
膝内側側副靱帯損傷について(原因と症状)
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膝内側側副靱帯損傷について(原因と症状)
膝内側側副靱帯損傷とは
膝内側側副靱帯(medial collateral ligament:MCL)損傷は、膝の靱帯損傷の中で最も発症頻度が高いケガです。

受傷のきっかけ(受傷機転)が明確であることが多く、早期から適切に処置を行えば、ほとんどのケースで手術をせずに保存療法で回復し、スポーツや日常生活に復帰できます。MCLは内側半月板後節動脈および内側下膝動脈から豊富な血流供給を受けるため、比較的治癒しやすい靱帯でもあります。
MCL損傷は単独で起こる場合もあれば、前十字靱帯(ACL)など他の靱帯損傷を合併することもあります。
また、損傷する部位(大腿骨側・脛骨側など)によって治療方針が異なるため、正確な評価が非常に重要です。

MCLの役割
MCLは膝内側の安定性を保つ重要な靱帯で、膝の外反(外側へのぐらつき)を60〜80%抑制する役割を担っています。
また、脛骨の外旋(下腿のねじれ)もコントロールします。

MCLは大きく「浅層」と「深層」に分けられます。
- 浅層
- 大腿骨内側上顆のやや後方から起始し、前下方に走る前縦走線維(AOL)と、後下方へ向かう後縦走線維(POL)に分かれます。
- AOLは外反に対する主な制御機構で、屈伸運動の全可動域で一定の緊張を保ちます。

- 深層
- 内側半月板と強く結合し、半月板の安定性を保つ役割を担っています。
- 浅層と深層の間には滑液包があり、膝の屈伸運動時に靱帯の滑走を助けます。

MCL損傷の原因
①膝外側からの直接的な衝撃(直達外力)

②下腿や足部内側への外力による過度な外反強制

③急なターンやカッティング動作に伴う膝の捻挫

たとえばラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツでのタックル、サッカーのシュートブロックやボールの蹴り合いなど、外反・外旋の力が強制的に加わることでMCLが損傷します。
特に重度(Ⅲ度損傷)の場合はACL損傷の合併も多く、場合によっては後十字靱帯(PCL)や関節包まで損傷が及ぶこともあります。
MCL損傷の症状
受傷直後(急性期)には、
- 強い痛み
- 腫れ
- 熱感
などの炎症症状が現れます。重症度が高いほど炎症は強く、痛みのために可動域制限が起こることもあります。1〜2週間ほどで腫れや熱感は軽減しますが、筋力低下や関節可動域制限が残る場合があります。
受傷の際に「ポップ音(断裂音)」を感じることもあります。
歩行時に痛みを避けるための跛行(びっこを引いたような歩き方)が見られることもありますが、軽度であれば歩行可能な場合もあります。

痛みの部位
痛みの部位は主に
- 大腿骨内側上顆(起始部)
- 内側関節裂隙周囲
- 脛骨内側面(停止部)
の順で多く、特に脛骨側損傷は回復が遅れやすい傾向があります。

MCL損傷の検査
MCL損傷の評価には「外反ストレステスト」が用いられます。このテストは、MCLの損傷程度を確認するための重要な検査です。
検査を行う際は、以下のように正しい姿勢と手の位置が大切です。
- 大腿骨側の手で膝関節を下からしっかり支える。
- 脛骨側の手で足部を床面を利用して安定させるように固定する。
- その状態で、前額面上で膝に外反方向のストレスを加える。
このとき、踵を軽く床につけておくことで、股関節が回旋してしまうのを防ぐことができます。また、外反ストレスを加える際は、近位側と遠位側の両方に同時に力を加えることがポイントです。

MCL損傷の重症度分類
外反ストレステストが用いられます。
| 重症度 | 所見 | 特徴 |
|---|---|---|
| I度損傷 | 圧痛はあるが、外反不安定性がない | 軽度の靱帯損傷 |
| Ⅱ度損傷 | 屈曲30°で外反不安定性あり | 中等度損傷 |
| Ⅲ度損傷 | 伸展位および屈曲30°で外反不安定性あり | 完全断裂レベル。ACL合併の可能性高い |

