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椎体終板変性とは
Modic変性とは、背骨の椎体と椎間板の境目にある「終板」という部分が変性している状態を、MRIで確認できるものです。
この変化は、椎間板のすり減りなどによってその下の骨にもストレスがかかり、ダメージを受けて起こると考えられています。
若い人でもスポーツなどで過度な負荷がかかると、Modic変性が見られることがあり、アスリートでも一定の頻度で見つかります。
椎体終板とは

椎体終板は、椎骨と椎間板の間にある保護層で、骨と椎間板の間のクッションの役割を果たしています。
Classification
Modic変性の種類

MRIでの見え方
ModicはMRIの画像によって、次の3つのタイプに分類されます:
種類 | MRIでの見え方 | 特徴 | 意味すること |
---|---|---|---|
Type 1 | T1画像:黒く見える T2画像:白く見える | 炎症や浮腫(腫れ)、線維化、血管の増加、神経の増加 | 比較的急性期(炎症期)。 椎間板ヘルニアやケガと関連 |
Type 2 | T1・T2画像:どちらも白く見える | 骨髄が脂肪に置き換わる(脂肪髄化) 骨代謝の変化 | Type 1からの移行。慢性期の変化。 加齢や椎間板のすり減りと関係 |
Type 3 | T1・T2画像:どちらも黒く見える | 骨が硬くなる(骨硬化) 骨密度が増す | 比較的まれ。長期のストレスや不安定性が原因とされる |
※ 特にType 1は腰の炎症や不安定性、腰痛と強く関連していると注目されています。
MRI画像には2つの「見方」がある
MRIでは、撮り方によって「T1強調画像」と「T2強調画像」という2つの異なる映り方があります。
それぞれ、写り方に特徴があり、見える情報が少し違います。
T1強調画像とは?
- 脂肪:白く見える
- 水(むくみ・液体・嚢胞):黒く見える
- 腫瘍:やや黒く見える
骨や筋肉、臓器などの体の構造がはっきり見える
T2強調画像とは?
- 脂肪:白く見える
- 水(むくみ・炎症・液体・嚢胞):白く見える
- 腫瘍:やや白く見える
病気がある場所(水分が増えているところ)が白く光って見えるので、炎症・腫れ・腫瘍などを見つけやすい

Back Pain
Modic変性と腰痛の関係

どうして痛みが出るの?
研究によると、Type 1やType 2の終板変性では:
- 痛みを伝える神経の増加(自由神経終末)
- 炎症を引き起こす物質(サイトカイン、特にTNF-α)の増加
が確認されており、これらが腰痛の原因になっていると考えられます。
骨の新陳代謝との関係
近年、Modic変化、特にType 1では、骨の中での代謝(ターンオーバー)が活発になっていることがわかってきました。
これは骨粗しょう症と似たような仕組みで、骨の構造が不安定になると安静時でも腰痛が出やすくなると考えられています。
炎症は体の防御システム
炎症は「体に害を与えるものを排除するための戦い」です。
- 軽い刺激 → その場で対応して終了
- 強い刺激 → より多くの助け(細胞や物質)を呼び寄せて対処
勝てば回復。負けると組織が傷ついたり病気になったりします。
どうして炎症が起きるの?
体が刺激に反応すると、血管が広がったり、細胞から化学物質が出たりして、刺激と戦う準備をします。
- 血管を広げる → 多くの血液と助っ人(白血球など)を送るため
- 血管の壁をゆるめる → 白血球などが外に出やすくなる
- 神経を刺激する物質が出る → 痛みが出る(でもそれで動きを止めて守る)
「化学物質」はどう働く?
1. 血液にある化学物質
普段は「スイッチOFF」状態(=前駆物質)
→ 刺激が加わるとスイッチONになって反応開始
→ たとえばブラジキニンは強い痛みを起こす物質
2. 細胞に蓄えられている化学物質
すぐ反応するためにスタンバイしている物質
→ たとえばヒスタミン(かゆみ・鼻水・くしゃみなどの原因)
3. 刺激を受けて新しく作られる物質
→ たとえばプロスタグランジン
- 血管を広げる
- 痛みを強くする
- 炎症を助ける物質と連携して反応を広げる
Symptoms
Modic変性の症状

- 前かがみになると腰の痛みが強くなる
- 長時間座っていると痛い
- 腰の中心部に深く、焼けるような、うずくような痛み
- 通常、足に痛みやしびれはないが、椎間板ヘルニアを併発して足に痛みやしびれ(坐骨神経痛)が出ることもある
Cause
Modic変性の原因

- 日常生活による摩耗(加齢)
- 肥満 身長が高いこと
- 肉体労働や激しい運動を伴う仕事
- 慢性腰痛の家族歴
- 喫煙
- ケガや転倒
Athlete
アスリートのModic変性

Modic変性の頻度が一般人で0〜0.7%であるのに対し、アスリートでは17〜46%にModic変性が見られたという報告があります。
激しい運動や反復動作により、椎間板や椎体終板にストレスがかかるため、Modic変化が起こりやすいです。
Treatment
Modic変性の治療法
なぜ早期の運動療法が必要なのか?
アスリートが長期間運動を休むと、体力や筋力が低下し、酸素を取り込む力(最大酸素摂取量)も落ちてしまいます。
そのため、できるだけ早い段階から運動療法を始めることが大切です。
ただし、Modic変性 Type 1がある場合、腰痛との関連が強いため注意が必要です。
特に、椎間板の変性があると腰椎の動きに制限が出ていることもあり、無理な動作は避けなければなりません。
最大酸素摂取量とは
私たちの体は、呼吸によって取り入れた酸素を使って糖や脂肪をエネルギーに変え、運動をしています。運動が激しくなっても、体がどれだけ効率よく酸素を取り入れて使えるかという能力が「全身持久力」と呼ばれます。
その全身持久力を数値で表すのが「最大酸素摂取量(VO₂max)」です。

