
はじめに
陸上やバスケなどの走る・跳ぶスポーツをしている人によく見られるのが、すねの痛みです。
代表的な原因は次の3つです。
- シンスプリント(内側脛骨ストレス症候群:MTSS)
- 疲労骨折
- 慢性コンパートメント症候群
ここでは、シンスプリントと疲労骨折に焦点をあてて解説します。
シンスプリントとは
「シン(shin)」はすね、「スプリント(splint)」は副木、添え木。正式には「内側脛骨ストレス症候群」と呼ばれます。
「すねの内側に出る痛み」のことで、特にランニングやジャンプを繰り返す競技でよく見られます。

シンスプリントの症状
- 走ってしばらくしてから痛みが出る
- 運動後も痛むが、休むと軽減する
- すねの内側に5cm以上の範囲で圧痛がある
- レントゲンでは異常が出ないことが多い
- MRIで骨膜や骨髄のむくみが見える場合もあるが、明確に映らないことも多い

シンスプリントの原因
- オーバーユース(使いすぎ)
- 筋肉の牽引による骨膜へのストレス
- 硬い地面や合わない靴
- 扁平足(足が内側に倒れる状態)

シンスプリントの治療法
- 運動の制限
- 負荷の少ない運動(例:水中歩行など)
- フォームやシューズの見直し
- インソールやアーチサポートの使用
- 電気治療や超音波治療、衝撃波治療

下腿疲労骨折とは
疲労骨折は「骨に小さなひびが入るケガ」です。すねの骨(脛骨・腓骨)に繰り返しの負荷がかかって生じます。
特にランナー、ジャンパー、女性アスリートに多いです。
シンスプリントよりも症状が重く、しばらく運動を中止する必要があります。

下腿疲労骨折の分類
下腿の疲労骨折は次のように分かれます:
- 脛骨の疲労骨折
跳躍型、疾走型、内果(うちくるぶし)など - 腓骨の疲労骨折
跳躍型、疾走型
疲労骨折の種類
1.疾走型疲労骨折
- 脛骨や腓骨のやや後ろ側や下部に起こる
- 長距離走など、繰り返しのランニングで発症
2.跳躍型疲労骨折
- 脛骨の前側(前縁)に起こる
- ジャンプ着地などで繰り返し負担がかかる
- 治りにくく、手術が必要になることもあるので特に注意が必要!

下腿疲労骨折の症状
- 運動を始めてすぐに強い痛みが出る
- 圧痛が限局しており、叩くと響くような痛み(叩打痛)がある
- 時には腫れや骨の隆起を触れることもある

下腿疲労骨折の原因
- 急激な練習量の増加
- 筋力不足や柔軟性の問題
- 栄養不足(カルシウム・ビタミンD)
- 合わないシューズ、硬い地面
- 女性ホルモンバランスの変化(特に女性アスリート)
骨のリモデリングと疲労骨折の関係
骨は一度できたら終わりではなく、「リモデリング」と呼ばれる新陳代謝を常に繰り返しています。
このリモデリングでは、
- 古い骨を壊す(破骨:骨吸収)
- 新しい骨をつくる(骨形成)
という2つの働きがバランスよく行われており、これによって骨の強さや健康が保たれています。骨吸収と骨形成にかかる期間はそれぞれ異なります。

- 骨吸収:2〜4週間
- 骨形成:4〜6ヶ月
つまり、骨を壊すスピードのほうが早く、作るのには時間がかかるということです。吸収が長引いたり、形成が遅れたりすると骨量が減少し、骨が弱くなっていきます。

運動などの繰り返しで起きる細かい損傷は、通常は自然に治りますが、修復が間に合わないと「疲労骨折」になります。
下腿疲労骨折の治療法
- 運動の中止
- 疾走型:4〜6週間の運動中止で治癒
- 跳躍型:3か月以上休む必要があることも
- 内果型:不安定な場合や早期復帰希望時は手術(スクリュー固定)
- 超音波骨折治療器
- 髄内釘手術が行われるケースも(跳躍型など)
骨折の治癒を早める超音波治療
LIPUS(リーパス)は、「弱い超音波を骨折部分に断続的に当てて、骨の回復を早める治療法」です。
この超音波は痛みを感じるような強いものではなく、やさしい刺激で、骨を作る細胞(骨芽細胞)や軟骨の細胞に働きかけて、骨折の治癒を早めてくれます。
- 微弱な超音波振動が骨折した部分に伝わる
- 骨を作る細胞が活性化される
- 骨が早く、しっかりとくっつく(骨癒合が進む)
という仕組みです。

まとめ
特徴 | シンスプリント | 疲労骨折 |
---|---|---|
痛みが出る時期 | 運動中盤〜後半 | 運動開始すぐ |
圧痛の範囲 | 広い(5cm以上) | 狭い(ピンポイント) |
画像検査 | 異常なしが多い | X線・MRIで異常あり |
治療 | 保存療法 | 保存療法、場合によっては手術 |
予後 | 良好 | 場合により長期化・再発も |
「シンスプリントが進行して疲労骨折かもしれない」と思われたら、病院で画像検査を行って、より詳しく調べる必要があります。
- X線(レントゲン)
- MRI(骨髄のむくみ=骨髄浮腫が映る)
- CT(骨の細かな損傷も見える)
これらの検査で、骨にひび(皮質骨の異常)や腫れ(骨髄浮腫)が見られた場合は、「疲労骨折」としての治療が必要になります。
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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、マイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了