炎症を伴う変色した足の親指の爪

爪の根元が腫れて痛い・爪が伸びない
後爪郭部爪刺し(レトロニキア)とは

足の爪の根元が赤く腫れて痛む、以前より爪が伸びなくなった。このような症状が続く場合、「後爪郭部爪刺しこうそうかくぶつめさし」という爪の病気が隠れている可能性があります。

後爪郭部爪刺しは、古い爪が正常に押し出されず、爪の根元の皮膚に食い込むことで炎症が起こる疾患です。医学的には「レトロニキア(Retronychia)」と呼ばれています。

一般的な巻き爪とは爪が食い込む場所が異なり、爪囲炎と間違われることもあります。

この記事では、後爪郭部爪刺しの特徴や原因、巻き爪との違い、治療方法についてわかりやすく解説します。

炎症した親指の爪アップ

後爪郭部爪刺しとは?

後爪郭部爪刺し(レトロニキア)は、外傷などによって浮き上がった古い爪が正常に伸びず、爪の根元を覆う皮膚(後爪郭)を刺激して炎症を起こす疾患です。

通常、爪は根元にある爪母で作られ、指先に向かって伸びていきます。しかし、後爪郭部爪刺しでは、古い爪が十分に前進しないまま、その下で新しい爪が形成されます。その結果、古い爪が押し上げられて根元の皮膚に食い込み、痛みや腫れを引き起こします。主に足の親指に発症しますが、ほかの足趾や手の指にも起こることがあります。

1999年に報告された疾患であり、日本では2011年に東禹彦によって「後爪郭部爪刺し」という名称で報告されました。

後爪郭部爪刺しの解説図

後爪郭部爪刺しの症状

後爪郭部爪刺しでは、爪の根元に起こる炎症と、爪の成長が止まることが特徴です。

代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 爪の根元が赤く腫れる: 爪の付け根に炎症が生じ、赤みや腫れが続きます。
  • 爪の根元を押すと痛い: 靴を履いたときや爪の根元に圧力がかかったときに痛みを感じます。
  • 爪が伸びなくなる: 爪切りをする必要がなくなるほど、爪の成長が遅くなったように感じます。
  • 爪が黄色や白色に変色する: 爪の一部が黄白色になり、透明感が失われます。
  • 爪が厚くなる: 古い爪と新しい爪が重なり、爪が厚く見えることがあります。
  • 爪の根元に肉芽ができる: 炎症が長引くと、赤く柔らかい組織が盛り上がる場合があります。

特に重要なのは、「爪の根元の腫れや痛み」と「爪が伸びない」という2つの症状が同時にみられることです。

後爪郭部爪刺しの症状

なぜ後爪郭部爪刺しになるのか?

爪が正常に伸びなくなる仕組み

後爪郭部爪刺しは、爪への外傷や繰り返しの圧迫によって発症すると考えられています。発症の仕組みは、次のように説明できます。

① 爪が外力で浮き上がる

靴による圧迫やスポーツ中の衝撃などによって、爪が爪母や爪床から部分的に剥がれます。

② 古い爪の下に新しい爪が形成される

古い爪が残っている状態で新しい爪が作られるため、爪が何層にも重なることがあります。

③ 新しい爪が正常に前進しない

通常は新しい爪が伸びることで古い爪が指先に向かって押し出されます。しかし、剥がれた古い爪が根元に引っかかり邪魔をすることで、新しい爪が十分に前進しなくなることがあります。

