
腓骨筋の痛みについて(原因と症状)
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腓骨筋の痛みについて(原因と症状)
外くるぶしの構造
骨の構造
外くるぶし(外果)とは、足首の外側にある「出っ張った骨」の部分のことで、すねの外側にある骨(腓骨)のいちばん下にあたります。
まわりには靭帯や腱がたくさん付いており、足首を安定させる役割があります。
さらに、この出っ張りのすぐ後ろ側を、足首を動かすための腱(腓骨筋の腱)が通っていて、歩いたり走ったりするときの動きにも深く関わっています。

腱
① 短腓骨筋腱
- 腓骨遠位外側から起始
- 外果後方を通る
- 第5中足骨基部に停止
② 長腓骨筋腱
- 腓骨近位〜外側から起始
- 外果後方を通る
- 足底を横断し第1中足骨へ

腱鞘
腓骨筋腱は、足首の外側を通る際に腱鞘という滑りを良くする袋状の組織に包まれています。腱鞘の中には滑液があり、腱が骨の上をスムーズに動けるようにする役割があります。
腱が方向を変える部位では摩擦や圧迫が生じやすいため、腱鞘炎や狭窄、腱の損傷が起こりやすい重要なポイントでもあります。特にスポーツや繰り返し動作によるオーバーユースでは、この腱鞘部で炎症が生じ、足関節外側部痛の原因となることがあります。

外くるぶし周囲のトンネル
外くるぶしの後ろには、腓骨筋腱が通るトンネル状の通り道があります。
このトンネルは、外くるぶしの後ろにある骨の溝を土台として、その上を上腓骨筋支帯という強いバンド状の組織が覆うことで作られており、腱が外にずれないように固定しながらスムーズに動けるようになっています。
さらに、腱は腱鞘という袋に包まれており、内部の潤滑液によって摩擦を減らし、歩いたり走ったりする際の動きを助けています。
このトンネルの中には長腓骨筋腱と短腓骨筋腱の2本が通っており、通り道がカーブしていて狭いため摩擦が起こりやすく、腱の炎症や脱臼、断裂などの障害が生じやすい部位でもあります。

外くるぶしの痛みの分類
- 腓骨筋腱炎/腱症
- 腓骨筋腱脱臼
- 腓骨筋腱断裂
- 短腓骨筋腱付着部炎
- Os peroneum症候群

腓骨筋腱炎/腱症
腓骨筋腱炎/腱症とは
長腓骨筋腱と短腓骨筋腱に繰り返し過剰な負荷が加わることで炎症や変性が起こる状態のことです。これらの腱は、外くるぶしの後ろを通って足を外側へ動かし、歩行時や方向転換時に足関節を安定させる重要な役割を担っています。

腓骨筋腱炎/腱症の発症メカニズム
① 反復的な負荷・摩擦
腓骨筋腱は外くるぶしの後方を通り、さらに足の外側から足底へと方向を変えながら走行します。
- 外果後方(retromalleolar groove)
- 腓骨筋滑車(peroneal tubercle)
- 立方骨トンネル(cuboid tunnel)
これらの部位は腱がカーブするため、摩擦や圧迫が集中しやすい構造になっています。ランニングや方向転換動作などで外側への負荷が繰り返されると、腱に微細な損傷が生じます。
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② 外側不安定性・アライメント異常の関与
- ハイアーチ
- 踵骨の内反
- 慢性足関節不安定性
- 捻挫後の支持機構の破綻
これにより、腓骨筋が過剰に働き続ける状態となり、負荷が慢性的に増大します。

③ 微小損傷と炎症
- 腱の腫れ
- 腱鞘内の液体貯留
- 圧痛・熱感
過負荷により腱線維に微細断裂が生じ、炎症反応が起こります。これが「腱炎」の状態です。

④ 修復不全と変性(腱症)
負荷が継続すると、
- コラーゲン配列の乱れ
- 腱の肥厚
- 変性組織の形成
が進行し、炎症よりも変性が主体となる慢性腱症へ移行します。

腓骨筋腱炎/腱症の症状
- 外くるぶし後方〜下方の痛み
- 足の外側(第5中足骨周囲〜外側アーチ)の痛み
- 活動時に増悪し、安静で軽減する痛み
- 方向転換・走行・ジャンプでの疼痛増強
- 朝の動き始めの痛みやこわばり
- 外くるぶし後方の腫れ・熱感
- 圧痛(腱の走行に一致)
- 抵抗下外反での疼痛
- 足首の不安定感・力が入りにくい感覚
- 片脚立ちや不整地でのぐらつき
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腓骨筋腱脱臼
腓骨筋腱脱臼とは
腓骨筋腱脱臼とは、外くるぶしの後方を通る長腓骨筋腱・短腓骨筋腱が、本来収まっている骨の溝(retromalleolar groove)から前方へずれる状態を指します。