MCL損傷の治療方針
MCLは関節外靱帯であり、関節内靱帯(ACLなど)に比べて自然治癒力が高いのが特徴です。
そのため、多くのケースでは保存療法(手術を行わない治療)で回復が可能です。
- I・Ⅱ度損傷(部分損傷):原則として保存療法を選択します。再受傷も少なく、予後は良好です。
- Ⅲ度損傷(完全断裂):保存療法を第一選択としますが、以下の場合は手術を検討します。
どの治療法でも共通して重要なのは、外反および外旋の肢位を避けることです。これは受傷直後から復帰後の再発予防まで、一貫して意識する必要があります。
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リハビリテーション
急性期(受傷直後〜炎症が落ち着くまで)
炎症症状(痛み・腫れ・熱感)が強く、歩行困難な場合もありますが、症状の強さと損傷の重症度は必ずしも一致しません。
痛みが少ないIII度損傷もあれば、炎症が強い軽度損傷もあるため、重症度ではなく症状を基準にリハビリを進めます。
基本方針
- 疼痛のない範囲での可動域エクササイズを早期に開始
→ コラーゲン線維の修復を促進し、拘縮や筋委縮を予防します。 - 長期固定(ギプスなど)は避ける
→ 修復を妨げ、可動域制限の原因になります。
痛みが強い場合はシーネ・装具で固定し、リハビリ時のみ外して運動を行います。


可動域エクササイズ
長座位で踵を滑らせながら膝を屈伸します。
痛みが出ない範囲で行い、外反・外旋ストレスをかけないことが重要です。
深屈曲・完全伸展はMCLへの負担が大きいため、初期は避けます。
筋力トレーニング
炎症期は過度な負荷を避けつつ、筋の再教育を目的に行います。
- クアドセッティング:大腿四頭筋の等尺性収縮練習(内側広筋を意識)
- SLR(ストレートレッグレイズ):膝を伸ばしたまま脚を上げる
- クォータースクワット:45°程度の屈曲位で行い、膝外反を避けて実施


片脚ヒップリフト
仰向けに寝て、片脚を持ち上げたまま、床についている足で体を支えながらお尻をゆっくり持ち上げます。お尻の筋肉や体幹を使い、股関節や腰を安定させる力を高めることが目的です。
片脚ヒップリフト+レッグサークル
仰向けに寝て片脚を上げ、お尻を持ち上げます。その姿勢を崩さないように注意しながら、空中に上げた脚でゆっくり円を描きます。お尻や体幹を安定させたまま脚を動かすことで、股関節まわりのコントロール力を高めます。


ヒップエクステンション
床にうつ伏せになり、片脚ずつゆっくり持ち上げます。脚を上げた位置で数秒間キープし、その後ゆっくり下ろします。腰を反らしすぎず、お尻に力が入っている感覚を意識することがポイントです。
サイドレイズ
横向きに寝たら、体が前後に倒れないよう姿勢を安定させ、上の脚を真横にゆっくり持ち上げます。脚が前に流れたり、体が後ろに傾いたりしないよう注意しましょう。股関節を真横に広げることで、お尻の横の筋肉を鍛えます。


クラムシェル
横向きに寝て、膝の下にゴムバンドを巻きます。両足はくっつけたまま、上側の膝だけをゆっくり持ち上げます。貝が開くような動きをイメージしてください。
このとき、骨盤が後ろに回ったり、体が倒れたりしない範囲で行うのがポイントです。大きく脚を開く必要はなく、小さな動きでも十分効果があります。
ヒップアダクション
横向きに寝たら、体が前後に倒れないよう姿勢を安定させ、上の脚を真横にゆっくり持ち上げます。脚が前に流れたり、体が後ろに傾いたりしないよう注意しましょう。股関節を真横に広げることで、お尻の横の筋肉を鍛えます。


スタンディングヒップアダクション
椅子に座り、内腿の間にボールをはさみます。
そのままボールをつぶすように力を入れたまま、ゆっくり立ち上がります。
立ち上がった後も力を抜かず、ボールを落とさないように注意しながら座ります。
回復期(炎症が落ち着き、可動域・筋力が改善する時期)
腫れや痛みがほとんどなくなり、外反ストレステストでの痛みや不安定性が軽減してきたら回復期に移行します。膝120°以上の屈曲がスムーズに得られ、大腿四頭筋の収縮が十分確認できれば、以下の運動を開始します。
- 自転車エルゴメーター
- サドルの高さを調整し、痛みが出ない範囲で可動域運動を促す。
- 痛みが出る場合は無理せず中止。
- ハーフスクワット(膝屈曲90°)
- つま先と膝を正面に向け、外反を避ける。
- 疼痛があれば屈曲角度を浅く調整。
- ジョギングやアジリティトレーニング
- 直線走から開始し、短時間・低強度で徐々に負荷を増加。
- 次にサイドステップ・クロスステップなどへ進み、外反・外旋位を避ける意識を徹底します。


