筋断裂きんだんれつ・筋損傷(肉ばなれ)とは

スポーツなどで筋肉に急に強い収縮力しゅうしゅくりょくがはたらいたとき、自身の筋力に負けて筋肉が断裂だんれつすることをいいます。

いわゆる「肉ばなれ」です。太ももの裏太ももの前太ももの内側ふくらはぎ(テニスレッグ)によく発生します。

筋断裂・筋損傷(肉ばなれ)の分類

筋肉の損傷の程度によって、3段階に分けられます。

  • 度損傷 (軽症)
    筋線維きんせんいの断裂はないが、筋肉の細胞の破壊がみられるもの
  • 度損傷 (中等度)
    部分断裂ぶぶんだんれつであり、一般的に「肉ばなれ」とよばれている完全断裂かんぜんだんれつはしていない。
  • 度損傷 (重症)
    筋肉が完全に断裂しているもの
肉離れの分類
筋断裂(肉離れ)の分類

筋断裂・筋損傷(肉ばなれ)の症状

損傷の程度によって症状が異なります。

度損傷 (軽症)

  • 痛みはあるが、自分で歩くことはできる

度損傷 (中等度)

  • 押さえて痛いところがある
  • はれがある
  • 内出血がある
  • ブチッという断裂音を感じた

度損傷 (重症)

  • 激しい痛み
  • 筋肉にへこみができる
  • 自力では歩けない
肉ばなれ後の内出血
肉ばなれ後の血腫

筋断裂・筋損傷(肉ばなれ)の原因

ウォーミングアップ不足や、体が硬いこと、筋力のバランスが悪いことなどが原因と考えられます。

筋断裂・筋損傷(肉ばなれ)の検査

問診や触診などにより筋断裂が疑われる場合は、次にどの程度筋肉が損傷されているかを調べます。
下図のようにどの角度で痛みが出るかによって、簡易的に調べることができます。
それにより治療方法や完治までの期間、スポーツ復帰までの期間などを判断します。
重症の筋断裂が疑われる場合は、病院でMRIなどの精密検査をする必要があります。

ハムストリングスの肉ばなれ
ハムストリングスの肉ばなれ 簡易的な重症度分類

ハムストリングス(太ももの後面)の場合

大腿四頭筋の肉ばなれ
大腿四頭筋の肉ばなれ 簡易的な重症度分類

大腿四頭筋(太ももの前面)の場合

ふくらはぎの肉ばなれ
ふくらはぎの肉ばなれ 簡易的な重症度分類

ふくらはぎの場合

重症:膝を曲げてもストレッチで痛む

中等度:膝を曲げていれば痛みが軽い

軽症:ストレッチで痛くない

筋断裂・筋損傷(肉ばなれ)の治療法

  1. 患部の安静
  2. 患部の圧迫固定(弾性包帯やサポーター)
  3. 痛みの強い場合はアイシング
  4. 超音波療法ちょうおんぱりょうほう
  5. テーピング
  6. ストレッチ(復帰に向けて)
  7. 筋力トレーニング(復帰に向けて)
  8. Ⅲ度損傷(重症)は手術

筋断裂(肉ばなれ)のテーピング

肉ばなれテーピング
太もも後面の筋断裂(肉ばなれ)対するテーピング法

内出血・はれに対するエデマテーピング

キネシオテープという特殊な素材のテープを使い、リンパの流れを改善します。

これにより内出血やはれを早期に改善します。

上腕二頭筋損傷テーピング
皮下血腫や腫れがある場合のテーピング法(リンパコレクションテーピング)

筋断裂・筋損傷(肉ばなれ)に対する超音波療法

筋損傷の程度や深さにより刺激の強さや頻度を調整しながら、超音波により患部に直接刺激を与えます。患部の柔軟性を改善、血流の改善により早期治癒が期待できます。

また筋肉の過剰な緊張を抑制できるため、痛みの軽減にも効果的です。急性期には微細振動により炎症の治癒を早め、腫脹の軽減効果もあります。

超音波治療
超音波治療

復帰までの期間

損傷した部分が再生されるのには、おおよそ次の期間がかかります。

  1. 軽度 ⇒ 2週間程度
  2. 中度 ⇒ 1~2ヶ月程度
  3. 重度 ⇒ 3ヶ月以上

競技への完全復帰の目安は

  • 筋肉を伸ばしたときの痛み(伸張痛)がなくなる
  • 押さえたときの痛み(圧痛)がなくなる
  • 抵抗が加わったときの痛みがなくなる

ことが必要条件です。

また、それぞれの競技に応じて、俊敏性や持久力の十分な回復が得られていることも必要です。
ケガをしていない側の80〜90%まで筋力が回復すれば、競技復帰が可能となります。

筋断裂・筋損傷(肉離れ)を起こしやすい要因

筋断裂・筋損傷(肉離れ)になりやすい要因として次のものが挙げられます。

  • 既往歴
  • 年齢
  • 筋肉の長さ
  • 伸張性筋収縮の出力
  • 負荷のマネジメント

この中でもリハビリテーションでアプローチできる要因は筋肉の長さ、伸張性筋収縮の出力、負荷のマネジメントです。その中でもエキセントリック・トレーニング(伸張性筋収縮に重点を置いたトレーニング)が負傷リスクを減少させるといわれています。

筋断裂・筋損傷(肉離れ)に対するリハビリテーション

一般的なリハビリテーション

上記が一般的なリハビリテーションのプロトコルです。痛みをモニタリングしながら、損傷部位への負荷を徐々に上げていきます。アイソメトリックのエクササイズが最初に始まり、痛みが無くなり歩行が正常になったら関節運動を伴ったアイソトニックのエクササイズを開始します。さらにSLRなど可動域が70%まで、ランニングスピードが最高速度の70%まで回復した段階で負荷の大きいアイソトニック・エクササイズやエキセントリック・エクササイズが開始されます。

このプロトコルの問題点としては、筋肉の修復に有効な伸張性筋収縮(エキセントリック)トレーニングがリハビリテーションの終盤になって導入されてしまうことです。アイソメトリックで痛みがなくなるまで、アイソトニックのエクササイズが開始できないため、負荷の高い伸張性筋収縮トレーニングの導入が遅れてしまいます。

ACUプロトコルでのリハビリテーション

一般的なリハビリテーションプロトコルに対し、ACUプロトコルでは、アイソメトリックのエクササイズ、アイソトニックのエクササイズ(ショート・ミッド・ロングレンジ)、エクセントリック・トレーニングをリハビリテーション開始直後から同時に行なっていきます。

両足で痛みなく行えるようになったら、片足で行います。

ACUプロトコルでのリハビリテーションでは、疼痛許容アプローチを行います。2/10程度の痛みであれば安全にエクササイズを進めてよいという判断になります。最初は痛みがあってもエクササイズを続けていくうちに痛みがなくなればリハビリテーションを継続しても構いません。両足でのエクササイズで痛みがなくなり、可動域全域でエクササイズを遂行できるようになったら片足でのエクササイズに進みます。

ランニング・プログレッション

どのように走るスピードを段階的に上げていくかというのは、筋断裂・筋損傷(肉離れ)のリハビリテーションを進める上で大変重要です。

ランニング・プログレッションは全9ステージから構成され、1セッション50m×9reps行います。同じステージで3回目的のスピードで走行できれば次のステージへ進みます・1日最大で3ステージ進むことができます。

ウォークは通常歩行、ジョグは最高速度の50%以下のスピード、ランは70%以下のスピード、スプリントは90%以下のスピードの走行をいいます。