
遠位脛腓靱帯損傷について(原因と症状)
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遠位脛腓靱帯損傷について(原因と症状)
遠位脛腓靱帯の役割
足首のすぐ上には、「脛骨(すねの骨)」と「腓骨(外くるぶし側の骨)」をつなぐ靱帯の集まりがあります。
これを遠位脛腓靱帯と呼び、主に次の組織で構成されています。
- 前下脛腓靱帯(AITFL)
- 後下脛腓靱帯(PITFL)
- 骨間膜・骨間靱帯
これらの靱帯は、脛骨と腓骨が適切な位置関係を保ちながら動けるように支える役割を持っています。
特にこの部分は、歩く・走る・ジャンプするといった動作の中で、足首にかかる衝撃を受け止めながら、必要な動きを許容するという重要な働きをしています。

遠位脛腓関節とは?
下腿には脛骨と腓骨という2本の骨があります。
脛骨は体重を支える太くて内側の骨で、腓骨はその外側に位置する細い骨です。腓骨自体は体重をほとんど支えませんが、足首や下腿の安定性を保つうえで重要な役割を果たしています。
この2本の骨は、
- 膝に近い「近位脛腓関節」
- 足首に近い「遠位脛腓関節」
- その間をつなぐ骨間膜
によって連結されています。
遠位脛腓関節とは、脛骨と腓骨が足首のすぐ上で連結している関節で、靱帯によって強く結ばれ、足関節(距腿関節)の安定性を保つための土台となっています。
この関節は、曲げ伸ばしをする関節ではなく、靱帯によって骨同士が強く結びつけられる「靱帯結合(シンデスモーシス)」という特殊な構造をしています。このように、下腿の2本の骨は単に並んでいるだけでなく、関節や靱帯によって連携しながら足首と膝の動きを支えているのです。

遠位脛腓靱帯損傷とは
脛骨と腓骨をつなぐ靱帯(遠位脛腓靭帯)が傷つくケガのことです。この靱帯は、足首の骨同士を正しい位置に保ち、体重がかかったときも足関節がグラつかないように安定させる重要な役割を担っています。この靭帯を損傷することで足関節の安定性が低下します。
一般的な「足首の捻挫」より少し高い位置に痛みが出るため、「ハイアンクル・スプレイン」とも呼ばれます。

遠位脛腓靱帯損傷の症状
① 痛みの特徴
- 足関節の前外側〜くるぶしより上に痛みが出る
- 一般的な足関節捻挫より痛みの位置が高い
- 以下の動きで痛みが強くなる
- 足関節の背屈
- 踏み込み・蹴り出し動作
- 外旋(足を外にひねる動き)

② 腫れ・内出血
- 足関節周囲〜下腿にかけて広がる腫れ
- 腓骨筋筋腹に沿った腫れが目立つことがある
- 前方の皮下出血を伴うことが多い
- 内出血が数日遅れて下腿方向へ広がることもある

③ 歩行・荷重の障害
- 荷重時の痛みが強い(荷重困難)
- 重度では歩行困難
- つま先立ちができない
- 痛みを避けるためかかとを浮かせた歩行になることがある

④ 可動域制限・違和感
- 足関節の背屈制限
- 動かすと詰まり感、不安定感、ズレる感じ
- 不整地で足が抜けるような不安感

遠位脛腓靭帯損傷の原因
① 足が地面に固定された状態で下腿が回旋する
足が地面にしっかり固定された状態でそのまま体や下腿だけが回旋されると、脛骨と腓骨の間が内側から押し広げられ損傷します。

② 足部外旋+足関節背屈した状態で強い荷重
足先が外を向いた状態でしゃがむ、踏み込む、ジャンプ着地など足関節に背屈が強制されることでも発生します。
距骨は前方が広い形をしているため、背屈すると楔のように入り込み、脛骨と腓骨間を物理的に開こうとする力が発生します。

③ 足関節に強い内反が強制されたとき
強い内反(内側へのひねり)が強制された場合でも、遠位脛腓靭帯損傷が生じる可能性があります。
強い内反ストレスが加わると、距骨は内反しながらも距腿関節内で回旋運動を伴い、同時に腓骨に対して外方・後方への力が伝わります。特に衝撃が大きい場合や、体重が強くかかった状態では、距骨が脛骨と腓骨の間にくさびのように入り込む動きが生じます。
このとき、脛骨と腓骨の間には離開しようとする力が発生し、遠位脛腓靱帯に過度なストレスが加わります。内反動作であっても、遠位脛腓靱帯が伸ばされ、損傷に至ることがあります。

典型的な受傷パターン
- 急に方向転換したとき
- ジャンプの着地でバランスを崩したとき
- タックルや接触で足が固定されたまま体がひねられたとき
このような場面で、すねの骨と外くるぶしの骨が無理に広げられる力がかかり、靱帯が損傷します。

遠位脛腓靭帯損傷のグレード
グレード1(軽度)
- 不安定性なし
- 前下脛腓靱帯(AITFL)のみが損傷
- 骨と骨の間はしっかり保たれている
- レントゲンやエコーでも隙間の広がりなし
- 体重をかけると痛むが、歩行は可能
グレード2(中等度)
- ある程度の不安定性あり
- AITFLが完全断裂、または骨間膜まで損傷
- 腫れと痛みが強く、歩行が困難なこともある
- 足を外にひねると、骨の隙間が広がる
グレード3(重度)
- 明らかな不安定性あり
- 骨間膜や後下脛腓靱帯(PITFL)まで損傷
- 力を加えなくても骨の隙間が常に広がっている
- 足関節の構造自体が崩れている
- 骨折を伴うことも多い

