成長期の骨の特徴

成長期の子供の骨には、骨端線こったんせんという場所があります。
骨端線は成長線ともよばれ、骨が伸びる場所のことです。
骨端線は、成長が終わると固く頑丈な骨になりますが、成長が終わるまではずれを生じやすい状態になっています。

大腿骨の成長線
骨端線とは

大腿骨頭すべり症とは

大腿骨の股関節部分にある骨端線が、衝撃によりズレている状態をいいます。
骨の成長が終わるころに発症しやすく、少しずつ慢性に経過する場合があることが知られています。
めずらしい病気であるため、病院でも診断が難しいとされています。
はっきりとケガが原因で急に起こる場合(10~20%)と、軽い外力の蓄積により慢性の経過をたどる場合(80~90%)とがあります。
10代前半の男児に多く発生します。また、ホルモンバランスが悪い肥満傾向の小児にも多く発生します。

大腿骨頭すべり症とは
大腿骨頭すべり症とは

大腿骨頭すべり症の症状

  • 股関節の痛み
  • 股関節の動きが悪い
  • 跛行はこう(足をひきずる、びっこをひく、歩き方がおかしいなど)
  • 股関節の痛みが、ももの内側から膝にまでひろがる
  • 痛い側の足が外向きにねじれる
  • 慢性の場合は痛みが強くないことが多い
大腿骨頭すべり症足が外向きにねじれる
大腿骨頭すべり症 足が外向きにねじれる

大腿骨頭すべり症の原因

原因はいまだはっきりとわかっていません。

けがによるものや炎症によるもの、思春期のホルモン量の変化により骨端線が弱くなることなどが原因という説もあります。

大腿骨頭すべり症の検査

問診や触診、股関節の動きの範囲、歩き方、足の長さの違いなどを調べ、大腿骨頭すべり症が疑われる場合は早急に病院でレントゲン検査を行います。
レントゲン検査で異常が発見できなかった場合は超音波検査とMRI検査をすることもあります。

大腿骨頭すべり症レントゲン
大腿骨頭すべり症 レントゲン

(図;radiopaedia.orgより引用)

大腿骨頭すべり症の治療法

以前は手術せずに治療することもありましたが、現在では手術による治療が一般的です。
骨頭のズレの程度で手術内容が変わります。ズレが軽度であれば、その位置でピンで固定します。
骨が丈夫になった時に手術で入れたピンを抜く手術をします。
ズレの程度が強ければ、矯正手術(骨切術)をします。
大腿骨頭が正常な位置にくるように骨のむきを変えて固定します。
手術の後2~3カ月は股関節に負担をかけないよう松葉づえを使います。

大腿骨頭すべり症手術
大腿骨頭すべり症 手術

早期発見、早期治療を

ズレた部分には新しい骨が生じ、発見が早いほど正常な股関節に近い状態まで回復します。
重症の場合、手術をしても骨の変形が残ることがあります。変形を残さないために早期発見・早期治療が大切です。

こんな症状に注意

10代前半の男児で、最近歩き方がおかしく、次のような症状がある場合は大腿骨頭すべり症の恐れがあります。
すぐに検査を受けましょう。

大腿骨頭すべり症検査
股関節の内旋(内側にねじる)ができない

股関節の内側へのねじり運動ができなくなります。

大腿骨頭すべり症検査2
大腿骨頭すべり症 Drehmann(ドレーマン)徴候

Drehmann(ドレーマン)徴候
仰向けに寝た状態で、痛い側の足の膝を曲げ、膝を胸に近づけるようにまっすぐ曲げます。
健常であれば、体の正中線と平行に膝が胸にまっすぐ向かっていきます。
大腿骨頭すべり症であれば、膝先が体の外側に自然とずれていきます。