腓骨筋腱脱臼の発症メカニズム
主な原因は、腱を押さえている上腓骨筋支帯の損傷や弛緩です。
発症の背景には
- 急性外傷(特に内反捻挫)
- 上腓骨筋支帯の断裂
- retromalleolar grooveが浅い(形態異常)
- 慢性足関節不安定性
- 解剖学的変異(低位筋腹、第4腓骨筋など)
があります。
慢性的に腱がずれると、摩擦が増加し、炎症や縦断裂へ進行することがあります。

腓骨筋腱脱臼の症状
- 外くるぶし後方の疼痛・腫脹
- 足首の不安定感
- 自分で腱のずれを感じる
- 「パチン」「カクッ」というスナッピング感
- 足を背屈・外反させた際に腱が前方へ飛び出す

腓骨筋腱脱臼の治療法
① 保存療法
適応
- 急性例(初回脱臼)
- 腓骨筋支帯断裂が軽度
- 競技レベルが高くない症例
内容
- 約4〜6週間固定(ギプス)→ 足関節を安定させ、腱を溝内に保持
- 安静・活動制限
- 消炎鎮痛薬(整形外科にて)
- その後の段階的リハビリ

腓骨筋腱脱臼のリハビリ
① 急性期(固定期)
- ギプスやCAMブーツによる固定
- 安静・活動制限
- 炎症のコントロール
- 目的:腱を溝内に保持し、支帯の治癒を促す。
② 可動域回復期
- 固定終了後に開始。
- 足関節の可動域訓練
- 痛みのない範囲での運動再開
- 徐々に荷重を増やす
- 目的:関節拘縮の予防と滑走回復。
③ 筋力強化期
- 腓骨筋の強化(外反筋トレーニング)
- 足関節安定化エクササイズ
- バランス訓練
- 目的:動的安定性の再構築。

② 手術療法(整形外科による)
適応
- 慢性反復脱臼
- 保存療法で改善しない例
- 支帯断裂
- 腱断裂合併例
- 競技復帰を強く希望するアスリート
腓骨筋腱脱臼の再発率
■ 保存療法(固定・安静)の場合
- 再発率は比較的高いとされています。
- 特にスポーツ選手では再発率が50〜70%程度と報告されています。
- 固定後に腱を押さえる上腓骨筋支帯が十分に修復されない場合、再び腱が脱臼しやすくなります。
■ 手術治療の場合
- 再発率は非常に低く、約5%以下とされています。
- 上腓骨筋支帯の修復や、retromalleolar grooveの形成術などにより腱の安定性が回復します。
- 術後は一定期間の固定と免荷を行い、その後段階的に可動域訓練や筋力強化を進めます。適切に治療が行われれば、スポーツ復帰率は高いと報告されています。

腓骨筋腱断裂
腓骨筋腱断裂とは
腓骨筋腱断裂とは、外くるぶしの後方を通る長腓骨筋腱または短腓骨筋腱が部分的または完全に損傷する状態を指します。多くは縦方向に裂ける「縦断裂」として発生します。
腓骨筋腱断裂では、短腓骨筋腱の断裂が最も多くみられます。一方で、長腓骨筋腱のみが単独で断裂するケースは比較的少ないとされています。また、症例によっては長腓骨筋腱と短腓骨筋腱の両方が同時に損傷している場合もあります。

腓骨筋腱断裂の発症メカニズム
① 慢性的な亜脱臼による摩擦
腱が外くるぶしの後方で繰り返しずれることで、骨との摩擦が持続し縦断裂へ進行します。

② 急性外傷
強い筋収縮や捻挫により、筋腱移行部や外くるぶし部で損傷が生じることがあります。

③ ストレス集中部位
- 外くるぶしの後方(retromalleolar groove)
- 立方骨トンネル部(特に長腓骨筋腱)
これらは血流が乏しく、損傷が起こりやすい部位です。

腓骨筋腱断裂の症状
- 外くるぶし後方の持続的な痛み
- 足関節外側の腫れ
- 足関節の不安定感
- 外反方向への筋力低下
- 慢性的に続く外側足関節痛
- 「治らない捻挫後の痛み」として経過することがある

腓骨筋腱断裂の治療
- 手術
- 手術後の成績は良好とされ、スポーツ復帰率も高いと報告されています。ただし、約10%前後で再断裂や症状残存が報告されています。
短腓骨筋腱付着部炎
短腓骨筋腱付着部炎とは
短腓骨筋腱付着部炎とは、短腓骨筋の腱が、第5中足骨に付着する部分で炎症を起こす疾患です。
いわゆる「使い過ぎによる痛み(オーバーユース)」で起こることが多く、足の甲の外側が痛くなるのが特徴です。

