ジャンパー膝とは

ジャンプ動作を多くするスポーツ競技で、大腿四頭筋だいたいしとうきんの収縮する力が膝蓋骨しつがいこつ(ひざのお皿)と膝蓋靭帯しつがいじんたいの間にストレスを与え、それが繰り返されると腱の微小断裂びしょうだんれつが生じる疾患です。膝蓋靭帯炎しつがいじんたいえんともいいます。
骨の成長が完了した15歳以降で発症が多くみられます。

膝蓋靭帯炎とは
ジャンパー膝 膝の構造

ジャンパー膝の症状

主に、膝蓋骨の下の腱の痛みであり、症状は4期に分類され、症状を放置しておくとしだいに進行していきます。

ジャンパー膝症状
ジャンパー膝 病期分類

ジャンパー膝の原因

大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の柔軟性低下が原因となります。
特に成長期では、骨の成長が著しいため筋肉の長さが追いつかず、骨よりも筋肉が短い状態が続きます。
そのストレスが膝蓋腱にかかるために発症します。
ジャンプやダッシュなど、体重がかかった状態での膝の曲げ伸ばし動作を頻繁に行うと、牽引力が膝に過剰に加わり、膝蓋腱に微細損傷びさいそんしょうを引き起こします。

腱障害の発生機序

腱障害の発生機序はいまだに明確になっていません。

コラーゲンの損傷や炎症によるものなどいくつかの説が考えられます。

コラーゲン損傷説

すでに腱が脆く弱くなっているところに腱組織に負荷がかかり断裂・損傷を起こすと考えられています。

炎症説

負荷によって腱が炎症を起こし、痛みを引き起こすと考えられています。しかし慢性化した腱障害では炎症反応はほとんど認められません。そのため炎症はわずかに存在するものの痛みの主要因ではないと考えられています。

腱細胞反応説

腱細胞は外部環境による刺激を感知することができます。刺激に反応して細胞が活性化しコラーゲンを合成します。

負荷が減ってくると腱細胞が刺激されず腱細胞が活性化せず退行性変化が起きると考えられます。

コンテニュアム・モデル

腱障害を「急性期」「慢性期」と区分けすることなく一連の流れの中で説明するモデルです。

腱は負荷に対してダイナミックに対応しています。

正常な腱に対して適切な負荷がかかると、腱はそれに適合し強化されます。

腱に対して負荷が適切にかかっていない状態を許容量が低下した腱(Unloaded tendon / Stress shielded tendon)といいます。この状態で負荷がかかると腱の許容量に対して負荷が過度になってしまい、反応性腱障害(Reactive tendinopathy)を引き起こします。

ジャンパー膝はどこが痛くなるの?

大きく分けて次の3つの部位が痛くなります。

  • 膝蓋骨上極から大腿四頭筋腱付着部が約20%
  • 膝蓋骨下極から膝蓋靭帯付着部が約70%
  • 膝蓋靭帯中央部から脛骨結節付着部が約10%
膝蓋靭帯炎の痛くなる場所
ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)の痛くなる場所

ジャンパー膝の検査

専門的な話になりますが、
単に「ひざの皿の下が痛い」といっても痛みの原因となる組織はたくさんあります。
そのため正確に手で触れて痛みの原因を探る必要があります。

ジャンパー膝痛い場所2
ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)の検査方法



(図;関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーションより引用)

ジャンパー膝の治療法

  1. 患部の安静・アイシング
  2. 鎮痛処置:湿布や超音波治療など
  3. 体外衝撃波(圧力波)治療
  4. テーピング
  5. ストレッチ(オスグッド病に準じて行う)
  6. 徒手療法
  7. 運動療法
  8. インソール療法

ジャンパー膝に対する体外衝撃波(圧力波)治療

拡散型体外衝撃波(圧力波)療法とは、日本ではまだ導入の少ない治療法ですが、近年、欧米を中心に注目されています。

衝撃波(圧力波)はジャンパー膝の原因となる分厚くなった膝蓋腱の細胞に対して影響を与えます。衝撃波を照射した細胞は血管新生や骨、腱などの修復を促進します。修復機序がストップしていた膝蓋腱の細胞を活性化させ、組織の再生・治癒が期待できます。

また皮膚の痛み神経(自由神経終末)の破壊と再生を起こすため強い除痛効果が得られます。そのため試合期などの痛みのケアとしても大変有効です。

ジャンパー膝に対する徒手療法

ジャンパー膝では、膝蓋靱帯の膝蓋骨に付着する部分の深層の炎症と、さらにその下にある脂肪体しぼうたいの炎症が見られることが多く、脂肪体の柔軟性と滑走性の改善を目的に徒手療法を用います。

ジャンパー膝検査
ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)の軟部組織リリース


(図;関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーションより引用)

ジャンパー膝に対する運動療法

ジャンプからの着地、スクワット動作、しゃがみ込み動作などで、
左図のように背中が丸くなり骨盤が後ろに倒れると、大腿四頭筋の負担が増えてしまいます。
足の付け根に自分の指を置き、その指を骨盤と太ももの骨で挟み込むようにスクワット動作を練習します。
反復練習をして、痛みの出ない動作を学習していきます。

スクワット悪いフォームとは
ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎) スクワットの悪いフォームとは

ジャンパー膝に対するテーピング

①ジャンパー膝のテーピングにはロイコテープという特殊なテープを使用します。

アルコット接骨院で使用するテーピング
ロイコテープ

②膝蓋靭帯の部分にアンダーラップの一種(カバーロール)を貼付します。

ジャンパー膝テーピング
ロイコテープを使ったジャンパー膝に対するテーピング①
ジャンパー膝テーピング
ロイコテープを使ったジャンパー膝に対するテーピング②

③ロイコテープを「人」の字のようにくっつけます。
膝蓋靭帯を持ち上げるように上に引っ張ります。

ジャンパー膝テーピング
ロイコテープを使ったジャンパー膝に対するテーピング③
ジャンパー膝テーピング
ロイコテープを使ったジャンパー膝に対するテーピング③

④引っ張りながら内側に倒しこみます。(完成)

ロイコテープを使ったジャンパー膝に対するテーピング
ロイコテープを使ったジャンパー膝に対するテーピング④