遠位脛腓靭帯損傷の検査
External rotation test(外旋ストレステスト)
- 被検者を座位で膝関節90°屈曲位とする。
- 検者は下腿近位部を固定し、足関節を中間位に保ったまま足部を外旋させる。
- 遠位脛腓靱帯損傷がある場合、前下脛腓靱帯(AITFL)部に疼痛が誘発される。

Cotton test
- 検者は下腿近位部を固定し、足部を外方へ移動させる。
- 遠位脛腓靱帯損傷がある場合、距骨が外方へ移動し、不安定感や疼痛を認める。

Squeeze test
- 検者は下腿中央〜近位部で脛骨と腓骨を両手で挟み込むように圧迫する。
- 遠位脛腓靱帯損傷がある場合、足関節周囲の脛腓靱帯部(特にAITFL)に疼痛が誘発される。

遠位脛腓靭帯損傷の治療法
遠位脛腓靱帯損傷の治療方針を決定するうえで、最も重要なポイントは「不安定性の有無」です。
治療の目的は、脛骨と腓骨の正しい位置関係を維持し、足関節の安定性を回復させることにあります。
もし治療が遅れると、慢性的な不安定性や痛みが残存し、将来的には変形性足関節症へ進行するリスクが高まります。
| グレード | 不安定性 | 治療の基本 |
|---|---|---|
| グレード1 | なし | 保存治療 |
| グレード2 | ある程度 | 保存 or 手術 |
| グレード3 | 明らか | 手術治療 |
保存治療
適応
- Grade 1
- Grade 2で明らかな関節の離開がなく、安定性が保たれている場合
急性期
- 安静
- アイシング
- 圧迫・挙上
固定
- CAMブーツ(ムーンブーツ)やギプス
- 足関節は軽度底屈位が基本
固定期間目安
- Grade 1:1〜2週
- Grade 2:3〜6週
荷重管理:痛みに応じて非荷重 → 部分荷重 → 全荷重へ段階的に
手術治療
適応
- Grade3
- Grade2でも明らかな不安定性
- レントゲンストレス撮影で関節が開大
- 早期の競技復帰を強く希望する場合
- 骨折合併例
- 陳旧例で不安定性が残る場合

遠位脛腓靭帯損傷のテーピング
- 足首よりやや上側にカバーロールを1周巻きます。

- 脛骨と腓骨を内側へ圧迫し、近づけることが目的です。
- 足首全体を一周させるのではなく、足首より少し上に硬性テープを強めに貼ります。

- テープをしっかり引っ張りながら脛骨の内側でテープを止めます。
- 必要に応じて2~3本の硬性テープを貼ります。

足首のねんざとの違い
① 構造の違い
距腿関節は、脛骨と腓骨で形成される「ほぞ穴構造(モーティス)」の中に距骨がはまり込むことで、骨そのものによる高い安定性を有しています。
一方、遠位脛腓関節(脛腓靱帯結合)は骨による固定性が乏しく、前下脛腓靱帯や後下脛腓靱帯、骨間靱帯などの遠位脛腓靱帯によって結合・支持されることで安定性が保たれている構造です。
そのため、遠位脛腓靱帯が損傷すると脛骨と腓骨の位置関係が破綻し、足関節モーティスの安定性が失われます。

② 損傷する部位の違い
一般的な足首のねんざ(足関節捻挫)では、主に足首の外側にある前距腓靱帯を中心とした外側靱帯が損傷します。これらの靱帯は、足関節(距腿関節)の動きを制御し、特に内がえし動作に対して関節を安定させる役割を担っています。
一方、遠位脛腓靭帯損傷(ハイアンクル・スプレイン)では、前下脛腓靱帯(AITFL)をはじめとする遠位脛腓靱帯結合の靱帯が損傷します。これらの靱帯は、脛骨と腓骨をしっかりと結びつけ、足関節の土台となる構造を安定させる役割があります。

③ 受傷肢位の違い
一般的な足関節捻挫は、つま先が下を向いた状態で足首を内側にひねったときに起こることが多いケガです。この場合、足首の外側にある靱帯(前距腓靱帯など)が傷つきます。段差で踏み外したり、スポーツ中の着地でバランスを崩したときに起こりやすいのが特徴です。
一方、ハイアンクル・スプレイン(遠位脛腓靭帯損傷)は、足首に体重が乗った状態で、足が強く外にねじられる力が加わったときに起こりやすいケガです。足首の骨同士をつないでいる部分が引き離されてしまい、通常の捻挫とは傷つく場所が異なります。注意が必要なのは、強く足首を内側にひねった場合(いわゆる足首のねんざと同じ状況)でもハイアンクル・スプレインが起こることがあるという点です。そのため、「いつもの捻挫だろう」と思っていても、実はハイアンクル・スプレインが隠れていることがあります。

④ 痛みの違い
一般的な足関節捻挫では、足首の外側に痛みと腫れが出るのが特徴です。特に、外くるぶしの前や下あたりが痛みやすく、内出血がはっきり出ることも多く見られます。腫れも足首の周囲に集中し、「足首が腫れている」と自覚しやすいのが特徴です。
一方、ハイアンクルスプレインでは、痛みの場所が足首よりも少し上に出ることが多くなります。外くるぶしのすぐ上から、すねに向かって痛みが広がるように感じるのが特徴で、「足首そのものより上が痛い」と訴えるケースも少なくありません。
また、腫れについても違いがあります。一般的な足関節捻挫では足首周囲が目立って腫れますが、ハイアンクルスプレインでは腫れが目立ちにくいことも多く、足首だけを見ると軽い捻挫に見えてしまうことがあります。その一方で、体重をかけたときの痛みが強い、足を外に回旋する動きで強い痛みが出るといった症状が目立ちます。

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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、マイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了