筋膜を治療するべき3つの理由
筋膜は“感覚”をつかさどるセンサー
「筋膜」を単なる体の膜ではなく、身体の動きやバランスを感じ取り、調整するセンサーのような働きを持つ組織と考えられています。
筋膜には、動きや痛みを感知する神経がたくさんあり、筋肉や内臓以上に体全体の調子に大きく関わっています。

筋膜の“癒着”や“滑りの悪さ”が、姿勢や痛みに影響
筋膜に癒着や滑りの悪さが起こると、筋肉がうまく動かなくなったり、関節に余計な負担がかかったりして、姿勢が崩れたり、痛みの原因になることがあります。

筋膜は全身でつながっている。痛みの原因は思わぬ場所にあることも
筋膜は全身を覆うネットのような構造になっており、ある部分の筋膜の硬さが別の場所に影響を与えることがあります。
たとえば、「腰が痛いと思ったら、実は過去にねんざした足首の筋膜が原因だった」というケースもあります。
“痛い場所=原因”とは限らないのが筋膜の特徴です。
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筋膜の“滑りの悪さ”が不調の原因に
筋膜が問題を起こす理由のひとつに、「高密度化(densification)」という状態があります。これは、筋膜の中にあるヒアルロン酸という滑りを助ける成分が、ストレスや姿勢の崩れ、昔のケガなどの影響でドロドロに固まり、筋膜どうしがくっついて滑らなくなってしまうことを意味します。
この滑りの悪さによって、“体の動きや位置を感じるセンサー”の働きも乱れてしまい、動きが不自然になったり、関節に負担がかかったりして、痛みの原因になることがあります。

筋膜は全身でつながっている。痛みの原因は思わぬ場所にあることも
筋膜には体のエリアごとに「力が集中するポイント」や「筋膜の異常が生じやすいポイント」など共通点が存在します。それらをつなぐ“筋膜のライン”が全身に張り巡らされていると考えられています。
筋膜リリースを行うことで硬さや癒着があるラインを探し、治療することで全身のバランスを整えます。

筋膜リリースの流れ
筋膜の施術は、まず丁寧なカウンセリングから始まります。
・これまでのケガや手術の経験
・姿勢のクセや生活習慣
・痛みが出る場所やタイミング
・症状が悪化・改善する動きや姿勢
・お腹の不調や睡眠の質など、全身の状態
これらの情報をしっかり聞き取り、「なぜ今、痛みが出ているのか」を分析していきます。肩が痛い方であれば肩の動きはもちろん、過去に手首をケガしていれば手首や腕の動きも確認することがあります。
実際に体に触れて、筋膜の状態を細かく確認していきます。
筋膜の施術では、触って感じる情報がとても大切です。
・表面の皮膚の温度や湿り気、柔らかさ
・筋膜の奥の方の「硬さ」や「滑りの悪さ」
・指で押したときの痛みの有無や感触
特に、筋膜が“硬くなっている”場所(=高密度化)を見つけ出すことが施術のカギになります。
金属できた専用のツールを使って、体の筋肉や皮膚のすぐ下にある「浅筋膜」にやさしくアプローチします。道具を使うことで、手だけでは難しい細かい部分まで丁寧にケアできます。強く押すのではなく、軽い圧で表面だけを刺激します。クリームを使いスムーズに動かしながら行います。
筋膜の硬くなった部分を、指や肘でゆっくりと圧をかけながら摩擦します。この摩擦によって、筋膜の中のヒアルロン酸が分解され、筋膜がスムーズに滑るようになります。1ヶ所あたり3〜5分程度、しっかりと深く摩擦します。施術中は痛みがありますが、多くの方が「あとでスッキリした」と実感されます。
検査の結果をもとに、別の筋膜ラインを治療したり、同じラインの別のポイントを治療したりします。1回の施術でも変化を実感しやすいですが、体の癖や昔のケガが根深い人は数回かけて調整していくこともあります。
浅筋膜と深筋膜
筋膜には、大きく分けて「浅筋膜」と「深筋膜」の2種類があります。
浅筋膜とは
- 皮膚のすぐ下にある柔らかい膜(主に脂肪や血管・神経と一緒に存在)
- 皮膚の動きや弾力、血流・リンパの流れに関わっている
- 温度調節や外部からの刺激を感じ取る
浅筋膜にトラブルがあると・・・
- 軽い痛みや違和感
- つっぱり感、むくみ
- 皮膚の可動性低下
深筋膜とは
- 筋肉や骨の周りを包む、強くて丈夫な膜
- 姿勢の保持に関わる
- 筋肉を支え、関節の安定にも関係する
深筋膜にトラブルがあると・・・
- 慢性的な腰痛・肩こり
- 関節の動きが悪い、筋肉が硬くて動きにくい
- 長年の筋肉の張りや痛み
- 原因不明の痛みやしびれ