ローディングエクササイズ
この運動は、痛めている側の膝に少しずつ体重をかけていく練習です。
膝が安定した状態で体重を支える力を高めることを目的としています。患側の脚を前にして片膝立ちになります。
その姿勢から、膝の位置を確認しながら、ゆっくり体重を前脚に乗せていきます。このとき、膝が内側に倒れない、膝がねじれないように注意しましょう。
スタンディング・ローディングエクササイズ
立った状態で、痛めている側の膝に体重をかける練習です。
歩行や日常動作での膝の安定性を高めることを目的としています。
前後に足を開き、患側の脚を前にします。その姿勢から、前足にゆっくり体重を乗せていきます。このとき、膝が内側に入らないように注意しながら行いましょう。

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ローディングエクササイズ(スタガードポジション)
足を前後に開き、体重の約9割を前足(患側)に乗せます。
片脚立ちに近い状態になるため、バランスとコントロールが必要です。
このとき、膝が内側に入らないように注意しながら姿勢を保ちます。
シングルレッグスタンス(レジステッドバンドあり)
片脚で立ったときに膝が内側に入らないようにコントロールする練習です。両足をそろえて肩幅程度に開いて立ち、膝の少し上にゴムバンドを巻きます。
その状態で患側の脚で体を支え、反対側の足を床から浮かせます。
バンドが膝を内側に引っ張る力に負けないように意識し、膝の位置をまっすぐ保つことがポイントです。
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ニーベンド・シングルレッグスタンス
目標物を前に置き、腰に手を当てて患側の脚で片脚立ちになります。
その姿勢を保ったまま、ゆっくり膝を曲げながら前に出します。
このとき、膝が内側に入らず、つま先の方向にまっすぐ動くことがポイントです。
バランスエクササイズ
BOSUの上に患側の足で片脚立ちになり、片手でスティックを持ちます。
スティックが地面と平行になるように意識しながら、姿勢を安定させます。膝や股関節、体幹を協調して使う練習になります。


バランスエクササイズ・ハーフニーリング
片膝立ちになり、前足の下にバランスクッションを置き、さらに後ろ足の膝の下にも別のバランスクッションを置きます。前足側の手でスティックを持ち、スティックが地面と平行になるよう意識しながら姿勢を保ちます。
このとき、前足に体重をかけすぎず、後ろ足にも体重を分けることがポイントです。
ドロップスクワット
両手を頭の上に高く上げた姿勢から、手を振り下ろすと同時に素早くハーフスクワットの姿勢までしゃがみます。
このとき、足首・膝・股関節が同時に曲がるよう意識しましょう。
スクワットの姿勢では、膝が内側に入らず、つま先の方向に向いていることがポイントです。
着地や切り返し動作の準備として、膝・股関節・足首を連動して使う練習になります。


ボックスジャンプ
ジャンプと着地の安定性を高めるトレーニングです。下半身の力と、膝・股関節・足首を連動させる動きを身につけます。
20〜30cmのボックスの前に立ち、ジャンプしてボックスの上に飛び乗ります。着地の瞬間に合わせて両腕を振り下ろすことで、タイミングを合わせます。
着地したときに、膝が内側に入らず、つま先の方向に向いていることがポイントです。
スター・エクスカージョン・バランスエクササイズ①
患側の脚を軸足にして立ち、反対側の足をスライディングボードの上に乗せます。斜め前、斜め後ろ、斜め後ろ内側などできるだけ遠くに足を伸ばし、バランスを保ったまま元の位置に戻します。軸足の膝が内側に入らず、体がぐらつかないことがポイントです。膝・股関節・体幹を安定させる力を高めます。


