足のかかと部分にある脂肪（踵骨脂肪体）が薄くなることでかかとの痛みが生じる疾患です。長時間の運動やその他の要因により、脂肪組織が萎縮したり脂肪体が弾力性を失うことでかかとの痛みが生じ、日常生活に支障をきたすことがあります。

かかとの痛みの原因として足底腱膜炎に次いで２番目に多い疾患です。

踵骨下脂肪体は脂肪組織と厚い弾性のある筋線維で構成されており、歩いたり走ったり跳んだりするときに衝撃を吸収し、かかとを保護する役割を果たしています。健常な脂肪体の厚さは1〜２cm、平均して18mmといわれています。加齢や体重増加、繰り返しの衝撃などにより、この脂肪の厚みがだんだんと失われていきます。

・加齢：年齢とともにかかとの脂肪組織と弾力性が減少します。
・体重の増加：体重の増加によりかかとへの圧力が増加し、弾力性とクッション性の失われます。
・かかとの外傷：直接的な打撃によるかかとの損傷
・歩行の不均衡：歩き方（足の接地の仕方や体重の分散）が脂肪体の摩耗に影響を与えます。
・足の構造：足のアーチと直立姿勢のアライメント、および異常な歩行が脂肪体に圧力を加えます。
・不適切な靴：かかとへの衝撃を適切に吸収しない靴を履くと、かかとが歩行時の衝撃をすべて受けてしまいます。
・硬い路面：コンクリートやタイルのような硬い表面を裸足で歩いたり走ったりすると、脂肪体に対する衝撃が増します。
・繰り返しの活動：かかとが繰り返し地面に衝突する動作や、長時間立つことで、かかとの摩耗と炎症が引き起こされます。バスケットボール、テニス、バレーボール、ランニング、体操などがあります。
・ステロイド注射：かかとへの繰り返しのステロイド注射は、脂肪体を傷めるリスクを増加させます。

・歩く、立つ、走るときにかかとの中央に感じる深い痛み、打撲のような痛み
・かかとの中央を強く押すと痛い
・長時間立つ、歩く、または高衝撃の運動や活動（ジャンプ、ランニング、体操、バスケットボール）をしているとき、または裸足で硬い表面（木の床、コンクリート、セラミックタイル）を歩くときに痛みが増す
・軽度の場合は症状がないか、裸足で硬い表面を歩くときや走るときやかかとの中央を押すときに時折痛みを感じることがある。

かかとの痛みといえば「足底腱膜炎」が有名ですが、有痛性踵パッドの発生年齢は足底腱膜炎よりも高めです。足底腱膜炎は足底腱膜のかかとの骨に付着する部分が痛いのに対し、有痛性踵パッドは踵部脂肪体の全周に痛みがあることが特徴です。

脂肪体の弾力性も低下していることが多いため、有痛性踵パッドではかかと部分が薄く感じられます。しかし、中には脂肪体の弾力性も変わらず、発症年齢もよく似ていて見分けがつきにくいこともあります。

・痛みがかかとの中心に近い
・硬い路面を歩くと痛みが悪化する
・裸足で歩くと痛みが悪化する
・かかとの中央を指で押すことで痛みが再現される
・かかとの脂肪体の摩耗や損傷が原因

・かかとの端（つま先側）や足のアーチに痛みがある
・痛みは鋭く、鈍い痛みまたはうずきとして感じられる
・朝の一歩目がもっとも痛い
・休息と適切なストレッチで一時的に改善する
・足底腱膜の損傷や劣化が原因

内反足（かかとが外側に傾いた足）または外反足（かかとが内側に傾いた足）があると、かかとが地面に不適切に接地します。これにより、かかとの脂肪体が特定の場所で薄くなったり炎症を起こしたりすることがあります。

かかとの痛みの感覚、痛みを感じるタイミング、痛みの原因、痛みの発症時期、休息による痛みの軽減の有無などの詳細に調べます。
かかとの中央を押して痛みが再現されると有痛性踵パッドが疑われます。ただしかかとの痛みを訴える疾患には、他にも足底腱膜炎、踵骨疲労骨折、踵骨棘などいくつか存在するため場合によってはMRIやエコー検査が必要になることもあります。

・かかとに衝撃がかかるのスポーツ（ランニング、バスケットボール、体操など）の時間を制限する
・減量
・脂肪体を保護するテーピング
・ヒールカップ
・体外衝撃波治療
・超音波治療
・ラジオ波治療
・IASTM（器具を用いた軟部組織モビライゼーション）

