
強剛母趾について(原因と症状)
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強剛母趾について(原因と症状)
強剛母趾とは?
強剛母趾(Hallux rigidus)は、母趾MTP関節に起こる変形性関節症です。
外傷(捻挫や骨折など)がきっかけとなる場合もありますが、実際には加齢に伴う関節の変性が背景となることが多くみられます。
また、痛みの出る位置が外反母趾と似ているため、患者さん自身が外反母趾と勘違いして受診するケースも少なくありません。病気が進行すると、関節の背側だけでなく、母趾MTP関節全体に痛みが広がるようになります。
1877年にDavies-Colleyが初めて病態を報告し、同年に Cotterillが “hallux rigidus(強剛母趾)” という名称を与えた疾患です。

どんな人に多い?
疫学的には、強剛母趾は 女性に多く(63〜80%)発症するとされています。また、両側性にみられることが多く、家族性が3分の2以上を占めると報告されています。
50歳を過ぎると、足にトラブルを抱える方の4人に1人が強剛母趾になっているという報告があります。それだけ、多くの方にみられる身近な足の病気です。
進行について
強剛母趾の進行度は、Hattrup and Johnson分類という基準がよく使われます。これは、どの治療が適しているかを選ぶための目安になります。
グレード1(軽度)
- 小さな骨の出っ張り(骨棘)ができはじめている
- 関節の隙間はまだしっかり保たれている
グレード2(中等度)
- 骨棘が中等度に大きくなっている
- 関節の隙間が少し狭くなっている
- 骨の表面が硬くなっている所見(骨硬化像)が見られる
グレード3(重度)
- 大きな骨棘がはっきりとできている
- 関節の隙間がほとんど消えている
- ときに骨の中に小さな嚢胞(軟骨下嚢腫)ができる

強剛母趾の症状
- 母趾の伸展制限(反らす動き)が顕著
- 強制的に伸展すると最終域で痛みが誘発される
- 歩行時の蹴り出しの際に背側部に痛み
- 階段下降時やつま先立ちで痛い
- ランニングや長時間歩行後の疼痛
- 関節全体がやや腫れるが熱感はないことが多い
- 関節背側の皮下に骨棘(小さな骨の出っ張り)を触れることがある
- 悪化すると、浅腓骨神経の母趾背側趾神経が骨棘と靴の間で圧迫され、背内側のしびれや知覚鈍麻が生じる

強剛母趾の原因
外傷歴
- 関節内骨折
- turf toe 損傷
- 骨軟骨損傷
炎症性疾患
- 関節リウマチ
- 痛風
生活・動作・スポーツ背景
- ハイヒールの多用
- ダンス、剣道などの母趾の伸展を繰り返すスポーツ
遺伝的素因
- 家族歴
解剖学的異常
- 第1中足骨挙上
- 外反母趾
- 第1中足骨が第2中足骨より長い

強剛母趾の治療
保存療法
- 生活指導・体重管理
- インソール・靴合わせ
- 痛みの軽減を目的とした物理療法
- 関節可動域の維持・改善を目的とした運動療法
病院での治療
- 薬物療法
- 関節内注射
- 手術
- 病期 1〜2(関節温存):Cheilectomy(関節縁切除術)、Moberg骨切り術
- 病期3(進行期):第1MTP関節固定術
生活上の注意点
強剛母趾のある母趾MTP関節は「体重がかかる関節」のため、体重管理はとても大切です。関節への負担を減らすため、日常生活では次のような点に気をつけていただきます。
- 母趾を強く反らす動作をできるだけ避ける
- 正座から立ち上がるときは、痛い側の足で立て膝をしない
- 歩くときは歩幅を少し短めにして、親指にかかる負担を軽くする
- 急に背伸びをする動作は控える(母趾が強く反りすぎて痛みが出やすいため)
これらの工夫により、母趾の関節へのストレスを減らし、痛みの悪化を防ぐことが期待できます。
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インソール療法
インソールは、足のアーチをしっかり支えることで足全体に体重をうまく分散させる効果があります。特に、内側の縦アーチをサポートすることで、親指の付け根にかかる負担を減らすことができます。
また、母趾の裏側には カーボンなどの硬い素材を使い、踏み返しの動きを少し制限します。これにより、母趾を反らせすぎることを防ぎ、痛みの軽減につながります。
▼当院での強剛母趾用のインソール作製風景
靴合わせ
ロッカーボトム型のソールは、靴底がカーブした形状をしており、そのカーブが“転がるような動き”をつくります。
歩くときにこの転がりが体重移動を助けてくれるため、母趾で強く踏み返す必要がありません。その結果、親指の付け根(第1MTP関節)にかかる負担が軽くなり、痛みの軽減につながります。
強剛母趾の方には、つま先側が少し反り上がったタイプのシューズまたはロッカーボトム型のシューズを選ぶと効果的です。

物理療法
グレード1〜2の強剛母趾では、関節の周りがこわばって動きにくくなっていることが多いです。
超音波治療やホットパックなどで温めると、
- 血流が良くなり痛みが軽くなる
- 筋肉や腱がゆるんで動きが改善しやすくなる
- リハビリ(可動域訓練)の効果が出やすくなる
といった理由から、初期〜中等度の段階では温熱療法がとても有効です。

運動療法
骨棘がまだ小さい場合
足の裏の筋肉のストレッチ、母趾MTP関節の可動域訓練といったリハビリが効果的です。これらは、母趾を反らす動きを改善することを目的に行います。

伸展制限が強い場合
一方で、母趾を大きく反らすと痛みが出る場合は、骨棘や軟部組織が衝突するインピンジメントが起きている可能性があります。このような場合は、無理に反らす運動は行わず、痛みが出る角度まで動かさないことが大切です。無理な可動域訓練は逆に悪化の原因になることがあります。

似たような疾患
| 疾患名 | 痛む場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 強剛母趾 | 母趾MTP関節の背側 | 反らすと痛い、骨棘を触れることあり |
| 外反母趾 | 母趾MTP関節の内側 | 見た目に変形あり(合併もあり) |
| 痛風 | 母趾MTP関節全体 | ズキズキ痛む、歩けないほど強い痛み |
| 種子骨障害 | 足底側(母趾の裏側) | 体重をかけると足底が痛む |

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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、マイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了