筋膜リリースの効果
① 慢性的な痛みに
長年続いている腰痛・肩こり・膝の痛みなどに悩む方には、筋膜リリースが効果的です。筋膜の“癒着”や“滑りの悪さ”を取りのぞくことで、根本的な原因にアプローチできます。

② アスリートやスポーツ愛好家にも
筋膜がよく動くようになると、関節の動きが広がり、パフォーマンスの向上(ジャンプ力やスプリント力)にもつながります。試合後の疲労回復や筋肉痛の軽減にも使われています。

③ 手術後・ケガのあと
手術の傷あとや長期間の固定によって、筋膜が硬くなって動かしにくくなることがあります。癒着をゆるめることで、関節の動きがなめらかになり、痛みも軽くなる可能性があります。
例:開腹手術のあとに腰痛が出た方が、お腹の筋膜を整えることで痛みが改善したケースもあります。

④ 姿勢の改善
筋膜のバランスを整えることで、猫背や反り腰などの姿勢が改善されることがあります。これは関節の位置や動きを調整しているセンサーが筋膜に存在するからです。

よくある質問
- Q浅筋膜と深筋膜の施術方法はどう違うのですか?
- A
浅筋膜には金属ツールを使った「IASTM」でやさしく滑走性を改善します。リンパや血液の流れにアプローチしむくみの軽減にもつながります。
深筋膜には肘や指で深部にしっかりアプローチします。慢性的な腰痛や肩こりの背景には、この深筋膜の硬さや癒着が関係している場合も多くあります。
浅筋膜と深筋膜はどちらも私たちの体にとって大切な組織ですが、その構造や働き、そして関わる症状には大きな違いがあります。筋膜の違いを理解し、それぞれに合ったアプローチを行うことが、効果的なケアにつながります。
- Q私の症状は浅筋膜と深筋膜のどちらで改善しますか?
- A
やさしく広範囲に緩める方法が向いているのが浅筋膜、深くしっかりと圧をかけてゆっくり摩擦を加える方法が有効なのが深筋膜です。むくみや表面的なつっぱり感、ケガの後の腫れなどに有効なのは浅筋膜です。慢性的な腰痛や肩こりには、まず始めに浅筋膜への施術を行い表層を緩めてから深層の筋膜の滑走性を取り除くアプローチを行うとよいでしょう。
- Q施術は痛いですか?
- A
ツールを使った浅筋膜への施術はほとんど痛みは感じず、心地よい施術が特徴です。一方、深筋膜には痛みを感じ取る自由神経終末が豊富にあるため、施術には痛みを伴います。しかし、多くの方が「あとでスッキリした」と実感されます。
- Q施術後に痛みは残りますか?
- A
浅筋膜への施術は痛みは残りません。
深筋膜への施術は、深層にある「癒着」や「滑走障害」を強めの圧で直接刺激します。
この部位はもともと痛覚神経が豊富に分布しているため、施術時の摩擦や圧迫によって筋膜組織内では血流が増加し、微小な炎症反応が起こります。
これは癒着をはがし、組織を再生させるための正常な生理反応であり、筋肉痛のような痛みとして数日間残ります。
- Qどのような疾患に効果がありますか?
- A
次のような症状に効果が期待できます。
筋骨格系の慢性痛
- 慢性腰痛(非特異的腰痛、筋・筋膜性腰痛)
- 頸部痛・肩こり(頸筋膜の癒着による可動域制限)
- 膝関節痛(特に関節外からの筋膜性の影響)
- 股関節周囲痛、臀部痛(筋膜連鎖による影響)
運動制限・可動域低下
- 股関節や肩関節の硬さ・動きにくさ
- 手術後の瘢痕部周囲の癒着による可動域制限
- 外傷後の関節拘縮(捻挫・骨折後など)
スポーツ障害
- ランナー膝(腸脛靭帯炎)
- 足底筋膜炎
- ハムストリングスや大腿部の肉ばなれ後の違和感
- スポーツ後の筋肉疲労・リカバリー
- パフォーマンス低下(筋膜の滑走不全による連動性低下)
全身的な痛み・自律神経症状
- 頭痛(筋膜性緊張型頭痛)
- 姿勢不良に起因する全身の不調
- 慢性的な疲労・倦怠感
神経症状の補助的対応
- 背部・頸部の筋膜の緊張によるしびれ・違和感の軽減
- 坐骨神経痛様症状(梨状筋や腰部の筋膜の滑走障害による)