・クッションとサポートのある靴を履く
・かかとに衝撃がかかる運動には運動靴を着用する
・ハイヒールの靴は避ける
・硬い路面（タイル、木の床、セメント）を裸足で歩くことを避ける
・靴底が摩耗していたり、クッション性が失われた靴は交換する

ラジオ波による温熱療法とは、300kHz〜６MHzの高周波を利用して体の深い部分を温める治療法です。これにより体内の組織が温められ、血行が良くなります。血行が改善されると、損傷した組織に酸素や栄養が運ばれ、自然治癒力を促進します。

温熱によって新しいコラーゲンの生成が促されることで、かかとの脂肪体の弾力性が回復しやすくなります。ラジオ波による温熱療法は、有痛性踵パッドの痛みを和らげ症状の改善を助ける治療法として有効です。

拡散型体外衝撃波は神経の血流を良くし組織の修復を促します。痛みを引き起こしている神経の炎症を軽減し、回復を早めることが期待できます。
この治療は、痛みの原因となる組織を直接刺激し、体の自然治癒力を引き出すのに役立ちます。

有痛性踵パッドに対して、IASTM（Instrument Assisted Soft Tissue Mobilization: 器具を用いた軟部組織モビライゼーション）が効果的だとされています。IASTMは、特別な器具を使用して筋肉や結合組織（軟部組織）を優しくこするように施術する治療法です。

・治癒過程の刺激：IASTMは、微小な損傷を人工的に引き起こすことで、体の自然な治癒反応を促進します。これにより脂肪体の損傷した部分に新しいコラーゲンが生成され、弾力性と強度が回復します。

・血行促進と酸素供給の向上：IASTMによってかかとの軟部組織が適度に刺激されると、血流が増加し患部への酸素と栄養供給が改善されます。これにより組織の回復が早まり、痛みの原因となる炎症が軽減されます。

・硬くなった組織の柔軟性の回復：IASTMは長時間の使用や負荷によって硬くなった脂肪体をほぐし、柔軟性を回復させます。これにより、かかとの衝撃吸収機能が改善され、痛みを軽減する効果があります。

有痛性踵パッドに対するテーピングの効果は以下の通りです。

・負荷の分散：テーピングを使うことで、かかとにかかる力が分散され過剰な負担を避けることができます。
・かかとへのサポートとクッション効果の向上：テーピングを行うことで、かかとの脂肪体を正しい位置に固定し、圧力がかかる部分をサポートします。これにより脂肪体がしっかりとクッションとして機能し、痛みを軽減することができます。
・衝撃吸収の補助：テーピングはかかとの周りに追加のクッションを作るような役割を果たします。これによって、硬い地面を歩く際や運動時にかかる衝撃を緩和し、かかとにかかる負担を減らします。
・炎症の軽減：テーピングによりかかと周囲の組織が安定し、過度な動きを抑えることで、痛みを引き起こす炎症を抑制します。

かかとを囲むようにアンカーテープを巻きます。使用するテープは18mmまたは25mmの非伸縮ホワイトテープです。

水平サポートと馬蹄状テープを繰り返し貼っていき、かかとの脂肪を中央に向かって集めていきます。

面で押さえるように貼るのではなく、脂肪体を持ち上げるように貼ります。

馬蹄状テープは、かかとの脂肪を中央に向かって押し下げるように貼っていきます。

かかとの中央にしわが寄るように貼ります。

水平サポートと馬蹄状テープを少しずつズラしながら何度も繰り返します。かかとの脂肪体を周りから中央に寄せ集めてくるイメージです。

痛みのあるところはテープを貼らずに空けておきます。

最後にホワイトテープが剥がれないようにソフト伸縮テープ50mmでカバーリングします。フィギュアエイト（8の字）を半分ずつズラしながら足首〜かかとを覆っていきます。

カバーリングも同様に痛みのあるところはテープを押し付けずに乗せるだけのイメージで貼ります。

・かかとへのサポートと安定性の向上：ヒールカップはかかとを包み込むようにデザインされているため、歩いたり走ったりする際にかかとを安定させます。これによりかかとの脂肪体が正しい位置に保たれ、余分な動きが抑えられて痛みを減らすことができます。
・クッション効果の強化：ヒールカップは柔らかい素材でできており、かかとをクッションで保護します。特に硬い地面を歩く際の痛みを和らげる効果があります。

・圧力の分散：ヒールカップを使用することで、体重がかかとの全体に均等に分散されるようになります。

このように、ヒールカップはかかとの痛みを和らげ、日常生活や運動中の快痛みに非常に効果的な方法です。