Exercise
運動療法の実際
腰に負担を集中させないためには、胸椎・骨盤・股関節といった周囲の関節の柔軟性や動きのバランスを整えることが重要です。
そのため、リハビリでは2つのステージに分けて進めます:
- 痛みの強い時期(疼痛ステージ)
- スポーツ復帰を目指す時期(競技復帰ステージ)
Painful Stage
疼痛ステージのリハビリ
① 腰椎の安定性を高めるトレーニング(stabilityエクササイズ)
この時期は、腰に直接負荷をかけないように注意しながら、深部筋を鍛えて腰を安定させることが目的です。

ドローイン(draw-in)
腹横筋はお腹の奥にあるコルセットのような筋肉で、腰を安定させる役割を担います。
- 仰向けに寝て、両膝を曲げます。
- 腰が丸まりすぎないように、腰の下にバスタオルを入れます。
- 息をゆっくり吐きながら、お腹をへこませるように引き込みます。
- 腹直筋や腹斜筋(わき腹)に力が入りすぎないように注意します。

ハンドニー(hand-knee)エクササイズ
四つ這いで、片手と反対側の足をゆっくり持ち上げるエクササイズです。痛みが落ち着いてきたら行ってください。
- 四つ這いの姿勢になり、片手と反対側の足を同時にゆっくり持ち上げます。
- 腰が左右にぶれないように注意しながら実施してください。
- 腹横筋の収縮(ドローイン)を意識して行うと、より効果的です。
② 腰に負担をかけないための「mobilityエクササイズ」
腰椎にかかるストレスを減らすためには、腰以外の部位の柔軟性を高めることが重要です。特にハムストリングス(もも裏)や胸椎(背中の上の部分)、股関節の柔軟性がカギになります。

ハムストリングスストレッチ(もも裏の柔軟性向上)
- 椅子に座り、一方の脚を前に伸ばします。
- 骨盤を前傾させた状態で、ゆっくり体を前に倒します。
- 腰が丸まらないように注意しましょう。

胸椎モビリティ
- 四つ這いになって、背中を丸めたり反らせたりします。
- 特に胸のあたり(胸椎)をしっかり動かすことを意識しましょう。

股関節外旋筋ストレッチ
- 足を使って左足をさらに内側にゆっくりと押し込むように動かし、左側のお尻の筋肉(股関節外旋筋)をストレッチします。
- 仰向けに寝た状態で、左足の股関節を内側にねじった姿勢(内旋)にします。

股関節内旋筋ストレッチ
- イスに座った状態で、右足の股関節を外側に開く姿勢(外旋)にします。
- 右手を使って、右足をさらに外側にねじる方向へやさしく誘導します。
- このとき骨盤をしっかり立てて、腰が丸まらないようにします。

胸椎回旋ストレッチ
- 横向きに寝て、両足の股関節と膝を90度に曲げておきます。
- 体の下半分(骨盤〜腰)は動かないように安定させたまま、胸を開くように上半身を後ろにねじっていき、胸椎の回旋をゆっくりと促します。
- 骨盤が一緒に動かないように意識しましょう。呼吸を止めず、自然に深呼吸しながら行うと効果的です。
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胸椎回旋ストレッチ(座位)
- 腰の自然なカーブを維持したまま背中をねじるようにします。
- スティックを両手で持ち、ねじる方向に軽く引っ張ると、胸椎をしっかりと動かせて、腰への負担も少なくなります。
- 背筋を伸ばして行うことが大切です。腰ではなく「背中がねじれている感覚」を意識しましょう。
RTP Stage
競技復帰に向けたリハビリ
痛みが落ち着いた後の“攻め”のリハビリ
腰痛が落ち着いたこのステージでは、やさしい運動から一歩進んで、積極的なトレーニングに移行します。
目指すのは「競技復帰に耐えうる身体機能の獲得」です。

バランスボールを使った腹筋運動
- バランスボールに乗って仰向けになります。
- 腰を安定させたまま、胸椎を丸めたり伸ばしたりする運動を行います。
- 腰を守りながら、背中の動きを改善できます。

メディシンボールスロー
- フロントランジの姿勢で、股関節を使いメディシンボールを後方に引きます。
- 股関節の力でメディシンボールを投げます。
- 慣れてきたらスピードをつけていきます。
金沢市で腰痛治療・リハビリを受けるなら
腰痛治療のその先へ ― パフォーマンス向上まで考えるリハビリ
アスリート特有の腰痛には、電気治療やマッサージだけでは不十分です。
当院では、椎体終板障害に対する段階的なリハビリテーションを重視し、再発予防と競技復帰をサポートします。

医療 × トレーニングの融合で、腰痛からの競技復帰を全力サポート
椎体終板障害は、トップアスリートにも多く見られる腰痛です。当院ではすべてのセラピストが医療系国家資格とトレーナー資格を保有しており、医学的根拠に基づいた安全かつ的確なアプローチを提供しています。

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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、マイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了