④ 爪の根元に炎症が起こる

重なった爪が根元の皮膚を圧迫し、赤み・腫れ・痛みなどの症状が現れます。つまり、古い爪が前方へ進まなくなり、爪の根元に食い込んでしまう状態です。

爪が正常に伸びなくなる仕組み

後爪郭部爪刺しの原因

1. サイズの合わない靴

つま先が狭い靴やサイズの小さい靴を履いていると、爪に繰り返し圧力が加わります。

特にハイヒールや、靴の中で足が前方へ滑りやすい履物は、足の親指の爪に負担をかけることがあります。

2. ランニングや長時間の歩行

ジョギング、ハイキング、登山などでは、靴の内側に爪が繰り返し接触することがあります。

一度の大きな衝撃だけでなく、小さな刺激が繰り返されることも発症に関係すると考えられています。

3. 爪への強い衝撃

足先をぶつける、重い物を落とす、転倒するといった外傷によって、爪が部分的に剥がれることがあります。

爪が完全に脱落せず、根元に残った場合に後爪郭部爪刺しが起こることがあります。

4. つま先に負担がかかる動作

つま先立ちを繰り返す仕事や、足先に強い負荷が加わるスポーツも原因となることがあります。

なお、後爪郭部爪刺しは高齢者だけに起こる病気ではなく、若い世代にも発症します。

巻き爪との違い

後爪郭部爪刺しも爪が皮膚に食い込む病気ですが、一般的な巻き爪とは発症する場所や症状が異なります。

比較項目一般的な巻き爪後爪郭部爪刺し
主な問題の場所爪の左右の端爪の根元
爪の形横方向に強く湾曲します爪が重なり厚くなることがあります
痛む場所爪の左右の皮膚爪の付け根
爪の成長通常は伸び続けます伸びが止まったように見えます
主な治療状態に応じた巻き爪矯正など保存療法や爪甲除去など

一般的な巻き爪では、爪の左右が強く湾曲して皮膚を圧迫します。

一方、後爪郭部爪刺しでは、爪の根元に古い爪が残り、炎症を引き起こすことが問題となります。

そのため、後爪郭部爪刺しに通常の巻き爪矯正を行っても、根本的な原因が解消されない場合があります。

巻き爪と後爪郭部爪刺しの違い

爪囲炎と間違われることも

後爪郭部爪刺しは、爪囲炎と症状が似ているため、見分けることが難しい場合があります。

爪囲炎とは、爪の周囲に炎症が起こる状態で、細菌や真菌の感染、慢性的な刺激など、さまざまな原因によって生じます。

後爪郭部爪刺しでも爪の根元が赤く腫れ、ときには膿や肉芽が認められるため、感染症と考えられることがあります。

しかし、後爪郭部爪刺しでは爪による機械的な刺激が炎症の主な原因であるため、抗菌薬だけでは改善しないことがあります。

爪囲炎の治療を受けているのに症状が改善しない場合や、爪が伸びなくなっている場合は、後爪郭部爪刺しの可能性も考える必要があります。

ただし、細菌感染を合併している場合には、医師の判断で抗菌薬などが必要になることもあります。

爪囲炎と後爪郭部爪刺しの違い

後爪郭部爪刺しの治療

軽症の場合は保存療法

炎症が軽度であれば、爪に加わる圧力を減らし、経過を観察することがあります。

医師の判断により、ステロイド外用薬や局所注射などを用いて炎症を抑えることもあります。靴の変更やテーピングなどを併用する場合もあります。

ただし、保存療法ですべての症例が改善するわけではなく、症状が続く場合には治療方針の見直しが必要です。

症状が強い場合は爪甲除去術を検討

爪の根元に古い爪が残り、強い炎症や痛みが続く場合には、爪甲除去術(抜爪)が検討されます。これは原因となっている爪を取り除き、根元の皮膚に加わっている刺激を解消する治療です。

適切に爪甲を除去することで炎症や痛みが改善する症例が多くみられます。ただし、爪甲除去後には爪が再び伸びるまで時間がかかり、爪の変形などが残る可能性もあります。そのため、抜爪の必要性は医師が爪の状態を評価して判断します。

抗菌薬だけでは改善しないことがある

後爪郭部爪刺しの炎症は、必ずしも細菌感染によって起こるわけではありません。

爪による機械的な刺激が続いている場合、抗菌薬を使用しても原因そのものは残ってしまいます。抗菌薬による治療で改善しない爪の根元の炎症は、皮膚科で原因を再評価してもらうことが重要です。

後爪郭部爪刺しは自然に治る?