スター・エクスカージョン・バランスエクササイズ②
患側の脚を軸足にし、その足の下にバランスクッションを置いて立ちます。
不安定な状態のまま、反対側の脚を前や斜め方向へ伸ばし、バランスを保ちながら元の位置に戻します。このとき、軸足の膝が内側に入らないこと、体が大きく揺れないことがポイントです。より高いバランス能力を身につけるためのステップアップトレーニングです。
復帰期(スポーツ動作再開〜完全復帰)
ステップ動作が安定してきたら、スポーツ特有の動作へ段階的に復帰します。
最初は部分的な練習から始め、徐々に時間と負荷を増やして完全復帰を目指します。
サッカーなど膝外反・外旋ストレスの強い動作(インサイドキックなど)は、テーピングやサポーターでの保護を推奨します。
ラグビーなどのコンタクトスポーツでも、再受傷予防として装具の使用を検討します。
Ⅲ度損傷では軽度の不安定性が残る場合もありますが、疼痛が消失していれば復帰可能と判断されます。
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ボックスジャンプ(両足着地)
着地動作を安定させるトレーニングです。膝・股関節・足首を連動させて、衝撃をやわらかく受け止める練習になります。
約30cmの高さのステップ台の上に立ち、そこから飛び降ります。着地の瞬間に合わせて、膝と股関節を同時に曲げ、衝撃を吸収します。このとき、膝が内側に入らず、体がぐらつかないことがポイントです。
ボックスジャンプ(片足着地)
片脚での着地動作を安定させるためのトレーニングです。約30cmの高さのステップ台の上に立ち、そこから飛び降りて患側の脚で着地します。
着地の瞬間に合わせて、膝と股関節を同時に曲げ、衝撃をやわらかく吸収します。膝が内側に入らず、体がぐらつかないことがポイントです。
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ボックスジャンプ(90°ターン)
ステップ台からジャンプし、空中で体の向きを90°変えて着地します。空中で向きを変えても、着地の瞬間に膝と股関節をタイミングよく曲げる、体がぐらつかないように意識しましょう。スポーツでの切り返し動作や方向転換に必要な膝のコントロール力を高めます。
ボックスジャンプ(切り返し)
ジャンプ後の着地から素早く方向を切り返す練習です。ステップ台からジャンプして床に着地し、着地した瞬間に体の向きを切り返して、すぐにボックスへ戻ります。
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ボックスジャンプ(ボールプッシュ)
ジャンプ・方向転換・上半身の動きを組み合わせた応用トレーニングです。
着地時により高いバランス力と体のコントロールが求められます。ステップ台の上で、ボールを胸の前に抱えます。前方へ飛び降り、空中で体を90°回転させて着地します。着地と同時に、ボールを前方へ押し出します。
ボールをプッシュすることで体が不安定になりやすいため、膝が内側に入らず、体がぐらつかないように安定した着地を意識しましょう。
ボックスジャンプ(クイックターン)
素早い方向転換と床からの反発を使った動きを身につける応用トレーニングです。ステップ台の上で、ボールを胸の前に抱えます。
そこから前方へ飛び降り、空中で体を90°回転させて着地します。着地と同時に、ボールを前方向へ押し出します。
このとき、着地した足に体重を完全に乗せ切らず、接地した反動を使ってすぐにステップ台へ戻るのがポイントです。
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ボックスジャンプ(リアクションドリル)
合図に反応して素早く動き、安定して着地する練習です。トレーナーが指で番号を示し、動く方向を指示します。
ステップ台の上に横向きで立ち、示された番号のコーンの前に素早く飛び降りて接地し、その後すぐにステップ台へ戻ります。
リアクション・アジリティドリル
素早く動く力(敏捷性)と、状況を判断する力を同時に鍛えるトレーニングです。
色のついたコーンをさまざまな方向に並べ、トレーナーが色のついたボールを落とします。
落とされたボールの色を見て、同じ色のコーンまで素早く移動してタッチし、元の位置に戻ります。

スポーツ復帰までの目安
| 損傷の程度 | スポーツ復帰までの目安 | 備考 |
|---|---|---|
| Grade I(軽度) | 約1〜4週間 | 痛みと筋力が改善すれば復帰可能 |
| Grade II(中等度) | 約2ヶ月 | 装具を約6週間使用しながら復帰 |
| Grade III(重度) | 約3ヶ月(手術なしの場合) | 痛みと不安定性が消失すれば可能 |
| 手術を要する重度例 | 約4〜5ヶ月(MCL単独)〜8〜10ヶ月(他靱帯合併) | ACLや半月板損傷を伴う場合は長期化 |
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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、マイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了