが重要です。そのためには背中(胸椎)が反る動き(伸展)と捻る動き(回旋)が必要です。
ゼロポジション
肩甲骨の骨の出っ張り(肩甲棘)と腕の骨(上腕骨)を一直線に結んだ肢位のことを「ゼロポジション」といいます。
後期コッキング期においては、このゼロポジションでの腱板機能が重要です。「骨頭の求心位」といって上腕骨が肩甲骨の受け皿に対してカチッとハマり込んだ状態を作るのが腱板の役割です。
ゼロポジションで求心位を保った状態で投球動作ができるとSLAP損傷を防ぐことができます。肩甲骨と上腕骨の連動した動きの獲得が大切です。
ゼロポジション
肩甲骨の骨の出っ張り(肩甲棘)と腕の骨(上腕骨)を一直線に結んだ肢位のことを「ゼロポジション」といいます。
後期コッキング期においては、このゼロポジションでの腱板機能が重要です。「骨頭の求心位」といって上腕骨が肩甲骨の受け皿に対してカチッとハマり込んだ状態を作るのが腱板の役割です。
ゼロポジションで求心位を保った状態で投球動作ができるとSLAP損傷を防ぐことができます。肩甲骨と上腕骨の連動した動きの獲得が大切です。
フォロースルー期
フォロースルー期において肩関節は大きな内捻り(内旋)が起こります。肩甲骨の筋肉は腕を減速ながら肩を安定させることが求められます。
腹斜筋などの体幹の前面にある筋肉の活動により肩甲骨まわりの筋肉をサポートできるため、体幹筋のトレーニングも重要です。
フォロースルー期
フォロースルー期において肩関節は大きな内捻り(内旋)が起こります。肩甲骨の筋肉は腕を減速ながら肩を安定させることが求められます。
腹斜筋などの体幹の前面にある筋肉の活動により肩甲骨まわりの筋肉をサポートできるため、体幹筋のトレーニングも重要です。
無理して投げ続けていたらどうなりますか?
SLAP損傷では症状の罹患期間が長い選手ほど治療成績が不良であったとの報告があります。痛みをかばいながら競技生活を継続していると、痛みの悪循環が生じ、運動機能の低下や神経が過敏化することにより痛みを感じやすい状態になってしまいます。SLAP損傷は早期発見・早期治療が大切な疾患です。
SLAP損傷は自然治癒しますか?
上方関節唇は治癒能力に乏しいといわれています。リハビリを行なっても改善が見られない場合や肩関節に不安定性が残る場合は手術が適応になることもあります。
投球禁止(ノースロー)はどのくらいの期間必要ですか?
明確な投球禁止期間はありません。炎症がおさまり次第、骨頭の求心位を保つエクササイズを開始します。SLAP損傷に至った原因を放置したまま無理をして投げ続けていると、損傷は少しずつ進行していきます。
手術は必要ですか?
SLAP損傷の全てが手術になるわけではありません。損傷の程度が軽度のものは保存療法(リハビリテーション)が基本になります。保存療法を行っても症状が残存するものや損傷の程度の重度のもの、肩の不安定性の強いものは手術の適応となります。
手術の方法にもよりますが、損傷前と同程度のパフォーマンスを発揮できるのは60%前後との報告もあります。手術後は全力投球に4ヶ月、競技復帰に6ヶ月ほどかかり長期の戦線離脱となります。SLAP損傷は早期発見・早期治療が大切となります。
痛みがなくなりましたが、いきなり投げても大丈夫ですか?
段階的な投球練習が必要です。次のような流れで投球を開始します。
①シャドーピッチング
↓
②ネットスロー
↓
③塁間半分
↓
④塁間
↓
⑤1-3塁間(対角線)
↓
⑥1-3塁間+10〜15m(遠投)
復帰に向けて注意点はありますか?
オーバーワークによる再発をさせないように、運動負荷を段階的に上げることが大切です。
頻度と強度の両面を考慮する必要があり、同時に負荷を上げないように注意して進めます。
投球禁止(ノースロー)中にできることはありますか?
関節唇は鍛えることで耐久性が向上することはありません。つまり関節唇自体を強化するのではなく、関節唇損傷に至った原因動作の修正などが必要です。投球フォームの不良や筋力低下、体の硬さなどを見つけ出し、そこを修正していきます。
このように肩の機能は多くの関節が関わっています。投球禁止期間中は、肩甲上腕関節(肩関節)は安静に保ちつつ他の関節や筋肉の機能の向上をはかります。
SLAP損傷は再発しますか?
関節唇は損傷すると自然治癒することがない組織であるため、悪いフォームでの投球、身体の硬さ、筋肉のアンバランスなどを抱えたまま競技を続けていると、症状は進行していきます。