軽症例では、爪への圧迫を減らすことや保存療法によって症状が改善する場合があります。

しかし、古い爪が根元に残り続けている場合には、自然に改善しにくいこともあります。

特に、爪が長期間伸びていない、腫れや痛みが続いている、爪が何層にも重なっているといった場合には、専門的な検査が必要です。

また、症状が改善しても、原因となった靴の圧迫や繰り返しの外傷が続くと再発する可能性があります。

古い爪が残る足爪ケア図解

後爪郭部爪刺しの予防法

後爪郭部爪刺しの予防では、爪に繰り返し加わる衝撃や圧迫を減らすことが重要です。

足に合った靴を履きましょう

つま先に適度な余裕があり、足の形に合った靴を選びましょう。

靴が大きすぎる場合も、内部で足が前方に滑って爪を圧迫することがあるため、サイズだけでなくフィット感も大切です。

靴紐を適切に締めましょう

靴の中で足が前後に動きすぎないよう、靴紐を適切に締めて足を固定しましょう。

爪を繰り返しぶつけないようにしましょう

ランニングや登山などで爪に負担がかかっている場合は、靴の形状や履き方を見直しましょう。

爪が浮いたときは無理に剥がさないでください

外傷などで爪が浮き上がっても、自分で無理に引き剥がさないようにしてください。爪の根元が傷つくと、正常な爪の成長に影響する可能性があります。

このような症状は皮膚科を受診しましょう

爪の根元が赤く腫れている、痛みが長引いている、爪の成長が止まっているといった場合には、皮膚科での診察をお勧めします。

特に、赤みが急速に広がる、強い痛みや膿がある、発熱を伴う場合は、感染症などの可能性もあるため早めの受診が必要です。

糖尿病や血流障害がある場合も自己判断せず、早期に医療機関へ相談することが重要です。

専門的な爪の検査が必要な例

よくある質問

Q
後爪郭部爪刺しと巻き爪は同じ病気ですか?

A

Q
爪が伸びなくなるのはなぜですか?

A

Q
抗菌薬を使えば治りますか?

A

Q
必ず爪を剥がす必要がありますか?

A

Q
爪を除去した後、また爪は生えてきますか?

A

Q
後爪郭部爪刺しは何科を受診すればよいですか?

A

参考文献

  • de Berker DAR, Renall JRS. Retronychia—proximal ingrowing nail. J Eur Acad Dermatol Venereol. 1999;12(Suppl 2).
  • de Berker DA, Richert B, Duhard E, et al. Retronychia: Proximal ingrowing of the nail plate. J Am Acad Dermatol. 2008;58(6):978-983.
  • Dahdah MJ, Kibbi AG, Ghosn S. Retronychia: Report of two cases. J Am Acad Dermatol. 2008;58(6):1051-1053.
  • 東禹彦.Retronychia: Proximal ingrowing nail(後爪郭部爪刺し)の3例.皮膚の科学.2011;10(6):505-507.
  • 星郁里,田宮久詩,小林裕美,他.Retronychia; proximal ingrowing nail(後爪郭部爪刺し)の1例.臨床皮膚科.2013;67(4):337-340.
  • Ventura F, Correia O, Duarte AF, et al. Retronychia—clinical and pathophysiological aspects. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016;30(1):16-19.
  • 清水恭子,新石健二,辻端亜紀彦.Retronychia: Proximal Ingrowing Nailの1例.皮膚科の臨床.2017;59(1):97-99.
麻多 聡史
院長

この記事を書いた人

アルコット接骨院院長
柔道整復師
フットケアトレーナー・足爪補正士として足・爪領域に19年間従事。テーピングマイスター、IASTMマニュアルセラピスト、FMS 、SFMA、FCS、BPL mentorship program修了、PRIマイオキネマティック・リストレーション、ポスチュラル・レスピレーション、ペルビス・リストレーション、インピンジメント&インスタビリティ修了、脚の長さコーディネーター

    金沢巻き爪専門外来アルコットプラスロゴ

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