短腓骨筋腱付着部炎の発症メカニズム
- 繰り返しの動作によって、骨と腱の付着部で「引っ張り合い」が続く
- 微細な損傷が起こる
- 炎症が発生

短腓骨筋腱付着部炎の症状
- 足の外側が痛い
- 足の外側を押すと痛い
- 足を外側へ反らせる(外反)と痛い
- 歩くと痛む
- 軽い腫れや赤みが出ることがある

短腓骨筋腱付着部炎の治療
① 安静(負荷の軽減)
- 痛みがある間は運動を一時中止
- 歩行時痛が強い場合は活動量を制限
- 痛みを我慢して運動を続けない
- 練習量の見直し
② ヒールパッドの使用
- 靴の中にヒールパッドを挿入し、踵を少し高くする
- 短腓骨筋腱の張力が軽減され、付着部への牽引ストレスが減る

Os peroneum症候群
Os peroneum症候群とは
Os peroneumは、長腓骨筋腱の中に存在する種子骨です。足の外側、立方骨トンネル部に位置します。すべての人にあるわけではなく、全人口の約10~20%に見られ、通常は症状を引き起こしません。
Os peroneum症候群とはOs peroneum周囲で痛みや機能障害が生じる状態です。
次の病態を含みます。
- Os peroneumの疲労骨折
- 分裂種子骨の痛み
- 長腓骨筋腱断裂の合併
- 腱の牽引による骨障害

Os peroneum症候群の原因
- 急性外傷(足関節捻挫など)
- 長腓骨筋腱の過負荷
- 立方骨トンネル部での摩擦
- ハイアーチ
- 慢性外側不安定性

Os peroneum症候群の症状
- 足の外側〜足底外側の痛み
- 立方骨付近の圧痛
- 歩行時痛
- つま先立ちでの痛み
- 足を外側へ動かすと痛い

Os peroneum症候群の治療
① 保存療法
- 安静
- 固定
- 消炎鎮痛薬
- インソール(外側負荷軽減)
- リハビリ
② 手術療法
- Os peroneum摘出
- 長腓骨筋腱修復
- 腱再建術
インソール
足部のアライメント異常や歩行時の負荷の偏りがあると、腓骨筋腱に過剰な牽引力や摩擦が繰り返し加わり、炎症や腱の変性が生じやすくなります。
インソール療法は、足部のアライメントを整え、歩行やランニング時の荷重バランスを改善することで、腓骨筋腱にかかる負担を軽減することを目的としています。外側への過度な荷重や踵の内反がみられる場合には、インソールによって足部の支持性を高めることで腱へのストレスを分散させることができます。

靴の見直し
- 履き慣れない靴を避ける
- 足に合った靴を選ぶ
- 外側に不安定な靴は避ける
- 硬すぎる靴・柔らかすぎる靴、外側が圧迫される靴は避ける
- 中足部が締め付けられた靴下は避ける

体外衝撃波
体外衝撃波療法は、患部に衝撃波を照射することで組織に微細な刺激を与え、局所の血流を改善させるとともに、組織の修復反応を促進する治療法です。腱障害では、慢性的な負荷によって腱組織の変性や血流低下が生じることがありますが、体外衝撃波によって細胞の代謝や血管新生が促進され、腱の治癒過程を助けると考えられています。

リハビリテーション
腓骨筋腱障害の保存療法では、炎症のコントロール → 機能回復 → 再発予防の段階でリハビリテーションを進めます。痛みの程度に合わせて段階的に負荷を増やすことが重要です。
腓骨筋収縮トレーニング
バンドを中足部にかけ、足を外側へ開くように足部の外転・外返し(外反)運動を行います。
このとき、バンドの抵抗が足の真横からかかる位置になるように調整します。
運動中は、なるべく足趾に力を入れず、足首の動きで行うことを意識してください。

テーピング
目的
- 足首が外側へ倒れるのを防ぐ
- 腓骨筋の機能をサポートする
手順
土踏まずの頂点(アーチの一番高い部分)にテープの端を貼ります。

腓骨筋の走行に沿って外くるぶし方向へテープを貼ります。このときは、ほとんどテンションをかけずに軽く貼るようにします。

2本目のテープは、踵が外側へ倒れるのを防ぐためのものです。踵の内側から貼り始めます。テープをやや強めに引きながら踵を外反方向へ誘導し、外側へ回して貼ります。

3本目のテープは、足首全体の安定性を高めるためのテープです。足関節を包み込むように貼り、全体のサポートを強化します。

ストレッチ
開始肢位
椅子に座り、右足を体の手前に引き寄せます。右足関節を底屈・内反させ、右足の前足部の背面を床につけます。両手は右下腿の内側中央に置きます。

ストレッチ肢位
体幹を前に倒し、両手に体重を乗せながら右下腿を床方向へ押します。これにより、右足関節の底屈・内反をさらに強めて腓骨筋を伸ばします。ストレッチ中は、外くるぶしを床に近づけるように意識して行います。

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この記事を書いた人
アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナーマスターライセンス、足爪補正士、テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、マイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了








