突然、筋肉が痙攣(けいれん)を起こし痛みが走る「こむら返り」。すぐに治ることもありますが、痛みが継続したり毎晩のように起こることもあります。中高年の半数以上が日常的に夜間の筋痙攣を経験しているといわれています。
そもそも、こむら返りとは、ふくらはぎの痙攣のことをいいますが、全身どこの筋肉でも痙攣を起こす可能性があります。
原因として
- 運動不足
- 筋肉の疲労
- 脱水症状
- マグネシウム不足
- 坐骨神経痛
- 冷え
- 妊娠
などが挙げられます。
対応策としてはストレッチ、マッサージ、漢方薬、筋弛緩薬などがあります。
今回紹介するのは、「キネシオテーピング」です。
「キネシオテーピング」は特殊な素材を使ったテーピングで主にスポーツの現場で使用されています。
私はこれを応用して、こむら返りの患者さまに使用しており、劇的な効果を得ています。
マッサージや薬で効果が見られなかった患者さまでもかなりの確率でこむら返りが消失します。
では、さっそく紹介していきます。
使用するテープはキネシオテープ50mm幅のもの。当院では3M社のレギュラーテープ、またはニトムズ社製のニトリートを使用しています。
①まず、テープを40~45cmの長さにカットします。
写真ではわかりやすくするために、カラーのテープを使用していますが、通常はベージュのものなので、目立ちません。
②次に、剥がれにくくするために角を丸くカットします。
③下から5cmの箇所に切り込みを入れます。
④残りの部分を5本の熊手状にカットします。難しい部分です。
⑤うつ伏せになり、ベッドから足首をはみ出します。
足首を目いっぱい反らせ、テープを引っ張らずに載せるように貼付します。
この貼り方はどなたかに貼っていただく必要があります。
⑥ご自身で貼られる場合は、Y字状にカットします。
⑦椅子から足を下ろして足首を目いっぱいに起こします。
この状態でかかとだけまず貼り付け、その後ふくらはぎにそっと載せるように貼付します。
テープの素材により、かゆみ、赤み、かぶれが発生する場合があります。
その場合は、すぐにテープを剥がしてください。
かゆみ等がなければ2~3日は継続して貼っていても構いません。
剥がす際は、毛の走行に逆らわないようにそっと剥がしてください。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
こむら返りとは
医学用語では、「有痛性筋痙攣」「筋クランプ」などと呼ばれます。筋肉がなんらかの原因で突然痙攣を起こし収縮したままロックされ、痛みを伴ったまま動かせなくなってしまった状態のことをいいます。
ふくらはぎのことを「こむら(腓)」と呼んでいたことから、ふくらはぎが痙攣することを「こむら返り」といいます。しかし、筋痙攣はふくらはぎだけではなく、指・腕・すね・太もも・土踏まず・首や肩などでも起こります。
筋肉がつるメカニズム
人体の全ての筋肉や腱には、縮みすぎたり伸びすぎたりしないようにセンサーが備わっています。
センサーには次の2種類があります。
- 筋紡錘(きんぼうすい):筋肉の伸びすぎを監視する
- 腱紡錘(けんぼうすい):筋や腱の縮みすぎ・伸びすぎを監視する
筋紡錘は筋肉が伸びたことを感知すると、これ以上伸びすぎないように脊髄に対して「縮め」と指令を出します。(伸張反射)
一方、腱紡錘は筋肉が伸びるときも縮むときも常に監視していて、脊髄は筋肉の伸びすぎや縮みすぎを調整しています。(自己抑制)
これらの仕組みは脊髄で反射的に行われているため、意識しなくてもうまく働いていて筋肉や腱のバランスをとっています。ところがなんらかの要因でこれらのセンサーの働きが狂うと、筋肉が収縮しすぎても腱紡錘が正しく働かず、「筋肉を緩めろ」という指令が出せなくなります。自己抑制が効かなくなっている状態が、筋肉の痙攣です。
こむら返りの原因
次の2つが主な原因と考えられています。
- 筋紡錘・腱紡錘の誤作動
- ミネラル(電解質)のバランスの崩れ
こむら返りはさまざまな要因が組み合わさり発生します。そのため原因を1つに特定することは困難です。
加齢とこむら返りの関係
65歳以上の6割以上がこむら返りを経験しているという報告があります。中高年になるとさまざまな要因が重なり、こむら返りが起こりやすくなります。
- 筋力低下
特に足の筋力が低下すると、血流が悪くなり筋肉の収縮・弛緩を調節しているミネラルが十分に行き届きません。また筋肉量が減ることで代謝も悪くなりミネラルバランスが悪くなりこむら返りを起こしやすくなります。 - 筋疲労
血流の悪化や筋力低下から筋疲労を起こし、睡眠時のこむら返りを起こしやすくなります。 - 動脈硬化
中高年になると動脈硬化を起こしやすく、血流が悪くなるとこむら返りの原因になります。 - 病気や薬の影響
糖尿病や脊柱管狭窄症など中高年に多い病気が原因でこむら返りを起こすことがあります。
睡眠中にこむら返りが起こる原因
睡眠中にこむら返りが起こる原因は次のようなものがあります。
- センサーの働きが低下する
就寝中は前述の筋紡錘や腱紡錘のセンサーとしての機能が低下します。そこへ刺激が加わることでこむら返りを起こします。 - 筋疲労
高齢者や運動不足の人は、筋肉量が少なく筋肉が疲れやすくいためこむら返りが起こりやすくなります。 - 脱水
睡眠中でも汗や呼吸によって500〜600mlの水分が失われています。朝方には軽い脱水状態になっているためミネラルバランスが崩れ、こむら返りを引き起こしやすくなります。 - 足の冷え
睡眠中は体温が下がったり、足が布団からはみ出したり、朝方の気温の低下などから足が冷えがちです。足が冷えると血流が滞り、こむら返りの原因となります。 - つま先が下がる
仰向けに寝た姿勢では、つま先が下がった肢位になります。この姿勢はふくらはぎの筋肉が縮んだ状態であり、寝返りなどの際にさらにここからふくらはぎの筋肉が収縮するとこむら返りにつながります。
スポーツ中のこむら返り
激しいスポーツ中やスポーツ後には汗とともにミネラルが失われます。中でもカルシウムとマグネシウムは筋肉の収縮・弛緩に大変重要です。カルシウムとマグネシウムは互いに助け合いながら働きます。マグネシウムは発汗により失われやすい性質があるため、カルシウムとマグネシウムのバランスが崩れることでこむら返りを引き起こします。
また水泳では冷えもその原因となります。そのほか、スポーツで筋肉の収縮を繰り返すとカルシウムが大量消費して筋疲労を招きます。
これらの状況下で筋紡錘や腱紡錘の働きが低下し誤作動を起こしてしまいます。
マグネシウムとカルシウムのバランス
こむら返りを予防するには、バランスよくミネラルを摂ることが重要です。特に重要なのが、マグネシウムとカルシウムのバランスです。
理想のマグネシウムとカルシウムの摂取比率
マグネシウム:カルシウム = 1:2〜3
現代の日本人の食事の欧米化により、マグネシウムを多く含む食品を摂る機会が少なくなりました。筋肉を緩める働きがあるマグネシウムの多い食品を意識して摂る必要があります。
マグネシウムが豊富に含まれるのは、納豆や豆腐などの大豆食品、魚介類、海藻、ナッツ類、玄米などです。